@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000120, author = {瀬川, 拓郎 and セガワ, タクロウ and SEGAWA, Takuro}, month = {2016-02-17}, note = {瀬川拓郎氏の博士学位審査論文『擦文文化からアイヌ文化における交易適応の研
究』の構成は以下の通りである。
序論 狩猟採集社会における共生と持続のシステム
第Ⅰ編 擦文文化の異文化交流と自然利用
第1章 擦文文化の流通体制と周辺文化との関係
第2章 擦文文化の自然利用
第Ⅱ編 アイヌ文化の自然利用
第1章 上川アイヌの社会と交易適応としてのサケ漁
第2章 流通手段としての丸木舟からみたアイヌ地域社会の形成
終論 アイヌ・エコシステムの成立
瀬川氏の論文は、近年特に注目されてきた北海道の古代から近世にかけての本州と
の交易の問題に着目したものである。これは擦文文化の遺跡の発掘調査が増加し、擦
分文化の情報が増加したこと、及び本州北部の古代から近世の遺跡の内容が明らかに
なったことと関連しており、北海道の擦文文化の人々が自発的に本州からの鉄器や農
耕などの新しい文化を受け入れたのではないかという発想に基づいている。
この考え方を論証するために、まず第Ⅰ編では、擦文文化の内容を考古学的な事例
から説明した。そして、この時代に北海道の北辺にサハリンから南下して居住してい
たオホーツク文化人の生活内容も紹介した。そこではオホーツク文化と擦文文化の土
器の融合の問題を通じてオホーツク文化人と擦文文化人の交易などの関連を論じた。
一方、本州との関係については本州の鉄鮨や陶磁器、穀物栽培などの受容とその対価
としてのサケの本州への供給を焦点として擦文文化人と本州人との関係を論じた。そ
の結果、擦文社会がサケ漁の魚場の占有へと変化し、さらに流通システムの確立に至
り、擦文文化社会が変質して近世アイヌ社会へと移っていった止考えた。
第Ⅱ編では、上川アイヌの生活を長年の聞き取り調査と文献資料から考察した。そ
こでは、サケ漁の具体的な方法や道具の検討だけではなく、アイヌの社会組織につい
ても考察し、サケ漁の社会的重要性を指摘した。
終論では、このサケ漁を中心とした生業システムおよび社会構造の完成をアイヌ・
エコシステムの成立と定義して、アイヌ社会におけるアイヌ・エコシステムの機能と
役割、意義について論じた。これは従来の縄文エコシステムつまり物々交換のみを目
的とした続縄文文化以前の交易システムとは異なり、土地の占有や人の支配・非支配
の関係を含む社会システムとしてのアイヌ・エコシステムの新たな考え方を論じたも
のである。
この新しいアイヌ・エコシステムを提唱した瀬川氏の視点は、従来、北海道の人々
は本州の文化を一方的に受け入れてきたという受動的なものではなく、北海道側から
の自発的な行動によって新しいシステムを自ら作り出したという自立性を強調した
ものである。その点で独創性の高い論文と言える。, 総研大乙第154号}, title = {擦文文化からアイヌ文化における交易適応の研究}, year = {} }