@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001207, author = {塩入, 千春 and シオイリ, チハル and SHIOIRI, Chiharu}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {本学位論文は、ゲノム配列の大量データに対する数量的な特徴づけについて述べる。現在、利用可能なミトコントリアゲノム359種、原植生物の染色体105配列、シロイヌナズナ、線虫、酵母など6種の真核生物の完全ゲノムのほか、ヒト、マウス、ショウジョウバエのドラフト配列を用いて解析を行った。解析方法は、突然変異の鎖非対称性による塩基組成の偏り(Skew)のパターンを配列全体において調べ、更にDNAの高次構造や機能と関係する二連塩基の頻度傾向を調べた。鎖非対称性はDNAの複製システムと強い相関があり、複製が一方向に進む動物のミトコンドリアでは単調なパターンを持つが、複製が二方向性である細菌では複製の開始点・終始点でSkewのパターンが反転し複製開始点の予測も容易に可能である。特に、大腸菌ではグアニン(G)とシトシン(C)との間で非常にきれいなSkewのパターンがあり、それは突然のホット・スポットであるChi配列と呼ばれる′5'-GCTGGTGG-3'配列がもたらしているようである。真植生物においては、原植生物同様複製の方向は二方向性であるが、一本の染色体上に複製単位が複数あるため、Skewのパターンは複雑である。しかしながら、複製システムと関係しているのは明らかであり、リーディング鎖とラギング鎖が交互に入れ替わる様子が伺える。このような一塩基レベルの鎖非対称性にかがねらず、それぞれのゲノム配列全体に一貫した種固有的な二連塩基の頻度傾向がある。原核生物から真植生物まであらゆる種においてTpAは少なく、ほぼ普遍的な傾向である。ヒトや咄乳類の核ゲノムでは、CpG二連塩基が非常に低く抑えられており、期待値に比べて20~40%ほどである。これはCpGのCがメチル化を受けやすいことに起因しており、メチル化を受けたCはデアミ化によってチミン(T)に変化しやすく、C->T転移(トランジッション)が生じて、TpG/CpAになる。そのため、TpG/CpAの増加もみられるが、CpGは極端に抑えられているため、TpG/CpAの増加分だけでCpGの減少分を補填できない。つまり、メチル化 - デアミ化による突然変異のばかにCpGを抑制する何らかの機構があると考えられ、最も有力な説はDNAの高次構造と関係するスタッキング・エネルギーが原因とする説である。スタッキング・エネルギーとは原子間あるいは分子間の相互作用による結合エネルギーであるため、それぞれの組み合わせで異なる。そして、このエネルギーによる違いがDNAの高次構造の可塑性を決めるが、TpAの組み合わせは最も可塑性力塙くCpGは最も硬質であるうえポリ(CG)は左巻き二重らせんのZ型DNA構造をとる。そのため、TpAやCpGが避けられているとされている。そして、その他の二重塩基も含めて16とおりの組み合わせ全てにおいて、ゲノムに一貫した頻度傾向があると説明できる。そして、このような二連塩基の頻度傾向は、アミノ酸をコードしているコード領域でも見られる傾向である。遺伝暗号は4x4x4=64通りのコドンがらなるが、20通りのアミノ酸に対応するためコドンには縮退かある。同じアミノ酸をコードするコドンを同義コドンの使用頻度は一律ではなくそれぞれに偏りがあり、下等な生物ではtRNAの存在量とも強い相関があるが、ヒトの遺伝子ではCpGやTpAを含むコドンの使用頻度が抑えられており、ゲノム全体における二連塩基の頻度傾向の影響を強く受けておる。その他の真核生物においても同様に、コドンの使用頻度は二連塩基の頻度傾向の影響を強く受けており、二連塩基の組み合わせは基本的に非常に強い性質であるといえる。
 生命の誕生や初期変化について考察を行うと、ゲノムも最初はDNAではなくRNAで、熱に対する安定性からDNA配列が一般的になったという説が有力であるが、本文でもふれるようにDNAの高次構造は大変可塑的であり、B-型DNAの二重らせんの他にもA-型やZ-型などの分子形態を持つことが、生命活動を行ううえで有利であったように思われる。そして、その構造は配列の並びによって決まるため、本研究の結果から明らかになるように、配列の最も基本的な一塩基ベルや二連塩基レベル、鎖非対称性やゲノムー貫性ともいえる様々なパターンが生物学的な機能と関係して観察されることは、配列と構造と機能が密接に関連している証拠である。
 生命活動における有利性といっても種によって様々であり、雄大な長い年月を要する進化過程において、その時その時の環境や体制そして偶然性によって、普遍的な配列頻度傾向が保存されながらも、現在のような種固有のパターンを持つように至ったのであろう。今後の詳細な解析によって、それらのパターンを生み出す機構が一つ一つ明らかになっていくのかもしれない。そして、それらを全て総合することによって、生命とは何か?あるいは、どのようにして誕生し、どのような進化を遂げていくのか?という問題の理解が深められていくことと思う。, application/pdf, 総研大甲第709号}, title = {ゲノム配列の数量的特徴づけ}, year = {} }