@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001219, author = {梶川, 瑞穂 and カジカワ, ミズホ and KAJIKAWA, Mizuho}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {主要組織適合性遺伝子複合体(major histocompatibility complex; MHC)は、皮膚
移植片の生着を支配する分子(移植抗原)をコードする遺伝領域として発見された。ヒ
トでは6 番染色体のHLA 領域、マウスでは17 番染色体のH2 領域がこれに相当する。
その後、移植抗原の生理的機能は、抗原ペプチドをT細胞レセプターに提示することに
あることが判明し、今日では、これらの抗原はMHC クラスI 分子およびMHC クラス
II 分子として広く知られるにいたっている。ヒトではHLA-A/B/C 分子、マウスでは
H2-K/D/L 分子がMHC クラスI 分子に相当する。MHC クラスI 分子には多くの類似
分子が存在するため、これらは他のMHC クラスI 様分子と区別して、特にMHC クラ
スIa 分子と呼ばれている。MHC クラスIa 分子はペプチドおよびβ2 ミクログロブリン
と結合する膜表面局在型の糖タンパク質であり、細胞質内タンパク質由来のペプチドの
CD8+T 細胞への提示が主な機能である。

MHC クラスIa 分子以外のクラスI分子はMHC クラスIb 分子と呼ばれている。ヒ
トでもマウスでも、MHC クラスI 様分子の中でのMHC クラスIa 分子の種類は少数で
あり、大部分はMHC クラスIb 分子である。MHC クラスIb 分子は、一部の例外を除
けば、MHC クラスIa 分子と同様にβ2 ミクログロブリンと結合する膜表面局在型の糖
タンパク質であり、その立体構造もMHC クラスIa 分子と似たフォールドを形成して
いる。ただし、結合する低分子は必ずしもペプチドではなく、例えば糖脂質を結合する
MHC クラスIb 分子も存在する。さらに、リガンドがまったく結合していないと考え
られるMHC クラスIb 分子も存在する。したがって、MHC クラスIb 分子の機能はペ
プチドの提示にとどまらず多様である。これらMHC クラスIb ファミリーの多彩な機
能は、1)特殊な抗原提示を行なうもの、2)抗原提示以外の免疫機能を持っているも
の、3)免疫系以外で機能するものに大別される。

最近、Kasahara らはこれまでに知られているMHC クラスIb のいずれとも異なる
MHC クラスIb ファミリー遺伝子をマウスで(後にラットでも)発見した。この遺伝
子はマウス7 番染色体上の白血球受容体複合体(leukocyte receptor complex; LRC)
領域近傍でコードされることからMill(MHC Class I-like located near the LRC)と
命名された。Mill はMill1 およびMill2 の二つからなるファミリーで、多型が少なく、
その遺伝子産物であるMILL1 およびMILL2 の生体組織における発現量は低いと考え
られている。RT-PCR 解析によればMill1 は胸腺や新生児の皮膚といった限られた組織
で転写されているが、Mill2 はほとんどの組織で低いレベルで転写されている。遺伝子
配列から予測されるアミノ酸配列からは、MILL1 およびMILL2 はMHC クラスIa 分
子と同様に三つの細胞外ドメイン (α1 からα3)からなる糖タンパク質であると推測さ
れた。しかしながらα1 ドメインおよびα2 ドメインの、ペプチドとの相互作用に重要な
部位が欠落していることも推測され、MILL はペプチドを結合しないことが示唆された。
また、MILL1 とMILL2 の配列は、既知のMHC クラスI ファミリーの中ではMICA/B
に最も近く、げっ歯類にMICA/B ファミリーは存在せず、一方ヒトにはMill ファミリ
ー遺伝子が存在しないことから、MILL はMICA/B の機能的対応分子ではないかと推
測されていた。MICA/B はナチュラルキラー(natural killer; NK)細胞受容体NKG2D
のリガンドとして、NK 細胞を活性化する分子である。しかしながら、マウスではRAE-1
およびH60 がMICA/B と同様にNKG2D のリガンドとして機能するため、MILL は
MICA/B の機能的対応分子ではなく、別の機能をもっている可能性も考えられた。

本研究においては、MILL 分子の生化学的特性を明らかにすべく、主としてマウス培
養細胞株で発現させた組換えMILL 分子を用いて詳細な解析を行った。その結果、
MILL1 およびMILL2 がβ2 ミクログロブリンと相互作用する、グリコシルホスファチ
ジルイノシトール(glycosylphosphatidylinositol; GPI)アンカー型の糖タンパク質で
あることを明らかにした。また、MILL 分子の細胞表面発現はTAP 機能に依存しない
ことを明らかにした。後者の結果はMILL1 およびMILL2 が抗原ペプチドを結合しな
いことを示唆するものであった。MILL1、MILL2 はβ2 ミクログロブリンと相互作用す
ること、GPI で細胞膜に結合していることなどの点で、MICA/B と異なっており、両者
は生化学的特性を異にするMHC クラスIb 分子であることが示された。

さらに、マウスMILL 分子を大腸菌の封入体として作成し、β2 ミクログロブリンを
加えることにより、同分子を巻き戻すことに成功した。この成果は、立体構造解析を含
め、MILL 分子の詳細なタンパク質構造解析に道を拓くものである。, application/pdf, 総研大甲第1011号}, title = {マウスMHCクラスI様分子MILLの生化学的解析}, year = {} }