@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001236, author = {鈴木, 祐仁 and スズキ, ユウジ and SUZUKI, Yuji}, month = {2016-02-17}, note = {近年、高密度光メモリ、紫外線リソグラフィ、紫外線レーザー加工、レーザー医療、レーザーアブレーションを用いたCVD等多くの分野で紫外光が必要とされるようになってきている。現在レーザーは高効率化、小型化、長寿命化が求められてきており、これらが重要な研究テーマとなっている。気体、色素レーザーは寿命が短く、固体レーザーは長寿命で装置の小型化、ならびに高出力化が可能である。そこで今ある気体、色素レーザーを固体レーザーに置き換えようとする動きが出ている。
 我々のグループが近年著しい成果を上げている紫外因体レーザー結晶にCe3+:LiCaAIF6(Ce:LiCAF)がある。Ce:LiCAFはNd:YAGレーザーの第4高調波(266nm)で励起可能であり、発振波長は280nm~320nmに及ぶ広い蛍光スペクトルを持ち、115mJ/cm2と比較的高い飽和フルーエンスを持つ優れた紫外因体レーザー結晶である。これまでに我々のグループが行った研究において、Ce:LiCAFレーザーの高出力化に成功した例を報告している。最近行われた研究ではチャープパルス増幅システム(Chirped pulse amplification, CPA)による超短パルス高ピーク出力レーザーを紫外領域において世界で初めて構築することに成功した。CPAとは高ピーク出力の超短レーザーパルスを発生することができる有効な方法である。実際にチタンサファイア結晶を用いたCPAレーザーシステムによりテラワット(TW)レベルのピーク出力が実現可能となっていることから、紫外領域で発振するCe:LiCAF-CPAレーザーシステムを更に高出力化することによって、TWレベルで発振可能な超短パルス高ピーク出力紫外レーザーも実現の可能性を帯びてくる。
 超短パルス高ピーク出力紫外レーザーシステムを構築するには大きく分けて3つの方法がある。1つはチタンサファイアレーザーを用いた波長変換による紫外光発生である。チタンサファイアレーザーの波長変換により発生する紫外光は、波長可変領域が広いというのが利点だが、変換効率が20%程度とあまり効率が良くなく、パルス幅もナノ秒レベルまでしか到達しておらず、超短パルスと呼べる領域まで達成されていない。2つ目はKrFエネルギーエキシマレーザーを励起光に用いた増幅システムである。この方法はエキシマレーザー自体が多くの問題を抱えており、波長可変性に乏しく利得帯域幅が狭いことがら超短パルス化に向いておらず、ランニングコストが固体レーザーに比べて高いなどの点が挙げられる。3つ目は全固体紫外レーザーである。特に我々が研究を進めているCe:LiCAFを用いた増幅システムは、変換効率やランニングコスト等の面から考えると有用な装置であるといえる。
 Ce:LiCAFレーザーも欠点は抱えている。その1つとしてCe:LiCAFを用いたレーザーの出力は、励起光源であるNd:YAGレーザーの第4高調波のエネルギー不足により制限されてきたことが挙げられる。この問題を解決することがTW化するにあたって必要不可欠である。
 Nd:YAGレーザーの第4高調波を高出力化する上で重要になってくるのは非線形結晶である。その中でも酸素とホウ素の組み合わせを基本構造に持つボレート系非線形光学結晶はバンドギャップの大きいものが多く、他のリン酸系結晶であるKTiOPO4(KTP)、二オフ酸系結晶のLiNbO3(KN)やKNbO3(KN)に比べて紫外域まで透明で、ダメージ損傷閾値が高いなどの特性を持つため、紫外光の発生に適している。代表的なボレート結晶として、β-BaB4O4(BBO)、LiB3O5(LBO)、CsB3O5(CBO)、CsLiB6O10(CLBO)、KBe2BO3F2(KBBF)、Sr2Be2B2O7(SBBO)などが挙げられる。しかしながらこれらの多くは潮解性があり、反射防止薄膜作成が難しいなど、デバイス化の際に特殊な技術や工夫を必要としている。さらに結晶成長が難しく、適当な大きさの高品質結晶が得られにくい材料もあるため、現在もなお新材料開発が行われている。
 本論文で使用した紫外非線形結晶Li2B4O7(LB4)は弾性表面波(Surface Acoustic Wave: SAW)基板として知られている結晶であった。LB4の非線形光学結晶としての可能性は、1991年にNd:YAGレーザーの基本波(1064nm)による第2高調波発生(532nm)の報告のみで、特に非線形光学結晶として注目されてはいなかった。しかしこの材料がCLBO程度の複屈折率(0.054)を持つこと、加工、研磨が容易で耐湿性にも優れていること等から、紫外領域で波長変換特性を測定し、この結晶からNd:YAGレーザーの第4、ならびに第5高調波(213nm)が発生可能であることを発見した。LB4はチョクラルスキー法(Czochralski method)により育成され、結晶成長技術も発展した現在では最大で直径6cmの高品質な光学結晶を育成することが可能となった。またLB4の短波長側の透過端は170nmとなっており、他の紫外因体レーザー結晶に比べて紫外光の吸収率が低いなどの利点がある。本論文では、TW-Ce:LiCAF-CPAレーザーシステム構築のためのパワー増幅モジュールの開発を目的とし、パワー増幅モジュール用励起光源としてLB4を用いた第4高調波の高出力化を試みた。またこのLB4を用いた第4高調波の長時間耐久試験を行った結果を示す。また開発した励起光源を用いて同軸励起によるダブルパス型のパワー増幅モジュールを構築した結果について述べ、TW-Ce:LiCAF-CPAシステム実現への可能性を示す。, 総研大甲第711号}, title = {紫外固体レーザーCe:LiCAFの励起源開発と評価}, year = {} }