@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001259, author = {森, 浩一 and モリ, コウイチ and MORI, Koichi}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {本研究は、直線偏光放射光X線を用い、希土類強磁性体GdのL2,L3吸収端におけるブラッグ反射強度の磁場の向きに依存した、回折ビームの偏光面の主軸の回転角を測定する装置の設計製作とそれを用いた測定例から成っている。この現象は、共鳴散乱の中間状態、つまり電子非占有準位において、その状態密度がスピンの向きにより異なる場合のみ観測される。ゆえにX線共鳴交換散乱ともいうべき現象は、スピン分解型の電子非占有準位の研究する新しい実験手段を提供することを意味している。
 強磁性を試料とした場合、これを飽和磁化状態にまで達せ得るには強い磁場が必要となるため、磁場を繰り返し反転する非対称度の測定法には限界がある。また、磁気余効や磁歪により、試料における磁場の反転が対称であるか不明確である。そこで、繰り返し反転する磁場を必要としない方法として、試料で回折されたX線の偏光状態を解析することによりX線共鳴交換散乱を測定する新しい実験方法を考案した。この場合、入射X線は実験系において電場ベクトルのσ成分とπ成分を持つ必要があるため、偏光面が入射面から45°傾いた直線偏光X線を用いる。回折X線は、試料に磁場を加えない場合(電気散乱)、試料でのBragg角に応じた傾きの直線偏光になる。試料に磁場を加えると、磁気散乱の寄与が加わる。磁気的相互作用は、電気的相互作用に比べ位相がπ/2ずれているので、円偏光成分が発生し回折X線の偏光状態は楕円偏光となり、その主軸は、電気散乱における偏光面から傾いたものとなる。
 楕円偏光の発生とその主軸の回転現象は、磁気円二色性と磁気旋光性による者である。試料を透過したX線においては、X線磁気ファラデー効果として現れ、既に測定されている。試料で回折したX線においては、“X線磁気カー効果”として現れる。
 回折X線の主軸の傾きを測定することにより、X線共鳴交換散乱の寄与を測定する偏光解析測定装置を作製し、X線磁気カー回転の測定に成功した。偏光解析の原理としては偏向電磁石からの軌道面内で直線偏光している放射光X線はBragg角が45°に近い反射を利用したポーラライザーにより、偏光面が軌道面から45°傾いた直線偏光X線に変えることができることを用いて45゜直線偏光X線をまず作り出した。このX線を試料からの回折X線を、ポーラライザーと同様の原理でアナライザーにおいて回折X線の偏光解析を行う。アナライザー結晶のBragg角が45°に近ければ結晶表面における回折X線のσ成分の測定が可能である。アナライザー結晶の方位角に対するσ成分の強度変化を測定することにより、回折X線の偏光状態(偏光面、主軸の傾き)を測定できる。実験装置、偏光回折のシステムとしては、ポーラライザー、電磁石搭載回折計アナライザーの3つの部分からなる。
 測定は楕円型のGd(001)単結晶を用いて吸収端下側-1.5eVで1点、吸収端上側+0.5eVN+3.0eVの2点で測定した。測定はL2吸収端付近で3点の測定を行い、偏光状態を解析するためにアナライザー結晶の幾つかの連続した方位角において5°間隔で積分反射強度を測定した。試料温度T=140KN磁場H=+3.0,-3kGを入射面に垂直方向に加え、004回折x線の偏光解析をおこなった。
 入射X線の偏光状態を解析し、測定値を最小2乗法によりフィティングした結果、偏光面の傾きとして44.8゜ (±0.2°)を得た。強度変化プロファイルの最大値と最小値の比は、約10-3で、計算値とほぼ一致している。またこのプロファイルは、理論式と良い一致を示した。ポラライザーは、正しく機能しており、45°直線偏光X線の発生が確認された。
 回折X線の主軸の回転角は、磁場上向きの値と下向きの値の差として求めた。回転角は、スピン状態密度の差(Δρ)をエネルギーで微分した値に比例する。強度変化プロファイルは、理論式と良い一致を示した。測定した回転角は、+0.5eVにおいては、1.5°(±0.3°)であり測定の精度から有意な値である。計算値とも良く合っている。+3.0eVにおいては、計算値より小さい。Δρのエネルギー微分値が小さいと仮定することで測定値を解釈できる。-1.5eVでは、電気2重極遷移だけ考慮した計算値とは合わない。このエネルギーでは、電気4重極遷移の寄与が予測される。その大きさを電気2重極遷移の約30%と仮定すると測定値を解釈できる。, application/pdf, 総研大甲第10号}, title = {X線共鳴交換散乱における偏光解析及びX線磁気カー効果}, year = {} }