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ての官学アカデミズムである農政学に対置する形で民俗学を構想した。それは早川孝太郎
によって施策推進の当事者という立場で引き継がれ、戦後は宮本常一に継承された。これ
を「実践の民俗学」の潮流とする。その内容は、生活者本人による「自覚的学習」による
実践主体の育成である。宮本後、「ふるさと論」やフォークロリズムの議論において民俗
学の実践に関して議論が行われるものの、いずれも民俗を客体化して利活用するという発
想から離れることが出来ず「実践の民俗学」とは異なる評論的な議論である。現在、中山
間地域農村の深刻な問題を解決するには「実践の民俗学」の現代的再生が必要である。
第一章は、「実践の民俗学」現代的再生のための、目的とその方法論の基礎となる原資
とアプローチ手法について論じる。中山間地域問題の解決のためには自ら周囲の環境を評
価し、効果的な実践を企画し、自身が持つ知恵と技能でもって地域の存続のための実践を
自律的に行う主体の確立が必要である。その主体は近年、「伝承主体」と称される。この
伝承主体の現代的な再構成を目的とする。その再構成のための原資として、暮らしや地域
を形成する生活者の実践行為そのものである「生業」を対象とし、アプローチの手法とし
てコミュニケーショナルな民俗調査を実施することにより、地域生活者を伝承主体として
再構成し、現実問題の解決を図る。それが「実践の民俗学」の現代的再生である。
第二章は、先行研究や調査事例を用いて、農村伝承の現況につき検討する。日本農業研
究所による『農家永続の研究』は、東亜農業研究所により戦中に実施された永続農家調査
の追跡調査であるが、その成果から永続する農家の特徴の一つに地域固有文化の担い手と
いう側面を見いだすことが出来る。この固有文化事象は、成城大学による「山村生活50
年」調査の結果を活用して伝承率を計ってみるに、現代でも多くが伝承されている。地域
の『民俗誌』からは、一つの大字で1,000項目以上の固有文化事象を抽出でき、それ
ぞれが実践的な機能を有している。現代農村にも多くの事象が伝承され、それらは農業・
農村の存続に機能を果たしていることが推察される。また、牛の調教技術伝承を見るに、
こうした伝承は、生活者同士の全人的理解を基礎に生成し、それゆえに生活者の身体中に
蓄積された様々な知識や技能が若い生活者の身体中に蓄積されていることが伺える。そし
て本研究のフィールドを中国中山間地域農村に置き、対象とする問題領域として、当地域
のサンバイ伝承から、「社会」「農地」「環境」を抽出する。
第三章では「社会」について論じる。具体的には農業・農村の組織化問題を取り上げる。
現代的問題の解決に向け、地域営農・生活組織の組織化が研究でも政策においても進めら
れている。多くの先行研究があるが、何れも一部の優良組織をモデル化し、全国の村々に
普及しようとするものであり、村や生活者の実態を捉えたものではない。村にはそれぞれ
個性があり、モデルの適用が出来ないことが多い。実際の農村に入り、質的な調査を実施
すると、地域営農・生活組織という呼称で大枠に括られている集団に地域ごとの個性を発
見しうる。それは、その地域の生活者集団が持っている個性、行動原理である「村がら」
の個性に由来する。この「村がら」と農業農村組織の密接な関連性を、豊松村と君田村で
の調査を元に明らかにする。さらに、「民俗の地域性」に関する研究成果を、調査現地に
フィードバックし、「村がら」の地域性を抽出し、生業の地域性から見た新たな指標を提
起する。その上で、近現代の歴史的インパクトに対し、これらの村々が如何に対応しなが
ら現況に至っているのかを歴史的に検討し、環境の変化を認識し、自律的に対処する主体
としての「村」を明らかにする。そして自律性を持つ本来の「村」を活用することによっ
て、農業農村の現代的課題の解決に向けての指針が提示されることを主張する。
第四章は「農地」の問題、具体的には転作・耕作放棄地問題について論じる。現在中国
中山間地域農村には転作に大豆作が奨励されている。しかし、大豆は多くの労働時間を要
し当地域に適合しない。労働強度が低い土地利用型作物に小麦があるが、当地域での栽培
は技術的に不可能とされていた。しかし、・奥津町での生業調査から小麦作が見いだされた。
さらに調査で得られた情報から、小麦作の技術的課題が具体的に抽出され、現代技術によ
り解決しうる可能性が提示された。そしてまた、小麦に関する高齢生活者の「言葉」は、
現役の農業者の「記憶」を喚起し、小麦作に取り組むインセンティブをも醸成した。この
経緯により、君田村と奥津町の農業者の協力を得て、2年間に及ぶ現地試験を実施し、中
国中山間地域では不可能とされていた小麦が、ほぼ問題なく栽培できることを実証した。
小麦作を不可能とする権威的論理的構造に対抗する手段として、生業の「記憶」が機能し、
転作問題を解決しえた。生業調査が現実問題を解決するための合理的技術と動因を産み出
したのである・さらに・生業暦にある小麦作の製粉・加工・販売方法が再隼されれば、小
規模な小麦作であっても、経済的に有意であること、そして、直売所等の近年の農村環境
整備がそれを可能にしていることを現地実践から明らかにした。伝承という生活者の自律
的実践活動が問題解決を可能にしたのである。
第五章では「環境」、具体的には「農村環境管理問題」について論じる。中国中山間地
域の農業用取水小河川は管理放棄による環境の悪化が著しい。その要因は必ずしも過疎・
高齢化ではなく、生業の変化と、河川所有の変遷により、「過疎・高齢化論」という象徴
体系により助長されている。調査地である大代町は高齢化率48%以上の激甚たる高齢化
地域である。しかし、当地域で生業と川遊びの調査を実施したところ、生業調査によって
民俗芸能が存続され、川遊び調査によって小河川の環境管理活動が30年ぶりに再開され
た。本来地域の生活者の身体には環境への認知、そしてその管理に関する知識・技能が内
部化されている。生業や遊びにおける直接的体験の「記憶」の喚起と、知識や技能におけ
る「伝承」の再生によって、自己の生活圏の問題を明確にし、問題に対処しうる主体を形
成することができる。生活者自身が抱える問題と全的な環境を正しく認識し共有すること
によって、農村生活者は主体的に問題に対処しうるのである。これは農業農村をめぐるあ
らゆる問題の解決に最も必要とされる実践となるであろう。そして、そうした直接的体験
の記憶の喚起、伝承の再生のためには、地域生活者間のTコミュニケーショナルに正しい
認識」の共有という実践が必要である。これは即ち今回「実践の民俗学」の原資とした生
業に対する、コミュニケーショナルな民俗調査というアプローチにより可能となった。こ
うした活動の継続が地域における伝承主体の再構成につながるものと確信する。
終章では、要約と今後取り組むべき残された問題点について紹介する。
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