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る社会のあり方について考察を加えたものである。
 まず、人骨出土例の検討からは、当時の墓制について以下のような知見を得ることが
できた。
 縄文人の埋葬姿勢には、大局的にみて、四肢および腰を強く屈曲させる地域、膝関節
を強く屈曲させる地域、時期を追うごとに伸展化していく地域、屈葬と伸展葬の二つに
分化してしまう地域の四つの地域性が存在する。また、このあり方は時期によっても、
各々の遺跡間によっても変化する。特に遺跡内における埋葬姿勢のあり方には、三つの
パターンが存在する。個々の埋葬姿勢には、年齢段階・性別・埋葬地点の差・装身具や副
葬品の保有状況などによって統一化・偏向化されたような形跡は存在しない。
 縄文人の埋葬された土壙の規模は、基本的に年齢段階が上がるにつれて大きくなって
いく。ただし、壮年期段階を超えるとその大きさには顕著な差はなくなる。これは、壮
年期段階以降、被葬者の成長が停止し、身体の大きさが変化しなくなることと関係があ
る。また、土壙の規模は埋葬姿勢、特に膝の角度や腰の角度によって変化する。したが
って、前述の埋葬姿勢のあり方と考え合わせるならば、土壙の規模には地域性が存在す
ることになる。さらに土壙の規模は同じ埋葬姿勢の場合、性別によっても異なる場合が
存在する。これは男性と女性の体格差に起因するものである。したがって土壙の規模は、
被葬者の埋葬姿勢と年齢段階、性別、体格によって決められていたということができる。
 縄文時代の墓域には個別墓が集中して検出される地点、埋葬小群が存在する。この埋
葬小群は偶然に形成されたものではなく、遺伝的関係性を持った人々が一定の区画を定
めて埋葬された結果、形成されたものである。その占守・用益の主体としては、規模や
性別・年齢構成から推定して、核家族を内包する小家族集団、おそらく世帯などを比定
することができる。
 埋葬人骨の頭位方向は、一定の方角に偏向する場合がある。また、年齢や性別によっ
て異なる場合も存在する。しかし、抜歯や頭蓋形態小変異のあり方といった生前付加属
性および可視属性、遺伝的形質とあわせて比較検討してみると、これらの属性間におい
ては相関する傾向性を見いだすことはできず、出自や双分組織などの社会構造と頭位方
向を直結させて解釈する研究が成立する余地はほとんどない。また、頭位方向が決定さ
れるにあたっては、遺跡周辺のランドマークを意識していたり、遺跡が立地する地形に規
制される場合も存在した。このことは、頭位方向は各遺跡によって独自に決められてい
たとする解釈を可能とする。
 縄文時代には、各種の骨病変を引き起こす病気や怪我に対する呪術的な医療行為の一
環として、装身具を着装する風習が存在した。また、装身具は年齢段階や性別等によっ
て着装できる種類が決まっており、年齢個人の経験値や社会的な位置関係によってその
着装状況は多様に変化した。特に装身具の佩用は集落構成員としてその運営の中核を担
ったであろう壮年期・熟年期段階に多くみられ、子供や老人にはさほど多くは存在しな
い。このことは年齢集団や年齢階梯制の存在を強く示唆する。
 またこの時代には、大人と子供を区別するという大きな社会区分の他に、年齢段階に
よって個人の集団内における社会的位置付けが変化していく社会が存在した。死産児は
土坑墓へ、生産であったが新生児早期死亡例は、再生を祈願されて土器棺内に埋葬され
た。出生後無事に成長した乳児期までの子供は、基本的に母親のもとで生活し、2歳位
で離乳する。その後、幼児期になると、男の子は男性と、女の子は女性と過ごす機会が
多くなり、様々なジェンダー教育が開始された。また、それとともに集落構成員として認
知されるようになり、労働力の分担者としても扱われるようになった。そして、通常は
12歳から16歳頃に成人儀礼を行ない、大人の仲間入りをした。また、成人後には婚姻
関係を結び、女性は早ければ17歳頃には母親となった。その後、壮年期と熟年期を通し
て、集落構成員の中核を担い、老いを感じると生業活動や社会的活動の第一線から退き、
次第に活動領域を縮小させながら、やがて死亡していったものと推察される。縄文時代
には高齢者が、装身具の佩用、埋葬時におけるエラボレーションのあり方などにおいて、
ことさら特別扱いされていた証拠は存在しない。これは長老など、「力を持った高齢者」
の存在に対してネガティブである。
 縄文時代には、一度埋葬した遺体を掘り起こし、これを集積してまた一つの土壙に合
葬するという風習が存在した。これは、複数の小家族集団がその相互の関係性を撤廃し、
新たに合同して一つの集団を創出する時に行なわれた特殊な儀礼であった。このような
多数合葬例は集団統合のモニュメントとして機能し、共通する始祖を祀る祖霊崇拝の拠
り所となった。このことは、集団内においては紐帯の確認と強化を促進させ、集団外に
対しては自らのアイデンティティを自覚させることにつながった。また、その場合、集
落を構成する基礎単位である世帯ないしは世帯を内包する小家族集団は、より大きな人
間集団として再編されることになった。それが直接的な血縁関係を有するリネージなど
を超越し、より地縁的・経済的・社会的な側面を有するクランなどに比定されるもので
あったということは想像に難くない。
 縄文時代には、被葬者の死因によって葬法を変える風習があった。特に、出産時の妊
産婦死亡例や死産児・新生児早期死亡例など、特殊な死亡例では171その傾向が高く、異常
死というものに対して一定の呪術的・観念的対応が行なわれていたことがわかる。また、
このようなことは通常他界観が成立していないと起こりえないことであることから、縄
文時代にはすでに複雑な他界観が成立していたと推察される。
縄文時代には、特定の子供が多数の装身具や副葬品と共伴するという事例は存在しな
い。このことは、階層制の存在を主張する研究者がその指標として挙げる子供の厚葬・
子供への投資が存在しなかったことを裏付けるものであり、縄文時代に世襲的な階層化
社会が存在したことに否定的である。
 一遺跡内における縄文時代の人骨には、抜歯型式などによって筋肉の発達度合いや身
長差などが異なるというような形質差は存在しない。このことは、階級や階層の存在を
暗示する食養仮説や、労働分化の存在に対して否定的である。
 これらの知見をもとに、北海道カリンバ3遺跡や高砂貝塚、青森県三内丸山遺跡、茨
城県中妻貝塚、岡山県津雲貝塚における墓域のあり方を検討し、縄文時代には世襲的な
権力の相続が考えられないこと、したがって階層化社会の存在には賛成できないことを
主張した。また、縄文時代には母系的な社会が存在し、関東においては中期末から後期
にかけてこれが急激に父系的な社会へと変化したこと、西日本では晩期にいたるまで基
本的には母系的な社会が存続していたと考えられることを指摘した。また、本研究を通
して筆者は、縄文時代の墓制と社会を考えるにあたっては、考古学的な知見と人類学的
な知見を合わせて考える方法が極めて有効であることを提示した。
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