@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001285, author = {斉藤, 多鶴子 and サイトウ, タヅコ and SAITO, Tazuko}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {酸化チタンには光起電力があることが知られており、この効果を利用した太陽電池の開発が進められている。光 - 電気エネルギー変換の効率を上げる方法として色素増感法があり、最近O'Reganらの研究で、この手法を用いることにより10%の変換効率を得ることに成功した【1】。この電池は、微粒子の酸化チタン電極を用いて表面積を増大させていること、周辺部にカルボキシル基をもつルテニウム錯体を用いることが特徴である。色素自体の吸光特性はカルボキシル基の存在によって大きな変化はなく、分子のカルボキシル基によって、酸化チタンヘの吸着状態が変化し電荷移動過程が最適化されたものと推測される。しかし、この増感電極における電荷移動過程が解明されている訳ではない。このプロセスがわかれば、増感電極をさらに改良していくことが可能になると考えられ、工業的に興味が持たれる。
 色素から酸化チタンヘの電子移動過程を評価するために、色素の吸着構造を解明することが必要である【2】が、酸化チタン上での色素の吸着構造についての研究は決して多くない。
 電子移動過程と関連のある吸着構造は以下の3点にあり、酸化チタン表面と色素分子中心金属の距離を求めることで解明できると考えられる。
(1)色素の積層構造(単分子膜か積層しているか)
(2)色素と酸化チタンの結合距離(密着しているか離れているか)
(3)色素平面の酸化チタン表面に対する向き(酸化チタン表面に対して垂直か平行か)
本研究では、鏡面反射条件および回折条件の定在波法を併用することにより、色素分子中心金属と酸化チタン表面との距離を精密に求め、色素増感効果に関与する色素吸着構造を解明することを計画した。
 酸化チタン微粒子電極のモデルとして単結晶(110)面の片面鏡面研磨した基板を使用した。基板は真空中で350℃でアニールして清浄化し、その後O.lmMの色素溶液に漬けて吸着を行った。色素はカルボキシル基を持つフタロシアニンコバルト(TCPc)を用いた。吸着前の基板について、表面粗さ測定とFT-IR測定を行った。
 まず、吸着層の密度と膜厚をX線反射率測定【3】によって求め、単分子層が形成されていることを確認した。基板表面からCoイオンまでの距離は鏡面反射条件の定在波法【4】によりnmオーダーで求め、結晶の回折波を用いた定在波法【4】を適用して±0.05nmの精度で決定した。
 測定の結果、色素分子中心Coの基板からの高さは0.97nmと求められ、分子の吸着構造について以下のようなモデルを提案できた。
(1)ルチル型酸化チタン(110)面上ではTCPcは単分子層を形成している。
(2)分子平面は基板上にほぼ直立しており、基板と色素との間に低密度層が存在することが仮定された。
(3)FT-IR測定の結果、基板表面は水素で終端されていることがわかっている。
 したがって、低密度層を介して、色素のカルボキシル基は基板表面のOH基と結合しているモデルが提案できる。

引用文献
[1] 0'Regan,M.Gratzel;Nature,357,737,1991
[2] M.Gratzel;PCPM'98,p.25,1998
[3] L.G.Parratt;PHys.Rev.,95,359,1954
[4] J.Zegenhagen;Surf.Sci.Rep.,18,199,1993, application/pdf, 総研大甲第369号}, title = {ルチル単結晶表面の金属色素分子吸着構造に関する X線散乱法を用いた研究}, year = {} }