@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001290, author = {松本, 勲 and マツモト, イサオ and MATSUMOTO, Isao}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {1. 測定したコンプトンプロファイルからフーリエ変換法を用いて三次元電子運動量密度分布を再構成する方法を実用化した。これにより、dHvA(ド・ハース_ファン・アルフェン効果)などの長い電子の平均自由行程を前提とするこれまでの実験手段では原理的に観測が不可能であった不規則合金のFermi面の形状をコンプトン散乱法から定量的に決定することを初めて可能にした。また、コンプトン散乱法が合金の物性研究の有力な手段となったばかりでなく、合金系材料設計開発のための基礎データを提供する有力な手段となり得た。実用化にあたって特に留意した点は、使用するコンプトンプロファイルの数、内挿法、フーリエ変換の際に必ず現れる高周波成分のフィルタリングとフェルミ面の微細構造の再現性への最適化である。
2. Cu-27.5at%Pd合金のFermi面の形状を実験的に求めることに成功した。Cu-Pd合金は、その組成比と温度をパラメータにして種々の構造相変態を示す。その構造に関しては、X線・電子線回折手法によって求められ、その結果、その様な構造相変態の原動力は Fermi面のネスティングによる電子論的なエネルギーの減少であろうということが1960年代に理論的に予想されていた。したがって、Fermi面の形状はCu-Pd合金の相変態を理解する上で極めて重要な物理量である。しかし、実験的な困難さから、このFermi面形状の直接測定は行われていなかった。本研究で決定したFermi面形状は、従来理論的に予想されていたものとほぼ一致することを実験的に初めて明らかにした。
3. Al合金が製造されるようになって以来の研究課題である Alの排他性の原因、つまりAl合金のα相の安定性について、Fermi面の形状がその原因の一つではないかという観点から、Al-3at%Li合金のFermi面の形状をコンプトンプロファイルの測定と2次元再構成法から求めた。その結果、Fermi面の形状にα相の不安定性を引き起こす原因となるような異常が認められないことを確認した。
本論文の構成は以下の通りである。
第一章では、バンド計算とFermi面について簡単に触れる。また、Fermi面が物性にどのように関与しているのかについて述べる。さらに、Fermi面を観測するための手段、ここでは、dHvA、角度分解光電子分光、そして、本研究に深い関わり合いを持つコンプトン散乱法、陽電子消滅輻射二次元角相関法の各観測方法について、これらを考察し、本研究における観測方法としてなぜコンプトン散乱法を選択したかについて述べる。
次に本研究の主題である短距離秩序の出現および規則-不規則合金におけるFermi面の形状について説明する。研究対象として選択したCu-Pd合金、Al-Li合金について、各相図、過去の報告・実験等によって、これまでに明らかにされている点、不明な点、不明瞭な点などについて検証していく。最後に、各合金に関して、本研究は何を目的として、何を観測していきたいのかについて述べる。
第二章では、コンプトン散乱の原理について慨略を述べ、次に、コンプトンプロファイルからFermi面を観測するために行う電子運動量密度分布の再構成法について、その原理とメカニズムの説明を行う。加えて、電子運動量密度分布という量からκ-空間の占有関数への変換を行うLCW法を紹介する。最後に、実験データの誤差が三次元運動量密度分布の再構成法過程においてどのように伝播し、それが再構成分布にどの程度の影響をもたらすかを導出するアルゴリズムを述べる。
第三章では、KEK PF-AR NE1Aに設置されている高分解能コンプトンスペクトロメータについて簡単に説明する。検出器にはイメージングプレート(IP)を利用している。ここでは、このIPのデータ解析方法について詳しく説明を行い、データ解析における注意点等を述べる。
第四章では、三次元電子運動量密度再構成法について、これをアプリケーションとして確立した過程を詳述する。第二章で三次元電子運動量密度再構成法の概略を述べるが、現実に三次元電子運動量密度再構成法を利用してFermi面形状を求めるためには種々のパラメータの最適化が重要である。ここでは、三次元再構成法において重要な位置を占める内挿法やフィルタリングについて、幾つかの方法あるいはフィルタ関数等をパラメータにして、その最適条件の構築について述べる。そして、本研究で確立させた三次元再構成法が実際に有効であることを示すために、バンド計算によって計算されたpure Cuのコンプトンプロファイルを用いて、三次元運動量密度分布を再構成し、結果を考察する。
第五章は、 Cu-Pd合金のコンプトン散乱実験結果から得られた再構成結果とFermi面を示す。短距離秩序の出現と規則-不規則変態がFermi面の構造に起因しているという理論を検証し、過去に行われた報告・実験等との差異の原因を検討する。
第六章は、Al-Li合金のコンプトン散乱実験結果、および二次元再構成分布の結果を示す。これらの結果を理論計算結果とともに比較し、検討を行う。
第七章は、本論文のまとめおよび今後の展開について述べる。, application/pdf, 総研大甲第442号}, title = {金属合金 Fermi 面形状の三次元電子運動量密度再構成法による研究 -コンプトン散乱応用-}, year = {} }