@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001335, author = {林, 潤 and ハヤシ, ヒロシ and HAYASHI, Hiroshi}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {カボチャなどの脂肪性種子において、発芽したばかりの光合成能を持たない黄化子葉は、細胞内のリピッドボディに蓄えられた貯蔵脂肪を糖に変えることによって生長のためのエネルギー及び炭素源としている。この変換を触媒するものがマイクロボディに存在する脂肪酸β酸化系とグリオキシル酸サイクルの諸酵素である。高等植物において、このβ酸化系酵素のうちacyl-CoA oxidaseは長鎖、中鎖、短鎖の鎖長特異性の異なる3種類のアイソザイムを持つことが報告されている。しかし、これまでの報告は生化学的な解析のみであり、分子的実体が明らかにされていなかった。事実、acyl-CoA oxidaseの高次構造は多様であり、ラット肝のacyl-CoA oxidaseは同一タンパク質が全長と特定部位が切断されて生じた2種類のサブユニットにより構成されている。
 ミトコンドリアとマイクロボディにおいて脂肪酸β酸化が行われる動物とは異なり、高等植物の場合、ミトコンドリアにおけるβ酸化活性が非常に低く、脂肪酸β酸化の存在にはまだ議論の余地はある。そのため、高等植物では主にマイクロボディで脂肪酸を代謝していると考えられており、マイクロボディの脂肪酸代謝システムは非常に重要である。マイクロボディの脂肪酸β酸化系の諸酵素のうち、基質特異性のあるacyl-CoA oxidaseはβ酸化系のスパイラルに入るための初発酵素である。現在まで、脂肪酸β酸化系を構成する他の酵素についての知見はあるが、acyl-CoA oxidaseに関してはその解析が進んでいない。そこで、筆者はacyl-CoA oxidaseの分子的実体を明らかにするためcDNAクローニングを試みた。
 第1章でカボチャのcDNAライブラリーより高等植物で初めてacyl-CoA oxidaseのcDNAを単離、同定した(J.Biol.Chem., 273:8301-8307,1998)。その解析の結果、このタンパク質はマイクロボディへのターゲティングシグナルとしてN末端に延長配列をもつことが判明した。動物のacyl-CoA oxidaseは全てC末端にターゲティングシグナルをもつ形で合成されるので、機能の同一なacyl-CoA oxidaseが植物と動物において輸送シグナルを異にすることが判明した。また、発現パターンが同じβ酸化系酵素のthiolaseと同様の挙動を示すことよりβ酸化系の諸酵素が同じ機構で制御されている可能性が示唆された。また、このacyl-CoA oxidaseの基質特異性を解析したところ長鎖、中鎖のアシルCoAに特異的な長鎖特異的acyl-CoA oxidaseであることが明らかとなった。
 次に第2章では、現在知られている分子量60,000-70,000のacyl-CoA oxidaseより計算分子量が小さい47,000のacyl-CoA oxidaseと推測されるタンパク質について解析を行った。バキュロウイルス発現システムを使用して、活性を保ったまま発現させて精製を行った。精製タンパク質の解析から、C8以下の短鎖アシルCoAに基質特異性をもつ、高等真核生物で初めて分子的実体が報告される短鎖特異的acyl-CoA oxidaseであることを明かにした(J.Biol.Chem., 274:12715-12721, 1999)。動物では短鎖アシルCoAはミトコンドリアに輸送されて代謝されるため、短鎖特異的acyl-CoA oxidaseは存在しない。このことは、短鎖長のアシルCoAがミトコンドリアに輸送されATP生成に利用される動物細胞と異なり、植物細胞では脂肪酸がマイクロボディ内で完全に分解されてアセチルCoAになり、糖新生の基質として利用されていることを示している。
 これら長鎖、短鎖acyl-CoA oxidaseの解析により、高等植物におけるacyl-CoA oxidaseの炭素鎖長特異性がタンパク質自身に由来するものであり、高等植物のマイクロボディβ酸化系には、長鎖、短鎖の基質特異性の異なる2種類のacyl-CoA oxidaseが存在していることが明らかになった。このことにより、マイクロボディ内で脂肪酸が長鎖から短鎖まで完全に代謝されていることが分子レベルで初めて明らかにされた。, application/pdf, 総研大甲第410号}, title = {高等植物における脂肪酸β酸化系酵素の細胞生物学的研究}, year = {} }