@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001341, author = {浦和, 博子 and ウラワ, ヒロコ and URAWA, Hiroko}, month = {2016-02-17}, note = {彼女らは、大腸菌と出芽酵母を用い、DNA複製阻害に依存し、近傍での体細胞相同組み換えが活性化されることを見出している。本研究では、同様の現象がシロイヌナズナにおても見られるかどうかを検討することを目的とした。出芽酵母の複製阻害領域(RFB=Replication fork barrier)は、真核生物において高度に保存された構造をしているリボゾームRNA遺伝子(rDNA)の非転写領域(Non - transcribed spacer;NTS)に見出されている。更に、エンドウ豆を含む数種の生物のNTS内には既にRFBが同定されている。
 これらのことより、生物共通にRFBの存在が考えられるrDNA NTSを用いて、シロイヌナズナにおける体細胞相同組み換えの活性化を試みた。相同組み換え検出遺伝子構造の上流にシロイヌナズナrDNA NTS領域を含む5.1kb断片を持たせたシロイヌナズナ形質転換体20ライン(Fork block Group=Group F)と、相同組み換え検出遺伝子構造のみを持たせたシロイヌナズナ形質転換体18ライン(Control Group)を分離し、その相同組み換え活性を比較した。相同組み換え検出には、相同組み換えが起こればuidA遺伝子が発現する構造を用いた。ロゼット葉が全て展開した頃の植物体を、細胞組織染色によるGUSアッセイにより、相同組み換えを青色のスポットとして視覚化した。その結果、何れのグループにおいても、根や子葉で多くの青色スポットが観察された。また観察した全ての器官において、青色スポットはコントロールグループに比べグループFに多く見られた。本葉におけるスポット数を比較定量したところ、グループFはコントロールグループの9倍以上となった。これは、出芽酵母でのNTS導入による相同組み換え活性化頻度と同程度である。更に、コントロールグループにおいて、他より遙かに多くのスポットが観察された2ラインを除外し比較した場合は、グループFはコントロールグループの63倍となった。
 グループ内の他のラインに比べ遙かに多くのスポットが観察されたラインとして、上記の2ラインの他に、グループFの100倍以上(これは、コントロールグループの1000倍以上になる。)の頻度でスポットが観察されたF43ラインが見出された(このラインは統計処理等からは除いた)。このラインでは、分子レベルで組み換え後分子の存在が確認できる程、高頻度で組み換えが起こっていた。高頻度組み換えラインの出現は、T-DNAの挿入場所による影響が原因として考えられ、その挿入場所に興味が持たれる。
 今回の結果から、rDNA NTSによる高頻度な相同組み換え活性が、大腸菌や出芽酵母に限らず、生物に広く一般に見られる現象である可能性が示唆された。この相同組み換え活性化の引き金としては、DNA複製阻害が考えられる。彼らは大腸菌や出芽酵母の遺伝学的解析から、DNA複製阻害が起こると、近傍でDNA二重鎖切断が生じ、体細胞相同組み換えが活性化されるというモデルを提出しているが、今回の植物の系においても同様なモデルで説明が可能である。彼らはNTSのもつこの活性の生物学的意義として、rDNAコピー数の調節や、rDNA配列の均一性(ユニット間の配列の同一性)を考えている。更に植物では、rDNA以外のdisease resistance gene family等の多重遺伝子族においても、その多様性と均一性の確立や維持にこの様な活性が関与している可能性も考えている。
 現在までに植物体細胞相同組み換えの研究には、変異株の単離解析等の遺伝学的解析の他に、DNA二重鎖切断等の導入により活性化させた組み換え反応を解析することが行われてきた。また、出芽酵母の組み換え関連遺伝子の相同遺伝子の単離も行われている。しかしながら、植物における相同組み換え機構はよくわかっていない。ゲノムDNAの組み換え反応は種に遺伝的多様性を持たせるために重要である反面、多くの繰り返し配列を含む植物ゲノムにおいては、ゲノム構造の危機的変化をもたらす可能性も持ち合わせている。加えて、植物細胞は全能性を持ち、体細胞でのゲノム構造変化も、次世代へと引き継がれる可能性がある。これらのことから考えると、危機的なゲノム構造変化を回避するために、植物においては相同組み換え活性が低く抑えられている可能性が考えられる。そしてこのことが、植物における組み換え機構の解析が進まないだけでなく、植物における遺伝子破壊技術開発を遅らせていると考えられる。今回の彼らの研究は、これまでに報告されている植物を用いたDNA二重鎖切断の導入等による相同組み換えの活性化頻度上昇(3~10倍)と比較しても、同程度、あるいはそれ以上であり、なおかつ、それらの報告とは違い、組み換えの活性化を誘導するための外部因子(例えばDNA二重鎖切断を起こさせるための酵素)の影響を考慮することなく、in vivoでの相同組み換え反応機構を解析できる。また、出芽酵母においては、用いるNTS領域を全域から相同組み換え活性化に必須の領域に限定すると、相同組み換え頻度が更に10倍上昇することが報告されているが、同様のアプローチを取ることにより、シロイヌナズナにおいても、更なる相同組み換えの活性化が期待できる。更には、既にコントロールの1000倍以上で組み換えを起こすF43ラインを得ている。これらの点から、彼らの研究は、植物における相同組み換えの研究にも貢献すると考えられる。, 総研大甲第494号}, title = {シロイヌナズナのリボゾームRNA遺伝子非転写領域 を用いた相同組み換え活性化に関する研究}, year = {} }