@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001342, author = {三橋, 尚登 and ミツハシ, ナオト and MITSUHASHI, Naoto}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {高等植物の液胞は,植物の生長・分化の過程や環境の変化に応じてその構造と機能が大きく変動するオルガネラである.この液胞の分化が,植物の細胞分化や環境応答に重要な役割を果たしていることが最近明らかになってきた.液胞は,栄養器官に見られる分解型液胞と種子に見られるタンパク質蓄積型液胞の2種類に大別される.分解型液胞は細胞内の不要な成分の分解に関わるのに対し,タンパク質蓄積型液胞は種子タンパク質を貯蔵するという全く逆の機能を発揮する.この2種類の液胞は,膜タンパク質の入れ替えを伴って,可逆的に相互変換する能力を供えている.したがって,液胞膜タンパク質を指標として液胞の分化転換機構の解析が可能である.前半は,液胞の相互変換が行われる種子の登熟・発芽期に一過的に発現する新規の液胞膜タンパク質であるMP73の構造と性質についての解析結果を示す.後半では,液胞のダイナミックな動態や液胞タンパク質の輸送機構を解析する新たな実験系の構築を目指し,GFPを指標として液胞を含む植物細胞の分泌輸送経路を可視化した.

第1章 カボチャプロテインボディ膜に存在するMP73の解析
 乾燥種子に一過的に発現する液胞膜タンパク質の機能を調べるため,カボチャ乾燥種子から純度の高いプロテインボディ膜画分を調製した.そこに含まれる主要な膜タンパク質のうち,未同定のMP73の構造とその性質について解析を行った.単離した MP73のcDNAから予測されたアミノ酸配列から, MP73前駆体は,シグナルペプチド,p24領域,MP73の3つの領域から構成されていることが判明した. MP73の C末端には非常にユニークな13回繰り返し配列を含む親水性の高いGlu/Arg-rich domainが存在した.二次構造予測の結果,この領域はα-ヘリックス構造をとっている可能性が高い.また,MP73にはN-グリコシダーゼFで切断されるN結合型糖鎖が付加されていることから,プロテインボディの内腔側に存在することが明らかとなった.さらに,ハイドロパシープロットで膜貫通領域が認められなかったことと,アルカリ溶液で可溶性であることから、膜表在タンパク質であることが示された。
 抗MP73抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察および単離PACベシクル画分のイムノブロット解析の結果から,MP73は小胞体(ER)でN末端にp24領域を持つ102 kDaのプロ型前駆体として合成された後,PACベシクルを経由して液胞に輸送され,液胞内でプロセシングを受けてp24領域とMP73になることが示唆された.MP73はプロテインボディ膜上で100 kDaの複合体を形成しているが,このMP73複合体の大きさは,PACベシクル画分で検出されたプロ型前駆体とほぼ等しいことから,p24領域と複合体を形成していることが示唆された.MP73は,種子の乾燥期に一過的に出現することから,液胞膜の乾燥耐性や構造維持に関与している可能'性が強く示唆された.

第2章 GFPによる液胞・分泌輸送系オルガネラの可視化
 高等植物の液胞のダイナミックな動態および液胞への輸送機構を解明するため,GFPをレポータータンパク質として,タバコ培養細胞BY-2に発現させる実験系を構築した.GFPのN末端に2SアルブミンのシグナルペプチドをつないだSP-GFPは,ERで合成され培地中に分泌された.SP-GFPのC末端にER残留シグナルHDELを付加したSP-GFP-HDELは,ERに局在し,明瞭な細胞内ネットワーク構造が
観察された.液胞輸送シグナルであるカボチャ2SアルブミンのC末端18アミノ酸をSP-GFPのO末端に付加したSP-GFP-2SCは,液胞内に一過的に蓄積し,植え継ぎ7-8日目に急激に消失することが分かった.GFPが蓄積した液胞は,酸'性コンパートメントを染色するニュートラルレッドによって強く染色された.この結果は,これまでGFPの蛍光は観察されないとされてきた酸性液胞内にGFPが蓄積されることを示すはじめての報告である.液胞輸送レセプターPV72の膜貫通領域と細胞質領域をSP-GFPのC末端につないだSP-GFP-PV72Cは,細胞質中のでゴルジ体様の構造物に局在するが,栄養飢餓状態の細胞では,GFPの蛍光は液胞に移行した.この2つのタイプの
細胞に対して抗GFP抗体を用いてイムノブロット解析を行ったところ,ゴルジ型の局在を示す細胞ではGFP-PV72の全長が検出されるのに対し,液胞に移行した細胞ではGFPのみの大きさで検出された.おそらくはプレ液胞コンパートメントで膜貫通領域とGFPの間が切断され,GFPのみが液胞に移行したと考えられた.
 細胞内の2種類の液胞を識別するため,分解型液胞膜タンパク質γ-TIPとタンパク質蓄積型液胞膜タンパク質α-TIPをGFPにつないだ融合タンパク質をタバコ培養細胞BY-2に発現させた.各々の融合タンパク質が正しく液胞膜に輸送されていることを確認した.これまで,それぞれのTIPには,2種類の液胞それぞれへ選別輸送されるための異なるシグナルが存在すると思われていたが,BY-2細胞内でγ-TIPとα-TIPが同じ液胞に輸送されることが分かった.本研究により,ダイナミックな液胞の動態を生きた細胞を用いて解析するための実験系が確立された.今後この系をシロイヌナズナなどの植物体に導入することによって,各器官で分化転換した液胞の生理的役割が明らかにされることが期待される., application/pdf, 総研大甲第495号}, title = {高等植物の液胞の動態:新規の膜タンパク質と GFPによる可視化}, year = {} }