@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001353, author = {河本, 恭子 and コウモト, ヤスコ and KOUMOTO, Yasuko}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {生物の持つ遺伝情報はDNA→mRNA→タンパク質というセントラルドグマに従い伝達され、機能を発揮する。DNA、RNAという核酸は主としてその1次構造が重要であるのに対して、タンパク質は正しい高次構造をとる必要がある。高次構造形成(巻き戻り)は遺伝情報発現における重要な過程の1つであると考えられる。巻き戻りは自発的におこると考えられてきたが、近年いわゆる分子シャペロンと呼ばれる一群のタンパク質が重要な機能を果たすことが明らかになってきた。分子シャペロンの中でもシャペロニンシステムはタンパク質の巻き戻り過程に直接関与する重要な因子である。そこで、本研究ではシャペロニンシステムに注目し、高等植物においてその全体像の解明を目的とした。
シャペロニンシステムは原核細胞から真核細胞まで全ての生物が共通に持っている。シャペロニンシステムはシャペロニン(Cpn)とコ-シャペロニンから成る。最も研究の進んでいるのは大腸菌のシャペロニン(GroEL)である。GroELは57kDaのタンパク質で、その14量体が形成する筒状の構造はタンパク質の巻き戻りのための‘場’となる。GroELはGroESと呼ばれる10kDaの調節因子を必要とし、このような調節因子はコーシャペロニンと総称されている。本研究においてはまず、コーシャペロニンについて解析を行った。
シロイヌナズナのコーシャペロニンホモログを同定するため、大腸菌のGroES温度感受性突然変異体を相補するcDNAクローンを単離した。得られたクローンは10kDaのコ-シャペロニン(Cpn10)ホモログをコードしていた。動物のミトコンドリアのCpn10に50%程度の高い同一性を示したことからミトコンドリアCpn10のホモログ(AT1)であると予想された。Cpn10(AT1)はシロイヌナズナのロゼット葉を用いた細胞分画や、過剰発現する形質転換タバコを用いた免疫電顕により、ミトコンドリアに局在すること確かめられた。
葉緑体のコ-シャペロニンホモログであるCpn20はCpn10(GroES)様のドメインが2つタンデムにつながった構造をもつ。シロイヌナズナのCpn20のcDNAクローンを単離した結果、予感される成熟タンパク質部分はホウレンソウのものと61%の同一性を示した。過剰発現する形質転換タバコを用いた免疫電顕により、葉緑体に局在することが確かめられた。GroESは7量体で機能することが知られているが、Cpn20(AT2)の多量体構造を調べた結果から4量体を形成することがわかった。Cpn20(AT2)の4量体にはGroES様ドメインが8個含まれることになる。Cpn20(AT2)はGroESと同様に、GroELと相互作用しコ-シャペロニンとして機能できる。GroELとCpn20(AT2)の複合体に含まれるそれぞれの量比は14:3.6であったので、GroELの14量体とCpn20(AT2)の4量体が結合していることが強く示唆された。GroESはモバイルループと呼ばれる突出した部位でGroELと結合する。GroESとGroELの複合体では、1つのモバイルループが1つのGroELと結合していると考えられる。一方、Cpn20(AT2)の多量体は8カ所のモバイルループを持つため、GroELとの結合は1対1ではなく不規則で柔軟な相互作用をしていると考えられる。
さらに、ESTデータバンクを検索することにより、アミノ末端に延長配列を持つCpn10ホモログ(AT3)が見つかった。既知のコ-シャペロニンホモログの系統樹を作成したところ、Cpn10(AT3)はどのホモログとも相同性が低いことがわかった。結晶構造が解析されているGroESとの比較から、Cpn10(AT3)はルーフ構造に当たる領域が大きく変化したコ-シャペロニンであると推測された。T4ファージのコ-シャペロニンホモログであるGp31は、より大きな基質に対応するためにルーフ構造を欠失する形に進化したと考えられている。CPn10(AT3)もルーフ構造に変異が変化していることから、特異的な基質が存在する可能性がある。Cpn10(AT3)はチラコイド内腔に存在する可能性があり、葉緑体の発達と関連した発現パターンを示すことからもチラコイド膜に多く含まれる光合成に関わるタンパク質が基質である可能性が考えられた。
本研究では、シロイヌナズナにおいて3種類のコ-シャペロニンホモログを同定した。その結果、ミトコンドリアのシャペロニンシステムは大腸菌のGroEL-GroES型とよく似ていることがわかった。一方葉緑体には複数のシャペロニンシステムが存在し、GroEL-GroES型とは異なる特徴を持っていた。おそらく基質となるタンパク質の特異性に合わせて変化してきたのだろうと考えている。, application/pdf, 総研大乙第88号}, title = {シロイヌナズナにおけるコーシャペロニンの解析}, year = {} }