@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001388, author = {小松, 勇介 and コマツ, ユウスケ and KOMATSU, Yusuke}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {霊長類の大脳皮質の領野は解剖学的、機能的に明瞭に区別され、脳機能発現における重要な構造単位となっている。一方、近年分子生物学により神経細胞の構造や活動機構などについて分子基盤が深まってきている。また、ゲノムシークエンスの解読とDNAアレイや遺伝子操作技術の向上により、よりシステマチックな分子生物学的研究が可能になってきた。彼は皮質機能を分子生物学的知見により理解を深めるため、領野特性に対する分子的アプローチを試みた。まずDifferential display法により、領野間で発現差を示す遺伝子をスクリーニングした。比較は前頭葉の連合野(FDΔ)、側頭葉の視覚連合野(TE)、1次運動野(FA)、1次体性感覚野(PC)、1次視覚野(OC)の5つの機能的、空間的に異なる領野でおこない、2種類の異なる発現パターンを示す分子をクローニングすることができた。Retinol-binding protein(RBP)は連合野であるFDΔ、TEで高く、FAで中程度、PCで低レベルの発現を示した。OCではほとんど発現は観察されなかった。これに対し、parvalbumin(PV)はOCでもっとも高く次にPC、FAやTEでは低く、FDΔではもっとも低かった。さらにRBP発現の高い領野特異性をin situ hybridizationで組織学的に解析した。RBPmRNAの発現は連合野では2,3,5層で高く、1次視覚野では明らかな発現は2層の最上部の薄い層に弱くみられただけであった。その他の感覚野でも1次視覚野ほどではないが発現は低く、2から3層の上部に限局し、5層には弱いシグナルが観察されただけであった。また、視覚経路にそってRBPの2-3層における分布は段階的に3層深部へ向かって増加した。これらの層分布は1次視覚野に特異的に発現するocc1の発現分布と相補的であった(Tochitani et al., 2001)。さらに、occ1の発現が視床神経核からの投射に空間的に相関するのに対し、RBP発現は視床神経投射の終末の分布とは逆相関を示し、RBPの発現分布は視床とではなく皮質内での結合に対応しているようであった。また、新生仔の発現パターンからRBPの領野差のある発現は生後発生の段階で完成することがわかった。さらにRBPのマウスやラットでの発現は、領野差はあるものの、サルとはまったく異なり、層状の発現は観察されなかった。これらの発現分布の様相はRBPが霊長類の連合野の構造基盤を明らかにするための分子的、進化的アプローチを可能にすることを示唆している。
 さらに、RLCS (Restriction Landmark cDNA Scanning)法により領野間の遺伝子発現の違いを比較した。この方法はcDNAを2本鎖まで合成し、2回制限酵素で切断し、各切断ごとに電気泳動行い2次元展開して一度に数百から1000個近い種類の遺伝子発現をスポット状のシグナルとして比較でき、Differential display法に比べよりシステマチックである。RLCS法によりPCを除く4領野について、11の制限酵素の組み合わせにより得られた11種類のスポットパターンから22個の遺伝子(重複があり、26個のスポット)が領野差のある発現を示すものとしてスクリーニングされた。これは皮質における遺伝子発現のごく少数(<<1%)が領野差のある発現を示すことが推測される。また領野差の再現性を確認するためのRT-PCRの結果より得られた遺伝子発現プロファイルでは、FDΔとOCとが相反することが示された。TEはFDΔと類似するものの、異なるプロファイルであった。FAはOCや連合野のどちらにも類似せず、独特な発現プロファイルを示した。このような機能領野に対応した遺伝子発現の違いは、領野間の機能とそれに関係する構造の異質性について、固有の分子制御機構が存在することを示唆している可能性が考えられる。, application/pdf, 総研大甲第813号}, title = {霊長類の皮質領野間での遺伝子発現比較}, year = {} }