@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001446, author = {小笠原, 希実 and オガサワラ, キミ and OGASAWARA, Kimi}, month = {2016-02-17}, note = {小胞体由来の新奇オルガネラであるERボディは、シロイヌナズナをはじめとするアブラ
ナ科植物に存在する。ERボディは、アブラナ科植物の幼植物体全身の表皮に恒常的に存在
するが、成熟葉には存在しない。アブラナ科植物の幼植物体全身の表皮に恒常的に存在す
るERボディを恒常型ERボディと名付けた。恒常型ERボディを欠く突然変異体nail変異
株の解析から、恒常型ERボディに含まれる主な構成成分はPYK10と呼ばれるβグルコシダ
ーゼであることがわかっている。一方で、恒常型ERボディが存在しない成熟葉に傷害を
与えると、傷口の周りにERボディが誘導される。この傷害により誘導されるERボディを
誘導型ERボディと名付けた。
 恒常型ERボディは、生体防御に関与する例が多く知られているβグルコシダーゼである
PYK10タンパク質を内部に蓄積することに加え、誘導型ERボディは傷害、食害、ジャスモ
ン酸メチル処理によって誘導されることから、ERボディの植物体内における機能は生体防
御に関与すると考えられる。本研究では、傷害誘導と菌感染の二つを用いて、総合的なER
ボディの機能を明らかにすることを目的とした。
 第1章では傷害誘導を用いた誘導型ERボディの解析を行った。まず、ERボディの数に
着目し、誘導型ERボディが多く誘導される条件を検討した。その結果、小胞体をGFPで可
視化した野生株(GFPh植物体)の発芽9日目の子葉組織を用いると、傷害後66時間でER
ボディの数が明確に増加することを見いだした。GFPh植物体の子葉の片方にのみ傷害を与
えたところ、傷害を与えた子葉(locally-wounded cotyledon)のERボディの数が4倍以上
に増加するとともに、傷害を与えていない子葉(systemically-wounded cotyledon)のER
ボディの数も5倍以上に増加した。GFPh植物体の子葉に傷害を与えた66時間後に定量PCR
を行った結果、恒常型ERボディの主な内容物であるPYK10の発現量は変わらず、そのホモ
ログであるBGLU18の発現が誘導されることが判明した。これらの結果より、恒常型と誘導
型ERボディの内容物は異なることが明らかとなり、それぞれのERボディが異なった機能
を果たしていることが示唆された。
 第2章ではPseudomonas syringae pv. tomato(Pst) DC3000(avrRpm1)接種によって誘
導されるシロイヌナズナの過敏感反応系および罹病性病原菌PstDC3000(vector)を用いて、
植物の防御機構とERボディ内容物PYK10タンパク質の関わりを検討した。本研究では、子
葉の次に発生する2枚のロゼット業をNo.1, 2とし、以降の葉は発生の順に番号(leaf
number、以後leaf No. とする)をつけ、それぞれの葉における防御応答を詳しく調べた。
植物では本葉、特にNo.7以降の葉での防御機構はよく調べられているが、それ以前の葉
(No. 1-6)の防御機構は調べられていない。Leaf No. ごとに抵抗性が異なっているのでは
ないかと考えた。
 そこで本研究では、過敏感反応を起こさないPst DC3000(vector) および過敏感反応を起
こすPst DC3000(avrRpml)接種によって誘導されるシロイヌナズナの防御応答を調べ、ER
ボディが存在するGFPh植物体と存在しないnail変異株を比較することで、ERボディおよ
びPYK10と植物の生体防御機構の関連を明らかにすることを目的とした。ERボディおよび
PYK10が蓄積しないnail、pyk10変異体にPstDC3000(avrRpm1)を接種した。接種後3日目
の菌数を測定した結果、GFPh植物体と比較してnail変異体では菌数が顕著に増加してい
た。Pst DC3000(avrRpm1)は接種によって過敏感反応を引き起こすので、この生菌数の差と
細胞死の関連を、細胞死の指標となるイオン漏洩伝導率の経時変化および感染12時間後の
トリパンブルー染色を行い調べた。PstDC3000(avrRpm1)接種後のGFPh植物体とnail変異
株では、すべてのleaf No.においてイオン漏洩伝導率およびトリパンブルー染色に差がみ
られなかった。これらの結果よりPYK10は過敏感細胞死に直接関係ないことが明らかにな
った。
 また、PstDC3000(avrRpm1)接種後の第7葉をもちいて、ERボディの内容物であるPYK10
の発現を定量PCRを用いて調べたところ、未接種と比較して約80倍に発現が上昇していた。
以上の結果からPYK10が細胞死に非依存的な抵抗性に関与していることが示唆された。
 本研究では、傷害誘導および菌感染の手法を用いた解析より、ERボディは植物の生体防
御に深く関わっていることが示唆された。, 総研大甲第1252号}, title = {新奇小胞体由来オルガネラ“ERボディ”の機能解析}, year = {} }