@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001513, author = {戸田, 知得 and トダ, チトク and TODA, Chitoku}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {レプチンは脂肪細胞より分泌される抗肥満ホルモンである。レプチンを投与すると摂食
量が減少し、エネルギー消費が増加することによって体重が減少する。レプチンによる抗
肥満作用の大部分は、視床下部のレプチン受容体を介することが知られている。また、最
近の研究により、レプチンの摂食抑制作用は、脳内のメラノコルチン受容体(MCR)を介
することも明らかとなった。MCRは、視床下部弓状核(ARC)に存在する
pro-opiomelanocortin (POMC)ニューロンから放出されるα-melanocyte-stimulating
hormone (α-MSH) によって活性化され、逆にARCに存在するagouti-related peptide
(AgRP)発現ニューロンによって抑制される。レプチンはPOMCニューロンを活性化する
と同時に、AgRPニューロンを抑制することでMCRを活性化して、抗肥満作用を引き起こす。
 最近の研究により、レプチンは、抗肥満作用とは独立に、糖、脂質代謝を強く調節し、
抗糖尿病作用を持つことが明らかとなった。 例えば、レプチン欠乏状態にある脂肪萎縮症
の症例にレプチンを投与すると、糖尿病や高脂血症が解消されるなどの劇的な治療効果が
ある。これまでの研究で、レプチンを内側視床下部に投与すると、骨格筋、褐色脂肪(BAT)
および心臓において選択的にグルコースの取り込みが増加することが分かっている
(Minokoshi Y, et al. Diabetes 48:287, 1999)。しかし、レプチンによる糖代謝調節作用に
おいて視床下部のどの神経核が重要であるか、また脳内MCRが関与するか否かは不明で
ある。本研究の目的は、レプチンによる末梢組織での糖代謝調節作用、特に糖取り込み促
進作用において、視床下部のどの神経核が重要であるかを、マウスを用いて明らかにする
ことである。さらに、脳内MCRがレプチンによる糖取り込み促進作用にどのような調節
作用を営むかを調べた。
 レプチンを内側視床下部に投与したことによるグルコースの取り込み促進作用は交感神
経節遮断薬や神経切除によって抑制される (Haque MS, et al. Diabetes 48:1706, 1999)。
そこで、内側視床下部の中でレプチン受容体を高発現し、且つ交感神経の活動調節に関与
する4つの神経核、腹内側核(VMH)、背内側核(DMH)、室傍核(PVH)およびARC
に、レプチンを選択的に投与して末梢組織でのグルコースの取り込みを測定した。グルコ
ースの取り込みは2-[3H]deoxy-D-glucose(2DG)法を用いて測定した。レプチン投与の成否
は、レプチンを投与後、それぞれの神経核を採取し、レプチンの細胞内シグナル分子の一
つであるsignal transducer and activator of transcription 3 (STAT3) のリン酸化をウェ
スタンブロット法で検出することにより確認した。
 レプチンをマウスのVMHに投与すると、骨格筋、BATおよび心臓において2DGの取
り込みが増加した。レプチンをARCに投与すると、BATにおいてのみ2DGの取り込みが
増加した。レプチンをDMHやPVHに投与してもグルコースの取り込みは増加しなかった。
レプチンをいずれの神経核に投与しても脾臓および白色脂肪において2DGの取り込みは
増加しなかった。これらの結果から、調べた内側視床下部の中でVMHおよびARCのレプ
チン受容体が、末梢組織のグルコースの取り込みを調節することが明らかとなった。また、
VMH及びARCで、その組織が異なることも明らかとなった。
 次に、レプチンを末梢に投与した時の2DGの取り込み促進作用に、VMHのレプチン受
容体がどのような調節作用を営むかを明らかにするため、レプチン中和抗体を両側VMH
に投与した後、レプチンを腹腔内に投与して末梢組織におけるグルコースの取り込みを調
べた。レプチンを腹腔内に投与すると、レプチンをVMHに投与した時と同様、骨格筋、
BATおよび心臓において2DGの取り込みが増加した。脾臓および白色脂肪では増加しな
かった。レプチン中和抗体をVMHに投与すると、レプチンによる上記組織での2DGの取
り込み増加作用が抑制された。これらの実験結果から、VMHは、レプチンによる末梢組織
でのグルコースの取り込みに必須であることが明らかとなった。
 次に脳内MCRが、レプチンによる末梢組織でのグルコースの取り込みにどのような調
節作用を及ぼすかを調べた。MCRアンタゴニストであるSHU9119を脳室内に投与すると、
レプチンをVMHに投与した時の末梢組織での2DGの取り込み増加作用は完全に抑制され
た。さらに、MCRアゴニストであるMT-IIを脳室内に投与すると、レプチンと同様、骨
格筋、BATおよび心臓において2DGの取り込みが増加した。このことから、レプチンに
よる末梢組織でのグルコースの取り込みはMCRを介することが明らかとなった。
 VMHの一部のニューロンを刺激すると、ARCのα-MSHニューロンが活性化することが
示されている(Sternson SM. et al. Nat Neurosci. 8:1356 2005)。また、本研究において、
レプチンをVMHに投与すると、VMHだけでなくARCにおいてc-FOSの発現が増加した。
これに対して、STAT3は、VMHにおいてのみリン酸化が増加し、ARCでは変化しなかっ
た。この実験結果は、レプチンがVMHニューロンを活性化した後、ARCのα-MSHニュ
ーロンを二次的に活性化し、その結果、 末梢組織でのグルコースの取り込みを増加させる
ことを示唆する。
 それでは、どの神経核のMCRが末梢組織でのグルコースの取り込みに関与するのであ
ろうか。このことを調べるために、MCRを高発現し、且つ交感神経の活性化に関与する
VMH、DMH、PVHおよびARCに、各々MT-IIを選択的に投与して末梢組織でのグルコ
ースの取り込みを測定した。MT-IIをVMHに投与すると、レプチンと同様に、骨格筋、
BATおよび心臓において2DGの取り込みが増加した。これに対して、PVHに投与すると
BATにおいてのみ2DGの取り込みが増加した。MT-IIをDMHおよびARCに投与しても
2DGの取り込みは増加しなかった。
 以上の結果から、VMHのレプチン受容体は、レプチンによる骨格筋、BATおよび心臓
でのグルコース取り込みに関与することが明らかとなった。また、その作用は脳内のMCR
を介することが示された。さらに、VMHはMT-IIによる骨格筋、BATおよび心臓のグル
コース取り込みにも関与すること、ARCのレプチン受容体およびPVHのMCRは褐色脂
肪でのグルコースの取り込みに関与することが明らかとなった。以上のことから、内側視
床下部の各神経核は、レプチンおよびメラノコルチン受容体作動薬による末梢組織のグル
コース取り込み促進作用に異なる調節作用を営むことが、本研究において初めて明らかと
なった。, application/pdf, 総研大甲第1298号}, title = {Distinct effects of leptin and melanocortin agonist in medial hypothalamic nuclei on glucose uptake in peripheral tissues}, year = {} }