@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000155, author = {久司, 美登 and クシ, ヨシノリ and KUSHI, Yoshinori}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {これまで、様々な金属錯体がCOやHCOO-の生成を伴う電気化学的、光化学的CO2還元を触媒することが示されており、CO2は金属上で活性化されると考えられている。低原子価金属上へのCO2の求電子的攻撃により形成されるMetal-ηi‐CO2錯体([M-CO2]n+)はプロトン供給可能な反応系ではブロトン化を受けてHCOO・やCO生成への前駆体である  [M-C(O)OH](n+1)+や[M-CO](n+2)+を形成する。(式1)  一方、プロトン源が存在しない反応系では、Metal-η1‐CO2錯体は別のCO2への酸素原子移動反応を起こし[M‐CO]2+とCO32-を与える事も知られている。(式2)  その結果、非水溶媒での金属錯体触媒による電気化学的CO2還元ではCO2の還元的不均化反応(Reductive Disproportionation)によるCOとCO32-生成が起こりやすくなる。(式3) 式1、式2から予想されるように金属イオン上ではCO2からCOへの変換がスムースに進行するため、金属錯体触媒によるCO2還元でのシュウ酸等のC2化合物生成(式4) は困難であると考えられる。そのうえCO2-のカップリング反応による触媒を用いないシュウ酸生成反応は、E(CO2/C02-)=-2.21V(vs.SCE)とかなり負の標準酸化還元電位を示すため熱力学的には起こりにくいプロセスである。事実、金属錯体触媒を用いた均一系のCO2還元での反応生成物はこれまでCOかHCOO-に限られている。本研究の目的はCOやHCOO-生成を伴わない新しいCO2還元反応を見いだし、CO2の活性化に対して新たな概念を創出することである。本論文では金属硫黄クラスターを用いることにより、均一系触媒による電気化学的CO2還元反応において初めて達成した選択的シュウ酸生成について述べる。  最近、我々の研究グルーブでは[Fe6Mo2S8(SEt)9]5-の架橋硫黄原子上で活性化されたCO2とチオエステルとの反応における触媒的α-ケト酸生成反応を報告している。第2章では、この反応機構を明らかにするため2電子還元されたFeMoSクラスター[Fe6Mo2S8(SR)9]5-(R=Et and Ph)とCO2との相互作用を検討した。FeMoSクラスターの還元体とCO2との相互作用を電解条件下で観察するため新たに電解IRセルを開発した。電解条件下で赤外吸収スペクトルを測定するための電気化学セル(電解IRセル)は可視紫外吸収スペクトル測定用OTTLEセル(0ptically Transparent Thin-Layer Electrode)を参考にして新しく開発した。電解IRセルは一組のKBrの窓板に電極を組み込んだパラフィルム(R)製のスペーサーをはさみこむことにより作成した。電極系は3電極方式を採用し金メッシュの作用電極と白金線の対電極とを薄層内に記置しルギン管で参照電極を薄層から隔離した。CO2飽和CD3CN中‐1.50Vで(Bu4N)3〔Fe6Mo2S3(SPh)9]の定電位電解を行ないながら赤外スペクトルを観測すると1678と1641cm-1に[Fe6Mo2S8(SPh)9]5-に付加したCO2のV(C02)と帰属される強い吸収が現れた。これらの吸収は-0.80Vで再酸化する過程で完全に消滅した。さらに、CO2飽和CH3CN中-1.50Vで(Bu4N)3[Fe6Mo2S8(SPh)9]の定電位電解を続けると触媒的にシュウ酸が生成していることがわかった。  次に、FeMoSクラスター[Fe6Mo2(μ3‐S)8(SR)9]3-(R=Et and Ph)に加えて、CH3CN中でM3S2クラスター([(CoCp)3(μ3‐S)2]2+と[(MCp+)3(μ3-S)2]2+(M=Rh and Ir)を触摸とする電気化学的CO2還元反応を検討した。これらの3種類のM3S2クラスターの2電子還元体は電気化学的CO2還元反応においてCOやHCOO-の生成を伴わない選択的シュウ酸生成反応(式4)をスムースに触媒することが明らかとなった。  第3章では([(CoCP)3(μ3-S)2]2+のCO2還元触媒能について検討した。CO2雰囲気下、-1.50Vで定電位電解により調製した(〔(CoCp)3(μ3‐S)2]-はシュウ酸生成反応(式4)触媒能をもたず電解中に分解してしまう。それに対して、-0.70Vで定電位電解により調製した(〔(CoCp)3(μ3‐S)2]0は電流効率80%でシュウ酸生成反応をスムースに触媒した。水中(pH=0,25度)でのH2C2O4の標準酸化還元電位が-0.475V(vs.NHE)であることを考慮すると、-0.70Vで調製した(〔(CoCp)3(μ3-S)2]0によりシュウ酸が生成する反応系の開発は熱力学的にも注目に値する。  第4章では、シュウ酸生成の中間体として、[(RhCp*)3(μ3-S)2]0とCO2のl:2付加体の形成を直接的に観測したことについて述べる。CO2飽和CD3CN中、[(RhCp*)3(μ3‐S)2](BF4)2の-1.50Vでの定電位電解しながら赤外吸収スペクトルを測定すると1680、1633、及び1605cm-1の3つの新たな吸収帯の出現が観測された。OVにおける電解溶液の再酸化操作で、1680と1605cm-1の2つの吸収帯は完全に消滅したが、シュウ酸のv(CO2)に帰属される1633cm-1の吸収帯は減少せず残った。活性種の赤外吸収スペクトルにおける2つのv(CO2)吸収帯の出現は、シュウ酸が[(RhCp+)3(μ3-S)2]0上において活性化された2分子のCO2のカッブリング反応により生成した事を示している。  第5章ではM3S2クラスターを用いた電気化学的CO2還元におけるシュウ酸生成反応の活性種と反応機構について述べる。[(IrCp*)3(μ3‐S)2(CH2CN)]+の組成をもつ赤色の結晶が、-1.50Vでの[(IrCp*)3(μ3-S)]2+を触媒とする電気化学的CO二還元におけるシュウ酸生成の活性種として単離できた。  [(IrCp*)3(μ3‐S)2(CH2CN)]+の組成をもつこの活性種は、x線構造解析の結果、溶媒のCH3CNに起因すると思われる直線状のCH2CNが末端の炭素で[(IrCp*)3(μ3-S)2]+のCp*配位子の一つに結合し、その結果生じたCp*CH2CN配位子はη4モードでイリジウムに配位している、E(IrCp*)2(IrCp*CH2CN)(μ3-S)2]+であることが判明した。[(IrCp*)2(IrCp*CH2CN)(μ3-S)2]2おいては、一つのη5-Cp+がη4-Cp*CH2CNに置き変わったことにより部分的にIr-SやIr‐Ir結合の延びがみられた。このようなIrの配位不飽和性の増加と骨格の歪みによる空間の増大で、[(IrCp*)2(IrCp*CH2CN)(μ3‐S)2]+では[Ir、Ir]、あるいは[Ir、S]への2分子のCO2の求電子的な攻撃が可能と考えられる。したがって、[(IrCp*)3(μ3-S)2]2+を触媒とする-1.50Vでの電気化学的CO2還元反応では[(IrCp*)2(IrCp*CH2CN)(μ3-S)2]+がシュウ酸生成の活性種であると推測される。  本研究では、M3S2骨格をもつ一連の金属硫黄クラスター(M=Ir,Co,Rh)が電気化学的CO2還元反応においてCO2の還元的不均化反応(式3)を伴わず選択的シュウ酸生成(式4)  触媒として有効であり、均一系反応におけるCO2から-OOCCOO-へのスムースな変換は金属一硫黄クラスター上の[M、M]あるいは[M、S]で捕足された2分子のCO2のカップリング反応によって可能であることを初めて明らかにした。, application/pdf, 総研大甲第152号}, title = {金属硫黄クラスターによる二酸化炭素の活性化}, year = {} }