@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000157, author = {畠中, 邦夫 and ハタナカ, クニオ and HATANAKA, Kunio}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {ラジカルは不対電子を一つ以上持つ分子あるいは原子の総称である。開殻電子構造を持つラジカルは非常に反応性に富み、多くの化学反応の中間体として非常に大きな位置を占める化学種である。その一方で、純物質として取り扱うことのできる、すなわち結晶として安定に単離される安定ラジカルの化学が存在する。  近年、この安定ラジカルに注目が向けられている。有機固体化学は様々な興味深い物性を秘めており、その電子物性に関する研究がさかんに行われている。有機強磁性体の実現に向けた研究もその一端であり、安定ラジカルはその構成成分の一例として注目されている。  有機磁性体に関する研究の進展には、新しい安定ラジカルの開発が待たれていると考える。また非常に反応性の高い有機ラジカルを安定に単離しようという試みは、このような固体物性への応用という意味だけではなく、構造有機化学的にも非常にチャレンジングで興味深い研究テーマであると考える。以上のような観点から、本研究者は強磁性体への応用のような固体物性を念頭に置き、中性ラジカル結晶による強磁性発現の設計指針を活用し、新しい安定中性ラジカルの分子設計、合成、単離、検出をめざした基礎研究を行った。  第1章 分子磁性の研究を指向した新規安定中性ラジカルの分子設計指針  有機ラジカルの安定性について、既知の安定ラジカルを例に挙げながら考察した。さらに有機ラジカルの固体物性、特に分子磁性に注目し、分子間に強磁性的な相互作用を有するラジカルを例に挙げながらその強磁性的相互作用の発現の機構についてまとめた。これらをもとに分子間に強磁性的相互作用を有することが期待されるような安定ラジカルの分子設計指針について考察した。本研究者はフェナレニルラジカル1とガルビノキシルラジカル2に着目し、これらのラジカルの電子的特性を合わせ持つ新規中性ラジカル3-および6-オキソフェナレノキシルラジカル3、4を分子設計した。  第2章 3-オキソフェナレノキシルラジカル  新規に分子設計した3-オキソフェナレノキシルラジカル3の電子構造の特色を分子軌道法に基づくスピン密度計算の結果をもとに考察した。この結果を活用しスピン密度の高くなる2位にアリール基を導入したラジカル5を設計し、対応するヒドロキシ体、3-ヒドロキシフェナレノン誘導体6の酸化反応からその発生、単離を検討した。いずれの場合も中間体としてラジカル5の存在を強く示唆するような生成物7、8、9が単離された。  2-フェニルー3-オキソフェナレノキシルラジカル5a、bはESRチューブ中での2-フェニル-3-ヒドロキシフェナレノン誘導体6aの酸化反応、二量体7a、bの熱分解反応により観測された。ESRスペクトルの測定結果や分子軌道計算の結果から、ラジカル5a、bはベンジルラジカル型の電子構造を持つこと、フェナレニルラジカル1とは逆のスピン密度、SOMOの係数の分布を持つことが明らかになった。また類似構造を持つ2-フェニル-1、3-インダンジオニルラジカル10との比較からラジカル5aの分子構造に関する検討を試みた。  さらにヒドロキシ体6aのア二オン種11の電解ESRスペクトル法により目的とするラジカル5aの発生を検討したが、相当するジアニオンラジカル12が観測されるという結果を得た。ジアニオンラジカル12は、フエナルニルラジカル1と同様の電子構造を持つラジカルであることがESRスペクトルの測定結果や分子軌道計算の結果から明らかになった。  第3章 6-オキソフエナレノキシルラジカル  6-オキソフエナレノキシルラジカル4は分子磁性への応用だけではなく、フェナレニルラジカル1とは逆のスピン密度分布を持つラジカル3の兵役拡張系として有機化学的にも非常に興味の持たれるラジカルである。まずラジカル4の電子構造の特色を分子軌道法に基づくスピン密度計算の結果をもとに考察した。この結果を活用しスピン密度の高くなる2、5位にメチル基を導入したラジカル13bを設計し、対応する6-ヒドロキシフェナレノン誘導体14bの酸化反応からその発生、単離を検討した。中間体としてラジカル13bの存在を強く示唆するような生成物15、16が単離された。  6-オキソフエナレノキシルラジカル13bはESRチューブ中での6-ヒドロキシフエナレノン誘導体14bの酸化反応により観測された。ESRスベクトルの測定結果や分子軌道計算の結果から、ラジカル13bはフェナレニノレラジカル1とは逆のスピン密度、SOMOの係数の分布を持つことが明らかになった。また共役系の拡張によりラジカル3(5)に比べ安定であることを示唆する結果を得た。この結果を活用し、ラジカル4の単離をめざした6-ヒドロキシフエナレノン誘導体を設計し、その合成を計画している。  さらにヒドロキシ体14aのアニオン種17の電解ESRスペクトル法により目的とするラジカル13aの発生を検討したが、相当するジアニオンラジカル18が観測されるという結果を得た。ジアニオンラジカル18は、フェナレニルラジカル1と同様の電子構造を持つラジカルであることがESRスペクトルの測定結果や分子軌道計算の結果から明らかになった。  本研究者はフェナレニルラジカル1と4-ニトロフェニル-α-ニトロニルニトロキシド19に着目し、これらのラジカルの電子的特性を合わせ持つ新規中性ラジカル1、3-および1、6-ジアザフェナレノキシルオキシドラジカル20、21を分子設計した。これらのラジカル20、21電子構造の特色を分子軌道法に基づくスピン密度計算の結果をもとに考察した。ラジカル20、21はフェナレニルラジカル1と同様の電子構造を持ち熱力学的に大きな安定化の効果が期待されること、大きなスピン分極が生じており有機強磁性体の実現に非常に有利な点を持つラジカルであることが明らかになった。, application/pdf, 総研大甲第177号}, title = {フェナレニル構造を基盤とする新規安定中性ラジカルの開発}, year = {} }