@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000158, author = {松本, 正和 and マツモト, マサカズ and MATSUMOTO, Masakazu}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {水素結合による3次元ネットワーク構造は、水の性質に大きな役割を果している。水溶液中での化学反応において重要と考えられる、数10ps以下の短時間領域で、水は、水素結合によって強くコントロールされ、間欠的構造変化、集団運動といった興味深い運動機式を示す。このような運動がどのような物理的メカニズムで起きているのかを探るのが現在の研究の中心課題の一つになっている。  本研究では、水の運動と水素結合ネットワークの変化の関連に注目し、水の構造、集団運動と種々のゆらぎについて、ネットワークという視点から再吟味した。さらに、主に過冷却下でのネットワークの組み替えが如何に起こっているが、その本質を抽出するとともに、ネットワーク欠陥を定義して、集団運動が欠陥の運動で単純に説明できることを示した。  水の水素結合モデルとしてStanleyらは、水素結合ネットワークをランダムパーコレーション模型で表現した。かれらは格子上に水素結合をランダムに配置しても各氷分子の水素結合数の間に相関があり、4本の結合をもつ分子(Patch)の分布は局在しクラスタを形成することを指摘した。さらにPatchの領域とそれ以外の領域で局所的な物性の違いが存在すると仮定し、様々な水の物性を説明した。しかし、実際の水の中の水素結合はランダムに分布しておらず、隣接する水素結合の組み替えグイナミクスは互いに強く相関しており、短時間の水素結合の組み替えはランダムではなく時間的空間的に周囲の結合と協調しながら変化することが本研究でねがった。さらに、短時間領域の分子運動では、水素結合数よりも隣接分子数の多寡が重要であることがねがった。  以下に、本研究の概要を示す。  様々なトポロジー指標や解析手法を用いて、水の集団運動を分析し、その時間的空間的特徴を抽出した。Lq型のゆらぎは、これまで指摘されているポテンシャルエネルギーだけでなく、局所密度など数多くの物理量に普遍的に存在していることが分かった。  さらに、ネットワークの最小構成単位である、結合および節点(=氷分子)を視点として、ネットワーク再構成運動を解析し、様々なトポロジー指標(水素結合数、ヴォロノイ多面体体積など)の時間変化を追跡した。これまでの格子模型では、水素結合の方向性は無視されることが多かったが、本研究では、水の水素結合ネットワークは、水素結合の供与側と受容側を区別した有向グラフで表現されることが重要であることが示された。すなわち各節点の水素結合数は時間とともに変化するが、各節点の入結合数と出結合数はほぼ独立に変化しており、それが水素結合の変化のグイナミクスを大きく規制していることが示された。各節点の入結合、出結合各々の時間変化は強い相関をもち、常に約2本に保つ力が働いていて、平均的には各節点に約4本の水素結合が接続している。  この観測に基づいて、ネットワーク再構成グイナミクスを再考察した。入結合と出結合が互いに相関しないという事実から、各節点を入結合側と出結合側の節点(半節点)に分離することによって、入結合数、出結台数各々約2本の有向グラフは、隣接数約2の無向グラフに単純化することができる。各半節点では、結合数2が好まれる。そこで、結合数が2でない半節点を欠陥と定義する。例えば結合数3の欠陥は、結合を1本へらすことによって、欠陥でなくなるが、それにともなって隣接する半節点が欠陥になってしまう。このように、欠陥は他の欠陥と衝突しない限り消滅することができない。また、欠陥の運動はネットワークのトポロジーによって様々な制約をうけることがわかる。こうして定義した欠陥の概念を、分子動力学計算の結果に応用し水素結合のグイナミクスを解析し直した。両端の半節点の結合数と水素結合の,寿命の相関をとると、両端が欠陥の場合、片端が欠陥の場合、両端とも欠陥でない場合で明確に水素結合の寿命が分類されることがわかった。 環境によって水素結合の寿命は多様化するために、平均的にみた水素結合の寿命が短時間側でべき型となることが示された。  さらに、これらの観測を元に、格子模型を作り、ネットワーク再構成グイナミクスを再現することを試みた。単純な規則に基づき、水素結合の寿命の特徴、距離行列のパターン、エネルギー揺らぎといった、短時間での水の運動の特徴をうまく再現することができ、この格子模型では特にネットワークの不均質性を導入していないにもかかわらず、その上でおこるネットワーク組み替えが不均一になりうろことを示した。  本論文の末章では、本研究で導入した格子模型と、水以外の系で用いられている様々な格子模型との比較、水の特徴的な集団運動について考察し、また、水の集団運動やネットワーク再構成動力学を解析するために導入した様々なアルゴリズムについて調べた。  水溶液内の化学反応は、短時間の水の集団運動と結びついていると考えられ、溶質を含んだ系にうまく本モデルを拡張することができれば、この模型の応用範囲はさらに広くなるだろう。本研究で開発した有向グラフによる水素結合ネットワークの表現は、組み替え規則をすこし変更するだけで、水のなかのプロトン移動の模型化等にも応用でき、今後その方向にも研究を発展させていく予定である。, application/pdf, 総研大甲第178号}, title = {Topology and Dynamics of Hydrogen Bond Network in Liquid Water}, year = {} }