@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00001655, author = {山野井, 瞳 and ヤマノイ, ヒトミ and YAMANOI, Hitomi}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {本研究では、すばる望遠鏡のSuprime-Camを用いて、かみのけ座銀河団(z=0.023)の銀
河密度の異なる3領域について深い撮像観測を行い、銀河光度関数を求めた。限界等級は
B, R~26.0等であり、これまで探査できなかった非常に暗い矮小銀河を検出するのに十分
な深いデータが得られた。銀河光度関数は、B-band, R-bandともに-19<MB,R<-10ま
で求めることができ、広い等級範囲に渡って光度関数を求めることができた。銀河団の光
度関数を求める際、同じSuprime-Camで撮像されたSubaru Deep Fieldの画像を用いて
背景銀河の銀河計数を見積もり、これをかみのけ座銀河団で得られた銀河計数から統計的
に差し引いている。

以下に主な解析結果をまとめる。

● 銀河光度関数の暗い等級範囲の傾きは、dN/dL∝Lαで近似される。本研究で求められ
た、かみのけ座銀河団の中心領域での銀河光度関数は、-19<M<-10の等級範囲で
傾きα~-1.8であった。この値は、CDM理論から推測されるDMハローの質量関数
の傾きとほぼ一致する。しかし、かみのけ座銀河団の光度関数は単調増加ではなく、
銀河の等級範囲によって変化しており、M~-13より明るい銀河ではα~-1.5の傾き
を示すが、さらに暗い等級になると急激に立ち上がり、傾きはα<-2 (-13<M<-
10) になっていることがわかった。一方、フィールド環境で観測された光度関数は、よ
りフラット(α~-1.3)である。

● 銀河の特性と環境依存についてより詳しく議論するため、かみのけ座銀河団に属する
銀河の色等級関係をもとにして銀河を赤いものと青いものに分類し、それぞれの銀河
の光度関数を求めた。銀河団の中心領域も周辺領域も赤い銀河の割合が多いが、-11
<M<-10 の非常に暗くて青い銀河については、その割合が中心から外側になるにつ
れて、多くなっていることがわかった。これらの青い銀河は、銀河団の外から落ちて
くる星形成の活発な銀河からの寄与であると推測される。銀河団中心の赤い銀河は、
その構造がextendしているものとcompactなものと両方のpopulationがあるのに対
し、銀河団周辺ではextendしている銀河は少ない。Compact populationの中には、
球状星団も若干含まれていると予想されるが、その寄与は十分小さい。よってcompact
populationのほとんどはultra-compact dwarf galaxies (UCDs)であると示唆される。

● 銀河の光度関数の研究は他の銀河団でも行われているが、かみのけ座銀河団の光度関
数で見られるような、暗い等級での急激な立ち上がりが現れる結果は、他の銀河団す
べてに見られるものではなく、銀河団の光度関数は普遍的ではないことを示唆する。
光度関数の傾きは、銀河団中の銀河の速度分散、X線で観測した銀河団の光度・温度と
相関があることがわかった。ちなみに、X線の光度・温度の特性は、銀河団の質量に関
連している。従って、大質量の銀河団では、-15.0<M<-12.5の光度関数の傾きが
フラットになっているのに対し、小質量の銀河団では急になっていることがわかる。
一方、さらに暗い等級範囲(-12.5<M<-10.0)では、大質量銀河団の光度関数の傾き
は、小質量銀河団より急になっている。

光度関数の傾きが単調ではないこと、また環境によって光度関数の形が異なっていること
から、光度関数の暗い側は、CDM理論から推測される宇宙初期に生まれた原始矮小銀河
からの寄与だけでは説明できない。したがって、後に形成された矮小楕円銀河からの寄与
を考える必要がある。以下に銀河の明るさ別に推測される矮小銀河の起源を議論する。

● M=-12.5より明るい矮小銀河は、渦巻銀河のようなガスの豊富な銀河同士が合体す
る際にできた、tidal dwarf galaxiesであると推測される。銀河団のような高密度環境
は、銀河同士の衝突合体を多く経験しているため、これによってtidal dwarf galaxies
の数が増加したと考えられる。一方で、大質量の銀河団では、銀河団の強い重力や銀
河同士の接近衝突によりtidal dwarf galaxiesが壊されてしまうため、tidal dwarf
galaxiesの増加が抑制され、小質量銀河団に比べややフラットな光度関数の傾きが説
明できる。

● M=-12.5より暗い矮小銀河の増加には、宇宙初期に形成された原始矮小銀河のからの
寄与、tidal dwarf galaxiesと同じ時期に形成されたUCDsからの寄与、そしてtidal
dwarf galaxiesが壊された際に残ったtidal remnantsからの寄与が考えられる。特に
かみのけ座銀河団のような大質量銀河団で、かつNGC4839グループのような銀河の小
集団が銀河団の中心に降着している最中の銀河団では、潮汐作用が強く働くと予想さ
れるため、tidal dwarf galaxiesの破壊とそれに伴ってできるtidal remnantsの増加が
より顕著であると示唆される。かみのけ座銀河団の光度関数に見られるM>-13の
upturnは上記のシナリオによって説明できる。

銀河団の光度関数の暗い側は、起源の異なる複数の種族の矮小銀河から成り立っており、
その形成は、銀河団同士、または銀河同士の衝突合体の過程と密接に結びついていると考
えられる。, application/pdf, 総研大甲第1317号}, title = {Photometric Study of Galaxy Luminosity Function in the Coma Cluster}, year = {} }