@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000177, author = {木村, 一彦 and キムラ, カズヒコ and KIMURA, Kazuhiko}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {自由電子レーザー(Free Electron Laser)は利得媒質を必要とせず、原理的に発振波長域に制限がないので次世代の新型光源としてその応用も含めて世界的に注目されている。現在、線形加速器からの電子ビームを用いた長波長域のFELは実用化の段階に来ているが、短波長領域で必要とされる高質でかつ〓エネルギーの電子ビームが得られる電子ストレージリングを用いた自由電子レーザー(Storage Ring Free Electron Laer)は世界的にみてもわずか数例が発振しているのみであり、その基礎過程はほとんど明らかにされていないのが現状である。  SRFELは広大な連続スペクトルをもつシンクロトロン放射光が間近にあることが最大の特徴であり、SRFELをこの放射光と組み合わせたポンプ・ブローブ実験などに応用していくにはレーザー波長の短波長化が不可欠である。そこで、本研究は分子科学研究所の電子ストレージリングUVSORを用いて、SRFELの動特性を明らかにするとともに、SRFELを短波長化する上で重要な要素である挿入光源の高度化と光共振器に使われる誘電体多層膜ミラーの低損失化を目的とした。  SRFELの自然発振ではストレージリングを周回する電子パンチと光共振器中を往復するレーザーパルス(ミクロパルスと呼ばれる)との同期状態に応じて複雑な時間構造が現れる。UVSOR-FELではこれらが同期した場合にミクロパルスの光強度がミリ秒オーダーで周期的に変化するマクロパルス構造が観測され、主加速周波数を変えて同期性をわずかにくずすとミクロパルス光強度がほぼ一定となる連続的発振が得られる。電子パンチ中におけるミクロパルスの増幅過程とマクロパルス構造との関連性を2軸掃引ストリークカメラを用いて調べた。これにより、最良同期条件下で現れる周期的マクロパルス発振では、加熱によるパンチ長の周期的な変化を伴ってレーザー光が電子パンチのほぼ頂上付近で増幅・減衰を繰り返しており、加速周波数を微妙にずらすとミクロパルスが電子パンチの頂上付近から裾の方に向かってドリフトしながら増幅され、マクロパルスの時間幅が長くなることが示された。自然発振に比べて大きな尖頭出力が取り出せる利得スイッチ発振ではFEL発振によるパンチ長の変化を詳細に調べた。マクロパルスの時間変化から計算された利得とパンチ長の時間変化から計算された利得が一致することを示し、SRFELにおける飽和のメカニズムを実験的に明らかにした。  2軸掃引ストリーク像の解析から電子パンチとレーザーパルスが同期していると見られていた状態には、共振器長<13.3m>の変化に換算してレーザー波長程度の同期変動があることがわかった。このわずかな変動がSRFELのマクロパルス構造に与える影響を計算機シミュレーションにより調べた。同期のずれが全くない理想的な状況では、電子パンチの加熱と放射減衰が最終的に釣り合って定常発振が得られるが、UVSOR-FELの場合には振動等の外乱によるものと想像される微妙な同期のずれにより最良同期条件下で周期的パルス発振となることが分かった。  3つの電子エネルギーにおいて同一波長で発振させたレーザー光の平均出力を測定し、レーザー出力の飽和状態を理論的に示したRenieri Limitと比較した。ビーム電流の高い領域ではRenieri Limitに達していなかったが、電子エネルギーを上げるほど大きな平均出力を取り出せることを確認した。  ファブリー・ペローエタロンと2軸掃引ストリークカメラの水平軸掃引機能を組み合わせることにより、SRFELのスペクトル分布を時間分解測定した。SRFELのスペクトル分布と時間分布の両方には内部構造があることを初めて示した。レーザー光の線幅とパルス幅はともにビーム電流の減衰とともに狭くなることを明らかにした。発振開始から飽和に至る時間関係が明確な利得スイッチ発振で得られた線幅とパルス幅の測定結果をGain Narrowingの観点から考察した。指数関数的な光の増幅において、利得分布のピーク付近における光強度は利得分布のすそで増幅される光強度より急激に成長する結果、線幅およびパルス幅は利得分布の幅よりも狭くなる。利得を相互作用回数で積分した値を6とするとGain Narrowingは理論的に√1/Gの形で進行する。線幅とパルス幅の測定値はGain Narrowingに基づく計算値と良い一致を示した。  UVSOR-FELの利得は非常に小さいので、紫外域でFEL発振を得るには阻反射率の誘電体多層膜ミラーを確保することが重要である。本論文では、UVSOR-FELの発振波長を270nmに短波長化することを目標にして紫外域誘電体多層膜ミラーの低損失化に検討を加えた。紫外域では1光子あたりのエネルギーが〓屈折率材科のバンドギャップに近づいて吸収が増加する問題が避けられず、多層膜の表面粗さや不純物に対して特別の配慮が必要である。本研究では蒸着方法による薄膜の吸収量の違いに着目した。イオンビームスパッタリング(IBS)と電子ビーム蒸着(EBE)で成膜された多層膜ミラーの反射率を比較し、EBEに対するIBSの優位性を明確に示した。アンジュレーター光照射による反射率の劣化を補うために、電子エネルギーを通常の500MeVから430MeVに下げることで利得を増大させ、波長270nmにおいてFEL発振させることに成功した。 現状のプラナー型光クライストロン(POK)を用いた短波長FEL実験における大きな問題の一つは、自然放射光に含まれる高次阻調波の照射により誘電体多層膜ミラーの反射率が劣化することである。この問題を低減するために、軸上で高調波成分が放射されないヘリカル磁場を基本にしたヘリカル光クライストロン(HOK)の開発を行った。HOKではアンジュレーター放射の大部分が基本波に集中することから利得の増加も期待できる。そこで、より大きなレーザー出力を得るためにHOKを用いたFEL実験では電子エネルギーを通常の500MeVから600MeVに上げることを想定したが、HOKの利得はこれまで用いてきた同じ長さのPOKの2倍以上であることが計算によって示された。  採用したHOKの磁石配列は3列の磁石群が真空チェンバーを挟むように上下に配置されたもので、中央の磁石列は垂直磁場を発生し、その両脇の磁石列は水平磁場を発生する構成になっている。磁石列の位相を変えることにより任意の偏光状態をもつ放射光の発生が可能である。ホール素子で測定されたHOK磁場分布は計算値と良く一致した。  HOKの挿入によるストレージリングのラティスの歪みを小さくするために、直線部における、水平方向のベータ関数を小さくし、ビームサイズの増大を防いだ。このHOKは垂直方向には正の収束力、水平方向には負の収束力をもっており、測定されたベータトロン振動数の変移は磁場分布から計算される値と一致した。また、HOKのギャップを変えても閉軌道のずれが見られないビーム軌道を探すことでHOKの磁場中心を電子ビームが通過するようにし、Modulation Factorの測定値はストレージリングのエネルギー広がりから計算される値と一致することを確認した。HOKでは大きな利得が得られることから、可視域のFEL発振では伸長したパンチ長にして振動等による外乱の影響を相対的に軽減した結果、最良同期条件下では連続的発振が得られるようになった。観測されたミラー反射率の劣化速度はPOKの場合の約50分の1以下であった。また、IBSで成膜されたミラーを用い、FELとしては世界最短波長にあたる2390mでの発振を成功させ、SPFELにおけるHOKの有用性を実験的に明らかにした。, application/pdf, 総研大甲第252号}, title = {電子ストレージリングを用いた可視及び紫外域自由電子レーザーの研究}, year = {} }