{"created":"2023-06-20T13:20:10.559009+00:00","id":181,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"a1ac1a66-e3df-4861-8e87-3a6df65d9eda"},"_deposit":{"created_by":1,"id":"181","owners":[1],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"181"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:ir.soken.ac.jp:00000181","sets":["2:427:9"]},"author_link":["7732","7731","7733"],"item_1_creator_2":{"attribute_name":"著者名","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"平尾, 強司"}],"nameIdentifiers":[{}]}]},"item_1_creator_3":{"attribute_name":"フリガナ","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"ヒラオ, ツヨシ"}],"nameIdentifiers":[{}]}]},"item_1_date_granted_11":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"1997-03-24"}]},"item_1_degree_grantor_5":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"総合研究大学院大学"}]}]},"item_1_degree_name_6":{"attribute_name":"学位名","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreename":"博士(理学)"}]},"item_1_description_12":{"attribute_name":"要旨","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"1. 序論\n リンは、窒素と同族の元素であるが、窒素よりもはるかに多くの多型化合物を与える。例えばリンのオキソ酸としてはリン酸(H3PO4)の他にも、HPO2、HPO3、H3PO2、H3PO3、H4P2O5、H4P2O7など多数の化合物が知られている。ホスフィン(PH3)が燃焼してリン酸やP4O10などを生成する反応過程についても、PH、PH2、PO、PO2、HPOなど多数の反応中間体を経ることが知られていて、化学反応論のみならず分光学、分子構造論の分野でも注目されてきた。実際、PHなど5種類の反応中間体はその気相における存在が各種高分解能分光により確認され、分光の対象となってきた。しかしながら、ホスフィンの酸化反応過程は非常に複雑であり、反応中間体として考えられるH3PO、HPO2などの気相における存在が分光学的に確立されていないものも多い。\n 気相反応の反応中間体の存在を直接調べる方法の一つにマイクロ波分光法がある。マイクロ波分光法は、主として分子の回転遷移を対象としており、他の分光法に比べ検出感度や周波数分解能が非常に高い。通常のミリ波、サブミリ波領域における感度は検出可能最小密度として10 7個/cm3、濃度では数10-数ppbに達している。この感度は気相反応中に生成する寿命の短い反応中間体の検出に適している。また、反応中間体は化学結合が満たされていないもの(フリーラジカル)が多い。フリーラジカルは不対電子をもつので、その電子の軌道角運動量やスピン角運動量が分子の回転角運動量や核スピン角運動量と相互作用し、回転スペクトルに微細、超微細構造を与える。それらの相互作用はスペクトルに数100-数MHz程度の分裂を与えるが、この大きさはマイクロ波分光法の通常の分解能(数100kHz)で十分に分解可能である。ここで得られる相互作用定数は、電子励起状態との相互作用の程度あるいは不対電子の存在密度といった広い意味での分子構造についての知見を与えるものであり、分光学、分子構造論として意味が大きい。\n 本研究では、ホスフインの酸化反応中間体と考えられていながらその気相における存在が報告されていないジヒドロフォスフォリルラジカル(H2PO)の純回転スペクトルの検出に初めて成功した。その複雑なスペクトルの解析結果よりH2POラジカルの分子構造を精度良く決定し、このラジカルの分子構造論的特〆を解明した。また、既知の含リンラジカルPH2の重水素置換体PD2の純回転スペクトルを測定・解析し、同様の検討を行った。\n\n2.H2POのマイクロ波分光と分子構造\n H2POラジカルはホスフィンの燃焼反応過程での基本的な反応中間体の一つである。H2POについての実験報告は、質量分析法によるものと赤外マトリックス分光法による2例のみであり、気相分子についての分光学的報告はない。一方、H2POの類似分子であるH2NOは近年マイクロ波分光の対象になり、C2v,対称性を持つ平面分子であると結論された。しかも、NH2の反転運動による疑平面分子である可能性も指摘されている。このような分子構造論的な興味から、H2POは多くの量子化学計算の対象になってきた。特に注目すべき点は、この分子のPO結合の長さや不対電子の電子密度などが計算のレベルにより大きく変化し、全く異なる二つの安定構造が提案されていることである\n 本研究では、H2POが自由空間型セル中でPH3とCO2の混合ガスの直流グロー放電により効率的に生成することを見出し、そのミリ波・サブミリ波領域でのa型回転遷移の測定・帰属することができた。H2POの電子状態は、平面分子(C2v)ならば2B1、傘型分子(Cs)であれば2A'である。いずれの場合も、一つの回転レベルが微細相互作用により二つに分裂し、それぞれがリンの核スピンの超微細相互作用により二重項となり、この二重項のそれぞれがさらに水素の合成核スピンにより分裂する。分子が平面構造の場合回転準位の対称性により一重項または三重項に分裂し、傘型構造をとれば全ての回転準位において四重項に分裂する。今回観測されたスペクトルは回転準位の対称性にかかわらず4本に分裂していたので、H2POは傘型分子であると結論した。\n この結果は、後にC18O2を用いてH2P18Oのスペクトルを測定し、決定した回転定数と親分子の回転定数より得られるH2POのro構造からも正しいことが示された。得られたro構造はr(PO)=1.4875(4)Å、r(PH)=1.4287(14)Å、