@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000185, author = {平田, 聡 and ヒラタ, ソウ and HIRATA, So}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {分子の構造決定や振動解析には,エネルギーの核座標に対する一次及び二次微分の値が必要である,現在,分子の計算においては,このような微分を正確かつ高速に評価する解析的な方法が開発され,実用に供されているが,一方,高分子を計算対象とする結晶軌道法においては,解析的微分法はほとんど全く開発されていない。出願者は,密度汎関数法及び二次摂動(MP2)法の各理論レベルの結晶軌道法における解析的一次微分,ハートリー・フォック(HF)法における解析的二次微分の表式を導き,プログラムの開発を行った。このプログラムを用いて,π電子共役・非共役炭化水素高分子(ポリエチレン・ポリアセチレン・ポリメチンイミン)及び一次元水素結合高分子(フッ化水素ポリマー)の構造決定や振動解析を行った。  第二章では,局所・非局所及びハイブリッド交換相関汎関数を利用することのできる密度汎関数結晶軌道プログラムを開発した。局所・非局所汎関数を用いた計算の場合に,計算時間を著しく短縮する方法として,電子密度の補助基底関数による展開を採用した。本プログラムをポリアセチレンの四種の幾何異性体に応用した。ポリアセチレンの結合交替座標に沿ったポテンシャル曲線を正しく算出するためには,厳密な交換積分を混合したハイブリッド汎関数を用いる必要があることを見出した。ハイブリッド汎関数であるB3LYP汎関数を用いることで,トランス - びシス - ポリアセチレンの構造定数・紫外光電子スペクトルを定量的に再現することができた。また,B3LYP汎関数は,ポリアセチレンの四種の幾何異性体の安定性の順序に関して,実験結果を再現した。  第三章では,密度汎関数結晶軌道法における解析的一次微分法の開発を行った。全エネルギーの並進周期に対する一次微分の表式中に二次元積分が現れることを見出した。この二次元積分はガウス定理によって三次元積分に変換することができることを証明し,Beckeのファジーセル法を用いて容易に評価できることを示した。B3LYPハイブリッド汎関数を用いて,トランス - 及びシス - ポリアセチレンそしてアンチ - 及びシン - ポリメチンイミンの構造定数・分子振動数を計算した。ポリアセチレンの計算振動数に関しては,電子相関の影響が大きい振動モードについても計算結果と実験結果の一致は良好であった。観測されているポリメチンイミンの構造・振動の帰属は未だ確立していないが,相対エネルギー及び計算振動数と実測振動数の比較から,この高分子がサンプル中でシン型をとっている可能性が強く示唆された。  第四章では,局所・非局所・ハイブリッド汎関数を用いて全トランス - ポリエチレンの振動解析を行った。ポリエチレンの構造定数・分子振動数は,用いる交換相関汎関数にはあまり依存しないことがわかった。6 - 31G*基底関数を用いた計算結果は,実測された構造定数・赤外ラマン活性モードの振動数と良好に一致した。局所汎関数を用いて計算したフォノン分散曲線・中性子非弾性散乱スペクトルは,実験結果を定量的に再現した。中性子非弾性散乱スペクトルの計算においては,デバイ - ワラー因子及びフォノンウィングの効果を考慮した。  フッ化水素結晶は,強い水素結合で結びついた一次元ジグザグ鎖の集まりからなり,鎖間の相互作用は比較的弱い。第五章では,HF法の他,非局所・ハイブリッド汎関数を用いて,ジグザグ型フッ化水素ポリマーの構造定数・分子振動数を計算した。十分大きな基底関数(6 - 311++G**)を用い,長距離クーロン相互作用の補正として,多極子展開法を導入した。HF法がフッ化水素直鎖クラスターの構造定数・分子振動数などの鎖長変化を過小評価することがわかった。一方,密度汎関数法は鎖長変化の大きさをやや過大評価する傾向があるものの,実験結果をほぼ良好に再現した。この結果は,電子相関が水素結合の協同性に重要な役割を果たすことを示している。計算振動数に基づき,フッ化水素結晶の振り子振動の帰属を明確にした.  第六章では,HF結晶軌道法における解析的二次微分法の開発を行った.HFエネルギーの二次微分を解析的に計算するためには,結晶軌道係数の核座標に対する微分を計算する必要がある。このような微分を算出するために,出願者は無限系に対するcoupled perturbed Hartree - Fock(CPHF)方程式を導いた.。この方程式に基づき,二電子積分の変換を行う従来のアルゴリズムと,このような変換を回避する無変換アルゴリズムの両方を用い,二つの独立なプログラムを作成した。いずれも,HFエネルギーの解析的一次微分を数値微分することによって力の定数を得る差分法に比べて,約二倍の計算効率の増加が得られ,HF結晶軌道法に基づく高分子の振動解析がより高速に実行できるようになった。無変換アルゴリズムは,従来のアルゴリズムと比較し,きわめて小さな記憶容量しか必要としないにもかかわらず,約1.3倍程度の計算時間で実行でき,実用上きわめて有効であることを確かめることができた。  二次の多体摂動論は「大きさについて無矛盾」な理論の中で密度汎関数法と並んで最も計算負荷が小さく,正確な電子相関エネルギーの約90%を再現するとされている。第七章では,結晶軌道法におけるMφ11er - Plesset分割に基づく二次摂動(MP2)エネルギーの解析的一次微分の表式を導き,プログラムを開発した。二電子積分及びその一次微分は,外部ディスクに保存する必要があるものの,二粒子密度行列を利用することによって,これらの積分の積分変換の回数を最小限に抑えるアルゴリズムを開発した。この方法をポリアセチレンの振動解析に応用し,MP2計算がHF計算における計算振動数と実測振動数の誤差を約70%減少させることを示した。, application/pdf, 総研大甲第346号}, title = {Development and application of analytical derivative methods in ab initio crystal orbital theory}, year = {} }