{"created":"2023-06-20T13:20:01.027093+00:00","id":20,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"c0ee5e9e-22c9-4a58-82f3-4b7c15bc8d06"},"_deposit":{"created_by":1,"id":"20","owners":[1],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"20"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:ir.soken.ac.jp:00000020","sets":["2:426:3"]},"author_link":["7387","7386","7388"],"item_1_creator_2":{"attribute_name":"著者名","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"吉江, 貴文"}],"nameIdentifiers":[{}]}]},"item_1_creator_3":{"attribute_name":"フリガナ","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"ヨシエ, 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人類学・歴史学・文学などの研究分野では、1990年代以降、異文化間表象の政治性と歴史性を植民地主義との関連から分析するアプローチが広く展開されてきた。とりわけ文学研究における言説分析は、植民地主義という状況が政治学や経済学でしばしば取り上げられてきたような直接的・暴力的支配とは異なる、異文化間の接触によって生じる表象の相互作用という領域において生成される仕組みを明らかにしたという点において、植民地主義をめぐる研究に新たな視点をもたらした。一方、人類学は文学研究の方法論を取り入れながらも、植民地主義という状況を「支配される側」の視点に基づいて描き出すことにより、被支配者の主体的対応の多様な形態を明らかにしてきた。しかしながらこうした従来の植民地主義研究では、「支配する側」の中心的言説の分析に重点をおくか、「支配される側」の「下からの経験」に重点をおいて分析するかという視点の取り方においてひとつの溝が存在していたといえる。本論文は、そうした問題点を踏まえた上で、植民地主義という状況が生成される具体的なプロセスをひとつの全体像として提示することを目的とするものである。とりわけ20世紀前半のボリビアにおける先住民教育を対象として、教育や学校という制度をめぐって先住民と非先住民の間に生じた複数の運動や実践を、ほぼ50年というスパンに渡って相互関連的に分析することにより、植民地主義的言説が生成されるプロセスを重層的に把握することを論文全体のねらいとしている。\n 1824年の共和国成立以後のボリビアにおいて、先住民が近代教育の対象として最初に語られるのは、国民統合政策を唱える自由主義者が台頭した19世紀後半のことである。当初西欧的価値の受容によってボリビアという国民国家の形成を図ろうとした支配者層の同化教育策において、先住民という文化的差異は非西欧的要素として消滅の対象にされていった。しかし20世紀初頭に行われた教育実験の失敗という経験を踏まえ、先住民教育の主流は、限定された意味での国民として先住民を社会の周縁に囲い込む人種分業論へと変容していく。こうして近代教育の導入をめぐって形成された西欧的まなざしは、ボリビア社会に受容される過程で複数の支配的言説を構成するようになり、教育される対象としての先住民という表象を生成していった。そして先住民をめぐる支配的言説を重層的に構成することにより、内なる植民地主義の生産装置として機能していったのである。\n ところがその後の先住民教育の展開は、支配者側の構想する近代化路線に沿うようには進展しなかった。その要因のひとつが1910年代から30年代にかけて「カシーケ」を名乗る先住民を主体に展開された教育運動の存在である。この運動はもともと、19世紀後半の近代化政策によって収奪された先住民共有地の返還を目的とした司法闘争に端を発する。土地所有の正当性をめぐる司法闘争のプロセスにおいて、カシーケたちの用いた戦略は、近代法に象徴される支配的言説を自らの解釈にひきつけて読み替え、慣習法的言説に接合したり組み合わせることによって抵抗の手段に変えるという方法、すなわち支配的言説の脱コンテクスト化であった。教育や学校という制度は、そうした戦略を技術的に習得する装置として重要視されていく。そのため、支配する側が同化の装置と位置付けた学校も、カシーケ運動をとおしてその意味や役割を組み替えられ脱コンテクスト化されることで、植民地主義を克服するための主体的な抵抗の装置へと変換されていったのである。\n 1930年代に展開された先住民学校建設運動は、このような先住民教育をめぐる二つの流れを受けて生まれた運動である。この運動は、先住民文化を国民文化の核として見出すことにより、西欧中心主義的な支配の枠組みを乗り越えようと考える非先住民教師を中心に展開された脱植民地主義の試みであった。1930年代初頭からボリビア各地に建設が進められた先住民学校では、先住民の共同体制度や伝統的権威制度などが教育システムに組み込まれることにより、植民地時代に失われた先住民の歴史的記憶を現代に蘇らせるというある種の社会実験が行われた。しかしながら一方において、支配的言説と慣習法的言説を接合する技術の習得や脱先住民化の装置としての役割を学校に期待するという先住民社会から内在的に発せられる声がこの運動において十分に掬い取られることはなかった。むしろ先住民学校は先住民の歴史や伝統文化を表象するオブジェとしてモニュメント化され、先住民文化の価値や正当性をめぐる物語も非先住民社会のなかで独占的に消費されていくことになる。そのため脱植民地主義を理念とした先住民学校建設運動の戦略は、先住民との対立や葛藤、矛盾を内部に胚胎させることになったのである。さらに1935年以降、当時の民族主義政権の後押しを受けて先住民学校の建設が国策化されることにより、運動そのものがボリビアの国民像をめぐる政治的議論の前線に巻きこまれる結果となる。とりわけ1920年代以降ラテンアメリカ社会に浸透しつつあったメスティソ文化論に同調する批判勢力とのあいだに激しい政治的対立を招くことにより、ボリビアの教育史上でも特異といえる社会実験は、実質的に10年という短期間の活動によって挫折を余儀なくされていったのである。\n 以上のように本論文では、20世紀前半のボリビアにおける先住民教育の歴史を植民地主義との関係という視点から捉えることにより、教育や学校という制度をめぐる言説や実践のなかで非先住民と先住民のあいだに非対称的な権力関係が構築されていく仕組みを具体的に検討してきた。本論文における考察を通してあらためて浮き彫りとなったのは、ボリビアのように複雑な民族構成をもつ国において、教育や学校という制度をめぐって議論することは、必然に民族間の権力関係をめぐる政治力学の問題に関わってこざるをえないという事実である。例えば、ボリビアにおいて1994年から進められている教育改革(PRE94)に関しても、すでに文化交差性を重視した多言語教育の具体的な進め方をめぐって、人類学者や言語学者、政策担当者らを巻き込んだ論争が現在進行形で繰り広げられている。本論文において展開したような、教育や学校という制度をめぐる言説の力学を具体的な社会的・文化的・政治的コンテクストとの関連のなかで読み解いていく研究は、そうした今日的課題と取り組む上での重要な手がかりとして位置付けられるであろう。","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_description_18":{"attribute_name":"フォーマット","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"application/pdf","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_description_7":{"attribute_name":"学位記番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"総研大甲第564号","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_select_14":{"attribute_name":"所蔵","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"有"}]},"item_1_select_8":{"attribute_name":"研究科","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"文化科学研究科"}]},"item_1_select_9":{"attribute_name":"専攻","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"01 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