@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000203, author = {鈴木, 和治 and スズキ, カズハル and SUZUKI, Kazuharu}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {本論文では、有機電気伝導体の構成成分であるアクセプター分子について考察を行った。特に、結晶内での原子接触を考慮し、硫黄や窒素を用いた修飾型アクセプターについて検討した。  有機電気伝導体はドナーおよびアクセプターの2つの成分によって構成される。ドナー成分の開発は、TMTSFやBEDT-TTFなど、超伝導体の構成分子が合成されることによって大きな発展を遂げた。これらドナー分子の特徴は、分子内に硫黄、セレン等のへテロ原子が数多く含まれ、分子間でのへテロ原子間接触が有効に利用されていることである。このへテロ原子間接触により伝導経路が増加し、金属状態が低温まで保たれる。さらに極低温まで金属状態が保たれた場合には超伝導相へと転移するものが現れる。  これに対しアクセプター成分の開発は充分ではない。有機アクセプターとして広く用いられているTCNQでは、分子内のπ電子系が水素原子やシアノ基で覆われているために、ドナーで見られるような原子間接触が現れにくい。このため、金属的な結晶が得られた場合でも一次元性が強く、低温では絶縁体に転移してしまう。低温まで金属状態を保つためには、アクセプターにもへテロ原子を導入し原子間接触によって伝導経路を増加させることが必要となる。  そこで、ヘテロ原子を含むアクセプターの開発を目的として研究を行った。これまでにもへテロ原子を導入したアクセプターがいくつか合成されているがいずれも電荷移動錯体、ラジカルア二オン塩などの結晶を与えにくく、結晶構造解析が行われた例は少ない。本研究では、比較的多くの単結晶試料の作製に成功し、結晶構造解析から結晶内に見られる様々な分子配列とへテロ原子間での原子接触を観測することができた。  はじめに分子の母体骨格としてTCNQを用いた。TCNQの炭素原子2つを硫黄原子で等電子的に置換し、さらに電子吸引性のへテロ環であるピラジンを縮環させた1を合成した。合成の際に反応副生成物として、1の二量体2を得ることができた。還元電位を測定した結果、1は、やや弱いアクセプターであることが明らかになった。つまり、キノイド環に硫黄原子を導入したことや、芳香環(ピラジン環)を縮環させたことによりキノイド構造が安定化したために、電子受容性が減少したものと考えられる。2は1に比べ、さらに弱いアクセプターである。しかし、拡張したπ電子系を持つために分子内クーロン反発が小さいという特徴を持つ。  1は中性状態で2種類の多形結晶を与えた。X線結晶構造解析を行った結果、一方の結晶内では1の硫黄原子とピラジン環の窒素原子との間で原子間接触が観測された。この原子間接触により1は、らせん状に連なる興味深い分子配列をとることが明らかになった。分子軌道計算により各原子上での実行電荷を計算したところ、硫黄原子は正電荷を帯び、窒素の周辺に位置する原子が負電荷を持つことがら、らせん状の分子配列の形成には、電荷間に働く静電引力が寄与しているものと考えられる。  Tetrathiafulvalene(TTF)と1から1:2、3:2の組成比を持つ2種類の電荷移動錯体を得ることができた。結晶構造解析の結果、これらは、いずれも交互積層型に準じた結晶構造をもつことが明らかになった。このため電気伝導度が低く半導体ではあるが、組成比が1:1ではないことから、典型的な交互積層型の結晶とは異なり、分子配列にはいくつかの特徴が見られた。  ビスキノイド型アクセプター2はモノキノイド型アクセプター1に比べπ電子系が拡張しているために分子内クーロン反発が小さいという特徴を持つ。しかし、電子受容性が弱いために電荷移動錯体、ラジカルア二オン塩の作成は困難であった。そこで強い電子受容性を持つビスキノイド型アクセプター3を合成した。3の骨格分子である、TCNDQは、中性状態では不安定であるが3のようにヘテロ環を縮環することにより安定分子として単離することが可能となった。アクセプター3は強い電子受容性を持つことから、各種ドナーと高導電性の電荷移動錯体、ラジカルア二オン塩を形成する。  中性状態での3のX線結晶構造解析を行った。その結果、隣接分子間に原子間接触が観測され、ヘテロ環部分が互いに接近しあった帯状の分子配列をとることが明らかになった。また、Et4N+、Me4P+を対イオンとするラジカルア二オン塩を得ることができた。これらはいずれも1:1の組成比を持つために半導体であった。しかし、X線結晶構造解析を行ったところ、ラジカル塩においても硫黄一窒素原子間に原子間接触が観測され、中性結晶と同様に帯状の分子配列が観測された。3は結晶内では中性、ア二オンいずれの状態においてもヘテロ原子間接触により帯状に連なる分子配列を示す傾向が強いことが明らかになった。分子軌道計算によって、HOMO、LUMOでの軌道係数分布を求めたところ、合成したアクセプターは、いずれもヘテロ原子上での軌道係数が小さいことが明らかになった。このため原子間接触が観測された3のラジカル塩においても原子接触を通しての電子移動は起こりにくいものと考えられる。ヘテロ原子間接触によって伝導経路の増力口を期待するのであれば、ヘテロ原子上でのHOMO、LUMO係数が大きな分子を用いるべきである。このような考えをもとに、アクセプター4を合成した。4は中性状態では4価の硫黄を含んでいる。電子を受け取ることにより2価硫黄が生成し、ア二オン状態が安定化されるためアクセプターとしての機能を持つ。4は電子受容性がやや弱いために電荷移動錯体、ラジカフレア二オン塩の作製には成功していない。しかし、中性状態での結晶構造解析を行ったところ、ヘテロ原子間に数多くの原子接触が観測された。4はLUMO係数が大きく、さらに原子間接触が現れやすい分子形状を持つことから、結晶中で多次元的な伝導経路を形成する可能性が高い。  以上の研究により、ビスキノイド型アクセプターが有機伝導体の構成分子として優れていることを明らかにした。さらにヘテロ原子を導入することによって、分子配列の制御や、ヘテロ原子間での電子移動が期待できるアクセプターが合成可能であることを明らかにした。, application/pdf, 総研大甲第486号}, title = {ヘテロ原子を含む有機アクセプター分子の合成}, year = {} }