@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000210, author = {野田, 英之 and ノダ, ヒデユキ and NODA, Hideyuki}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {シリコン(Si)表面と原子状水素との化学反応に関する研究は、表面科学の分野だけでなく、半導体プロセス技術においても重要なテーマであり、多大な興味が注がれている。赤外吸収分光法(IR)は、これまでSiHn吸着種の同定と水素吸着した表面構造の解析に貢献してきた。しかしながら、 H/Si(100)表面上のSiH2の振動ピークの帰属や、Si(111)-7x7表面の水素吸着サイトの同定、水素吸着構造に関しての議論では、未だ研究者の間で統一見解が得られておらず、未解決な問題が多い。 Siデバイス技術の分野では、水素はSi表面のパッシベーション効果を有することや、化学的気相堆積薄膜成長における反応前駆体を形成することなどが知られている。原子分解能での表面制御が望まれる近年では、水素による原子層レベルでのエッチング反応の研究もTPD(昇温脱離法)やSTM(走査型トンネル顕微鏡)により展開されている。エッチング過程を調べる方法として、 IR法は最も有力な手法であると思われるが、水素エッチング反応をIR法により丁寧に調べた例はない。 埋め込み金属層(BML)Si基板を用いた赤外反射吸収分光法(BML-IRRAS)は、表面SiHn伸縮振動の高感度、高分解能測定はさることながら、 Si結晶自身の吸収の影響を回避でき、従来のIR法では測定困難であった1000cm-1以下の指紋領域に現れるSiHnの変角振動や横揺れ振動の測定においても高感度、高分解能測定ができるという利点を持つ。また、光学系の構成が単純なことから、真空槽内での表面反応のその場観察に適した測定手法の一つといえる。本研究では、CoSi2のBML基板(Si/CoSi2/Si)を用いたBML-IRRAS法により、 H/ Si(100)とH/Si(111)表面の SiHn変角振動と伸縮振動の高感度・高分解能スペクトルの、良好なS/Nでのその場観察に初めて成功し、水素吸着構造、昇温水素脱離機構、水素エッチング初期段階の反応機構などを解明した。 1.Si(100)表面上SiH2の振動ピークの帰属とこれらの熱分解機構  初めに、超高真空中に存在する残留H2Oが、 Si(100)-2xl清浄表面に対して極度に敏感であり、予期せぬSi-OH伸縮(820cm-1)とSiH伸縮(2082cm-1)振動ピークを生み、H/Si(100)表面上のIRRASスペクトルを歪ませることを突き止めた。我々は、以下に述べる方法でこの問題を克服した。1100Kの熱ブラッシングによるSi表面の清浄化後、直ちに温度降下させ、650K付近で原子状重水素を5000L(lL=lxl0-6 Torr s)ドーズし、D/Si(100)-2xl表面を作成する。D/Si(100)‐2xl表面はパッシベーション効果を発揮し、水素ドーズを行う基板設定温度まで下げる時間過程において、残留H2Oの影響を防ぐことができる。この重水素終端表面に水素をドーズすることにより、重水素と水素は交換反応を起こし、残留H2Oの影響をほとんど受けずに、表面は水素で置換される。このようにして、変角振動領域を含む広い波数範囲でベースライン歪みのないスペクトルを得ることに成功した。  これによって、H/Si(100)-lx1、-3xl表面のIRRAS測定において、902と913cm-1を中心にスプリットしたSiH2はさみ振動モードが初めて観測きれた。この2つのピークは、それぞれ孤立したdihydride(ID)と隣接dihydride(AD)のはさみ振動モードに帰属された。また、IRRASスペクトルの温度依存性から、未だ統一見解が得られていないSiH2伸縮振動モードの帰属を行った。Chabalら[Phys.Rev.Lett.54(1985)1055]により報告されている弱い2090cm-1ピークはIDの対称伸縮振動、また、Dumasら[Surf.Sci. 269/270(1992)867]により報告されている2107cm-1ピークはADの対称伸縮振動に帰属された。さらに、ADがIDよりも熱的に不安定であることを発見し、AD、ID共に、隣り合った2つのdihydrideから水素原子を奪いあって、水素分子脱離が起こり、coupled monohydrideを生成するという以下のような昇温水素脱離機構を提案した。 AD:2(H-Si-H)→H-Si-Si-H+H2. ID :H-Si-Si-H H-Si-H H-Si-Si-H H-Si-H→H-Si-Si-H 2(H-Si-H) H-Si-Si-H →3(H-Si-Si-H)+H2. 2.水素によるSi表面のエッチング初期反応の観察  Si(100)と(111)表面への原子状水素による初期エッチング反応を理解する上で、 SiH2はさみ振動(IDsci:902cm-1、ADsci:913cm-1)とSiH3対称、非対称変角振動モード(Tsd:860cm-1、Tdd:940cm-1)の高分解能BML-IRRAS観察が、非常に重要であることを立証した。  Si(100)系では、300L程度の比較的低い水素ドーズ領域からエッチング反応が観測された。ADsciピークの面積強度がほぼ飽和すると同時にTsdピークが現れ、ドーズ量の増加に伴い、その面積強度が増加する。このことから、Si-Siバックボンドの破断に隣接dihydride構造が大きく寄与していることがわかった。また、これはドーズ量増加により、3つ以上並んだ隣接dihydride構造を形成するよりも、dihydrideのバックボンドをさらに一本破断してtrihydrideを形成する方がエネルギー的に優位な反応であることを意味している。  Si(111)系では、70L程度の水素ドーズにより、adatomの 2つのバックボンドは容易に切断され、Tsdピークが指し示す、[111]方向に立ったadatom trihydrideが形成されることがわかった。また、10000L以上の高水素ドーズにより、C3v回転軸が[111]方向に対して著しく傾いたtilted-trihydirdeの存在を示すTddピークが現れることから、rest-atom層の初期エッチング反応が明瞭に観測された。本研究から、Si-Siバックボンドの歪みがエッチング反応に大きく寄与すること がわかった。 3.H/Si(111)表面上SiHの吸着サイトの同定  Si(111)-7x7表面におけるサブモノレイヤーレベルの水素被覆において、2070と2074cm-1を中心にスプリットしたSiH伸縮振動ピークが明瞭に観測された。ここでは、2つのピークが示すmonohydrideの吸着サイトについて、過去のSTM結果を参照し、IRRASスペクトルの水素ドーズ量依存性を調べることで検討 を行った。  0.4モノレイヤー程度で水素被覆した7x7表面上の2つのSiH伸縮振動ピーク(2070と2074cm-1)の各面積強度と、高温下での高水素ドーズにより得られたH/Si(111)-lxl表面上の2080cm-1ピークの面積強度との比較から、存在しうる吸着サイト数を見積もり、我々は低波数側の2070cm-1ピークを adatom-monohydrideに、2074cm-1ピークをrest-atom-monohydrideに起因するSiH伸縮振動モードに帰属した。, application/pdf, 総研大甲第511号}, title = {埋め込み金属層基板 -赤外反射吸収分光法によるシリコン 表面水素化物の構造と化学反応性に関する研究}, year = {} }