@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00002167, author = {諏訪部, 貴嗣 and スワベ, タカシ and SUWABE, Takashi}, month = {2016-02-17}, note = {論文内容の要旨  ファイナンスの研究領域の中でも、企業の投資や資金調達の意思決定に関する問題を扱 う分野はコーポレート・ファイナンスと呼ばれている。具体的には、企業の投資の意思決 定、資金調達の意思決定、株主還元策、M&A、企業価値・プロジェクト価値評価などが扱 われる。欧米のビジネススクールにおいてコーポレート・ファイナンスが必須となってい ることからも、企業内部の意思決定者がコーポレート・ファイナンスの成果を理解してい ることが重視されていることがわかる。しかし、企業の担当者が実際に意思決定を行う場 合には理論を熟知しているだけでは不十分である。理論と現実の資本市場の間に存在する ギャップを知った上で初めて、理論を実践に移すことができるはずである。その一方で、 コーポレート・ファイナンス分野は主に欧米の学界を中心に発展してきた経緯もあり、日 本の資本市場、企業慣習に即した実証研究は相対的に。ない量にとどまっている。そこで、 本論文では統計的な実証分析に基づいて、我が国の市場参加者が直面するであろうコーポ レート・ファイナンスの理論と現実の資本市場の間に存在するギャップを明らかにするこ とを目的とした。  本研究では、コーポレート・ファイナンスの分野の中でも、企業や不動産等のリスク資 産の価値評価に関する四つの問題を取り上げた。第1章では、資本コストの問題を取り上 げた。資本コストとは、投資家が企業に対して資金提供することに対して要求する見返り であり、企業にとっては資金を得る対価として支払うコストである。また、資本コストは 企業価値を評価する際の割引率として用いられるのみならず、企業の投資意思決定におい ては、プロジェクトが最低限達成なくてはならない収益率としても用いられる。特に、最 近の経済・資本市場のグローバル化によって、我が国企業に対して投資家が要求する収益 率(資本コスト)がどのように変化してきたのかを実証的に検証しておくことは重要であ る。現実の国際資本市場が十分グローバルな統合状態にあるといえないのならば、Grauer, Litzenberger and Stehle (1976)、Solnik (1974)、Sercu (1980)、Adler and Dumas (1983) 等に代表されるグローバルに統合化された資本市場において資産価格がどのように決定さ れるかを示した理論モデル(国際資産価格評価モデル)から導き出される答えと、実際に 投資家が期待する株式リターンの間には乖離が生じることになる。本章では、1980年代か ら2000年代までのグローバル株式個別銘柄データを用いて、グローバル化が株式の期待 リスクプレミアム(期待超過リターン)に与えた影響を実証的に示した。  第2章では、第1章の研究と関連して、近年の経済および資本市場のグローバル化によ って、株式のリスク特性がどのように変化してきたのかを実証的に検証した。グローバル 化される以前の株式市場では、株式のリスクを決定する最も大きな要因は、その企業がど の国の企業であるかということだった。しかし、事業がグローバル化し、投資家もグロー バルに企業を比較するようになったことによって、大企業を中心としたグローバル企業の リスクの決定要因としては、所属する国よりも、どの産業に属しているかということが重 要になってきていることが確認された。つまり、世界各国で自動車を販売しているトヨタ のような企業は、本国が日本であるということよりも、自動車メーカーであるということ が株式変動をよく説明するということである。株価の特性がそのように変わってきている 以上、投資家はグローバル企業を評価する際のアプローチをグローバル化以前とは変えて いく必要がある。評価される企業側もそれを踏まえた経営が必要になると考えられる。  第3章では、企業の配当政策が株主価値に与える影響について実証分析を行った。株主 価値を高めるためと称して、増配や自社株買いを通じた株主還元を行う企業が増加してい る。しかし、Modigiliani-Miller理論に従えば、株主還元を行ったからといって必ずしも 株主価値が高まるわけではない。一方で、配当政策と株主価値の関係に関するシグナリン グ理論、フリーキャッシュフロー理論は、それぞれ異なるメカニズムで情報の非対称性が 増配の株価上昇効果を生み出すことを説明している。第3章では、シグナリング理論、フ リーキャッシュフロー理論に関する実証分析を行い、企業の配当政策が株主価値に与える 影響を検証した。  第4章では、リアルオプション・アプローチを用いた不動産の価値評価に関する研究を 行った。株式や不動産などのリスク資産の価値評価を行う場合には、当該リスク資産が将 来生み出すキャッシュフローの期待値をリスクを考慮した割引率で現在価値に割り戻すデ ィスカウント・キャッシュフロー・モデル(DCFモデル)が一般的に用いられている。し かし、インプットである将来のキャッシュフローの期待値は不変のものではない。事業環 境の変化にともなって、採算がとれないと判断した事業については工場での生産を休止す る、反対に需要の高まりにあわせて生産設備を増強するなど、実際の企業経営は柔軟な意 思決定の下に行われている。そのような企業の柔軟な意思決定が持つ価値を評価モデルに 取り入れたモデルは、リアルオプション評価モデル(real options valuation、ROV)と呼 ばれている。本章では、商業用不動産を例にとり、経営者がテナントとの契約に関する選 択肢、ここではテナントの退出・契約継続の意思決定権とテナントの売上高に連動した賃 料契約、を持つことが生み出すリアルオプション価値の評価を試みた。  本論文の意義は、日本市場を対象にした実証研究やシミュレーション・アプローチを通 じて、乖離の程度、他市場との相違の程度を示したことにあると考える。資本コストの推 定や、配当政策などが自社の株価に与える影響の定量的な推定など、意思決定担当者にと って応用可能な範囲は広い。, 総研大甲第1381号}, title = {金融市場の構造変化が資産価格評価に与える影響に関する統計学的考察}, year = {} }