@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000222, author = {大橋, 雅卓 and オオハシ, マサタカ and OHASHI, Masataka}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {【序論】 蛋白質の機能改変及び人工蛋白質の創成は生物無機化学の重要なテーマの一つである.蛋白質は生体内で種々の特異的な機能を発現しており,これを自由かつ容易に制御できれば,新しい機能性材料や分子触媒として利用できる.これまでの金属蛋白質の機能改変は,酸素貯蔵蛋白質であるミオグロビン(Mb)を中心に展開されており,新規機能を賦与するためにヘム近傍アミノ酸の部位特異的変異,ヘムの修飾,蛋白質表面の化学修飾が行われてきた.しかしこれらの方法では,ヘムの触媒能を引き出すことはできても,大きな機能改変は困難である.そこで本論文では,蛋白質キャビテイーを制御可能な反応場と捉え,そこへ触媒機能を持つ非天然金属錯体を特定の部位に挿入する事で人工金属蛋白質の構築を目指した. 【第一部】 アポミオグロピンとシッフベース錯体の複合化による人工金属蛋白質の構築  シッフベース錯体をアポMb(apo-Mb)へ非共有結合的に挿入することでシッフベース錯体・apo-Mb複合体の構築を行った.さらに罰への部位特異的変異の導入やシッフベース配位子の構造の差異による複合体の反応速度,選択性,安定性の制御を目指した.(スキーム1)  具体的には,シッフベース錯体としてサロフェン錯体を用いた(図1).サロフェン錯体及びその誘導体は,比較的容易に合成可能で、中心金属を変えることで酸化,加水分解,水素化,C-C結合形成などの触媒として機能する.サロフェン錯体はヘムとは全く異なる骨格構造をとるが、ヘムと同程度の分子サイズであり,平面構造をとることからapo-Mbへ十分に挿入可能であると考えた.実際に,分光学的な測定により基質取り込み過程を検討することが可能な鉄(III)サロフェン錯体と、人工酸化酵素の構築のためにクロム(III)サロフェン錯体を用いて,それぞれapo-Mbとの複合体の形成を試みた.  さらに,複合体の機能制御を行うためにMbのデザインを行った.Insight II/Discover 3による複合体の構造計算から,71位のアラニンがサロフェン錯体に近接する事が示唆された.そこでサロフェン錯体・apo-Mb複合体の安定性を高めるために,71位のアラニンをグリシンで置換したA71GMbを構築した.さらに,渡辺らの報告をもとに,人工酸化酵素の構築を目指し,64位のヒスチジンをアスパラギン酸に置換することで基質の反応場を構築したH64D Mbを調製した. 【第一章】 鉄(III)シッフベース・apo-Mb複合体の構築とX線結晶構造解析  鉄(III)シッフベース錯体Fe2はapo-Mb及びapo-A71G Mbと複合体を形成し,どちらも結晶化に成功した.X線結晶構造解析の結果,Fe2・apo-Mbはキャビティー内部にFe2と考えられる電子密度が観測されたが,詳細な構造は決定できなかった.これはFe2がキャビティー内部で動いている,あるいはランダムな入り方をしているためであると考えられる.一方,Fe2・apo-Ala71Gly Mbは,当初予想したとおり,Fe2がキャビティー内部に存在しており,配位子の3,3’位のメチル基が107位イソロイシンを挟み込む様にして挿入されていた(図3).Fe2は水とHis93のイミダゾール基が配位した6配位構造をとり,結合距離はそれぞれ2.34Å,2.32Åであった.またHis64は軸配位した水と水素結合を形成していることが分かった.Fe2・apo-Mb及びFe2・apo-Ala71Gly Mbの構造解析の結果から,Ala71はMbキャビテイー内部でのシッフベース錯体の固定化に大きく寄与している事が示唆された. 【第二章】 金属錯体による複合体の機能制御  非共有結合的な相互作用を利用する複合化の利点は,中心金属や配位子を変えることで機能制御が行える点である.そこで,配位子土に置換基を導入した鉄(III)シッフベース錯体を用いて複合体を構築し,配位子の置換基が,鉄へのシアンイオンの結合過程に与える影響について検討した.その結果,各複合体のシアンイオンの結合速度は,Fe2・apo-Mb(202M-1 s-1)>Fe3・apo-Mb(7.3M-1 s-1)>Fe2・apo-Mb(2.2M-1 s-1)となり,配位子の置換基により100倍程の差が生じた.また複合体の熱的安定性はFe2・apo-Mb>Fe3・apo-Mb>Fe1・apo-Mbとなった.この差は,配位子の構造による金属錯体の挿入様式の違いに起因していると推定できる.つまりFe1はキャビティー内部での自由度が高く,Fe3は中心金属がキャビティ一人口付近に位置する為にシアン結合速度が速くなっており,逆にFe2は配位子の置換基によってキャビティーの深部にしっかりと固定化されているため,シアンイオンの結合速度は遅いが,熱的安定性が高くなっていると推測される(図4).この結果は配位子の構造による金属錯体の挿入様式の違いを利用して複合体の機能と熱的安定性の制御が行える事を示している. 【第三章】 クロム(III)シッフ塩基錯体挿入による酸化反応触媒のデザイン  彼の人工酵素構築法の利点は,様々な錯体を蛋白質に挿入し,触媒反応を水溶液中で制御できる点である.そこで有機溶媒中で酸化反応触媒として働くクロム(III)シッフベース錯体とapo-Mbとの複合体を作成し,人工酸化酵素の構築を目指した.はじめに,X線結晶構造解析により,クロム(III)シッフベース錯体がapo-Mbと複合体を形成する事を確認した(図5).Cr2・apo-Ala71Gly Mbとwild-type Mbの結晶構造を比較すると,クロム(III)シッフベース錯体は,ヘムに比べてキャビティー深部に固定されでいる事が分かった(図6).また鉄(III)シッフベース・apo-Mb複合体の熱安定性,シアンイオンの結合速度の結果をもとに,Cr3を活性中心としてapo-Mbと複合体を形成させることで,人工酸化酵素を構築した.この複合体を用いてチオアニソールの酸化反応を行った(図7).その結果,クロム(III)シッフベース錯体は水溶液中では不活性であるが,apo-Mbと複合化することにより水溶液中でチオアニソールの酸化反応を触媒した.さらに,クロム(III)シッフベース錯体近傍のアミノ酸残基に対して,基質との反応場の構築(64位ヒスチジンをアスパラギン酸)と複合体の安定化(71位アラニンをグリシン)を考慮して設計したミュータントを用いることで,不斉酸化反応触媒として機能させる事に成功した.これらの結果は,天然の酵素が用いている反応場を利用して非天然金属錯体の反応性を制御できることを示している. 【第二部】 有機金属蛋白質の構築  第一部で得た知見は,シッフベース錯体以外へも応用する事ができる.第二部では,より高活性で酸化反応以外の機能へ応用するために,他の有機金属錯体と蛋白質の複合化による有機金属蛋白質の構築を目指した.具体的には,蛋白質との複合化システムによって,有機金属のもつ触媒活性を水中で発現させ,さらに不斉選択性を賦与することを目指した.すでにESI-TOF MSによる複合体のスクリーニングから,種々の有機金属触媒がapo-Mbと特異的に複合体を形成することを明らかにした.現在,これらの有機金属蛋白質の構造や化学変換について検討中である.  以上,第一部及び第二部で示した蛋白質と非天然金属錯体との複合化方法を用いることによって,人工酵素の構築だけではなく,非天然分子の様々な機能を蛋白質との複合化システムによって制御できると考えられる., application/pdf, 総研大甲第660号}, title = {Construction of Artifical Metalloproteins: Noncovalent Insertion of Metal Complex Catalysts into Protein Cavities}, year = {} }