@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000226, author = {小林, 克彰 and コバヤシ, カツアキ and KOBAYASHI, Katsuaki}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {【序】生体中での高原子価金属オキソ錯体は、CytochromCP-450などの酸化反応を触媒する酵素の活性中心に存在する。酸化酵素の機能解明の観点から、人工系での高原子価金属オキソ錯体が詳細に研究されてきた。Meyerらはポリピリジルアクアルテニウム錯体を酸化することで高原子価ルテニウムオキソ錯体の合成に成功し、酸化反応についての研究を行っているが、錯体自身の酸化還元電位の制御に関しては研究報告例はない。小林君は酸化反応に有用な金属錯体触媒の開発を目指して、ルテニウムアクア錯体に酸化還元活性なジオキソレンを配位子として導入した錯体の合成を試みた。ルテニウムージオキソレン錯体は、ルテニウムのdπ軌道とジオキソレンのπ車軌道がエネルギー的に近いため、ルテニウムージオキソレン間で電荷分散が起こり(eq 1)、その結果容易に酸化還元電位を制御するこ     Ru(II)-セミキノン(SQ)  ⇔ Ru(III)-カテコラート(Cat) (eq 1) とができる。彼は、本研究において、アクアールテニウムージオキソレン錯体として、[Ru III(trpy)(Bu2SQ)(OH2)](CIO4)2(1)(trpy=2,2':6',2"-terpyridine, Bu2SQ=3,5-di-tert-buty1-1, 2-benzosemiquinone),[Ru III(trpy)(4ClSQ)(OH2)](CIO4)2(4ClSQ=4-chloro-1, 2-benzosemiquinone)(2),を合成し、酸塩基平衡に伴う錯体の電子状態の変化について検討を行った。 【実験及び結果】錯体1及び2の合成はそれぞれ[Ru II(trpy)(Bu2SQ)(OAc)](3),[Ru II(trpy)(4ClSQ)(OAc)](4)の酸加水分解によって合成した。錯体1(Figure 1)及び3についてはX線構造解析を行った。その結果、両者ともに同じ配位構造をしており、ジオキソレン配位子のC-O結合の結合長とXPSから前者はRu(III)-セミキノン(SQ)錯体、後者はRu(II)-セミキノン(SQ)錯体であることが解った。  次にアクア配位子の脱プロトンに伴った錯体の挙動について研究を行った。CH2Cl2中で、錯体1の電子スペクトルを測定した結果、塩基1当量までは、600nmの吸収帯が576nmへと移動してゆき、さらに1当量の塩基を加えると、576nmの吸収帯が減少し、新たに870nmの吸収帯の増大した。この2段階の変化は、それぞれ等吸収点を持ち、酸塩基に可逆なものであった。600nm付近の吸収帯はRu(III)-セミキノン、870nmの吸収帯はRu(II)-セミキノンの電荷移動吸収帯と帰属され、2段階目のプロトン解離においてヒドロキソ錯体がらオキソ錯体となった際にRu(III)-Bu2SQがRu(II)-Bu2SQへと還元されていると考えられる。電気化学的測定により、平衡電位は塩基が1当量と2当量の間でRu(III)-Bu2SQ/Ru(II)-Bu2SQの酸化還 式(略)                               元電位を越えてRu(III)-Bu2SQからRu(II)-Bu2SQへと変化する事が判明した。この結果は電子スペクトルの結果と良い一致を示した。共鳴ラマンスペクトルの結果もこの結果を支持したことから、eq 2に示すような[Ru II(Bu2SQ)(O.-)]種の生成が示唆される。同様な検討を錯体2でも行ったところ、この錯体では1段階目のプロトン解離の際にRu(III)-4ClSQがRu(III)-4CICatへと還元されていることが解った(eq 3)。  [Ru II(Bu2SQ)(O.-)]の生成を確認するため、スピントラップ剤であるDMPO(5, 5-dimethyl-1-pyrroline N-Oxide)を加え、CH2Cl2中、-80℃においてESRの測定を行った。その結果、2種類のシグナルが確認された(Figure 2)。g=2.02640線幅の広いシグナルはRu(II)-Bu2SQに由来し、g=2.0056の線幅の狭いシグナルはDMPOとのスピンアダクト体と帰属される。後者は12本からなる超微細構造を持つシグナルであり、コンピューターシミュレーションによりその超微細構造定数はそれぞれaNα=1.35,aH=0.66,and aHβ=0.15mTであることが分かった。同様の結果は錯体2でも得られ、スピンアダクトに由来する超微細構造定数はそれぞれ、aNα=1.30,aHβ=0.63,and aHγ=0.21mTと判明した。なお、このスピンアダクトの生成はESI-MSスペクトルによっても確認した。  また、[RuII(Bu2SQ)(O.-)]および[RuIII(4ClCat)(O.-)]種の電子状態を詳細に検討するため、極低温でのESRスペクトルの測定を行った。[RuII(Bu2SQ)(O.-)]ではg=2付近にほぼ等方的なシグナルを、[RuIII(4ClCat)(O.-)]では3軸異方性を持ったシグナルが出現した。 このことはeq 1の共鳴式でBu2SQを配位子とした錯体はRu(II)-SQに近く、4ClSQではRu(III)-Catに近い電子構造を持つことを示唆している。また、両者ともにg=4付近にセミキノンラジカルとオキシルラジカルとの間の強磁性相互作用を示すシグナルが観測でき、このシグナルの温度変化を追跡したところ、交換相互作用定数はそれぞれ、[RuII(Bu2SQ)(O.-)]では2J=36.0cm-1、[RuII(4ClSQ)(O.-)]では5.0cm-1であることが判明した。  最後に、[Ru(trpy)(Bu2SQ)(O.-)(5)を錯体1の強塩基性の水溶液中から結晶として単離することに成功し、X線構造解析の結果、Ru-O.-結合は単結合の性質を持つことが判明した。これは末端オキソ錯体において初めての例である。  以上のことから、Ru(III)セミキノンアクア錯体のアクア配位子のプロトン解離に伴って電子密度がより高いヒドロキソまたはオキソ配位子からルテニウムジオキソレンへと分子内電荷移動が起こり、アクア配位子由来の酸素上にラジカルが誘起されることが明らかとなった。, application/pdf, 総研大甲第664号}, title = {Synthesis and Characterization of Ruthenium Oxyl Radical Complexes}, year = {} }