@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000228, author = {加藤, 茂 and カトウ, シゲル and KATO, Shigeru}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {生体内では、タンパク質が三次構造を巧みに利用することにより反応制御を行っている。ヘムタンパク質・酵素も活性中心近傍のアミノ酸残基による反応制御によって、一電子酸化反応、水酸化反応、電子伝達、O2センサー、COセンサー等様々な機能発現を可能にしている。その中でもヘム酵素による酸化反応とその機構解明は、近年の環境問題から非常に注目されている研究分野の一つである。最近、酸素貯蔵タンパク質であるミオグロビン(Mb)の変異体が多くの酸化反応を触媒することが報告されている。例えば、ヘム鉄-遠位ヒスチジン間の距離がシトクロム c ペルオキシダーゼや西洋ワサビペルオキシダーゼの活性中心の構造に近くなるように設計されたF43H/H64L MbおよびL29H/H64L Mbは、過酸化水素を酸化剤として用いることでスルフィドやオレフィンの不斉酸化を触媒することが知られている。また、高難度な酸化反応を触媒する例として、F43W/H64L Mbでは、43位のPheをTrpに置換、固定することでTrpの芳香環の位置選択的酸化に成功している。このように、多くの酸化反応を触媒するMb変異体を用いて、ヘム酵素による酸化反応機構の解明が可能であると考えられる。 以上のことから、Mb変異体を用いてヘム酵素による酸化反応に重要な役割を果たしていると考えられている(1)一般酸塩基触媒の作用、(2)軸配位子に対する水素結合の存在、(3)基質の結合様式の3点に注目した研究を行った。具体的には、第二章ではヘム酵素の一般酸塩基触媒の作用を検討するために、特に一般酸塩基触媒を用い触媒反応を効率的に行なっていると考えられるカタラーゼの反応に注目し、カタラーゼおよびMb変異体を用い反応機構の解明を試みた。第三章では軸配位子に対する水素結合の影響を検討するために、Mbの軸配位子をTyrに置換し、軸配位子に水素結合を導入することでカタラーゼ反応における軸配位子への水素結合の役割を検討した。第四章では、Mb変異体が行なう酸化反応におけるエナンチオ選択性の違いが基質の結合様式によるものか、を検討するためMbによるチオアニソールの酸化反応の遷移状態モデルとしてメチルベンジルアミンを用い、速度論的解析を試みた。以後、各章に分けて記述する。 第二章 カタラーゼの反応サイクルの第二段階目の反応、すなわち過酸化水素を酸化的に分解し、酸素分子と水に変換する過程で、一般酸塩基触媒による過酸化水素からのプロトンの引き抜きが重要な役割を果たしていると考えられている。しかし、一般酸塩基触媒を持たないMb変異体毛力タラーゼ活性を示す。そこで、一般酸塩基触媒を持つF43H/H64L Mbや触媒を持たないH64X(X=A, S, D)Mb、さらにカタラーゼ自身も用い、活性中心環境の影響を調べるために2日でラベルされた過酸化水素を用い、速度論による反応素過程の解析を行った。その結果、一般酸塩基触媒を持つ変異体(F43H/H64L Mb)およびカタラーゼではkH/kDがそれぞれ2.1、4.0という小さな値を示し、一般酸塩基触媒を持たない変異体(H64X(X=A, S, D)Mb)ではkH/kDが10以上の大きな値で、後者は、温度依存性の実験からトンネル効果をによるものであることを示した。このことから、2種類の反応機構、すなわち、i)一般酸塩基触媒が存在する場合、Hisが塩基触媒として働き、最初に過酸化水素からプロトンを引き抜くことで小さな同位体効果を示すイオン的な反応機構と、ii)一般酸塩基触媒がない場合,酸化活性種であるcompound I(cpd I)による過酸化水素からの水素原子の引き抜きにより反応が始まるラジカル的な反応が存在する事を確認した。 第三章  カタラーゼは、ヘム鉄に配位したTyrの酸素と近傍のArgとの間で水素結合を形成していることがわかっているが、この水素結合とカタラーゼ活性の関係は不明である。そこで軸配位子への水素結合の影響を検討するために、Mbの軸配位子である93位HisをTyrに換え、Tyrのフエノレート酸素に対して水素結合を導入していない変異体(H64A/H93Y Mb)、水素結合を導入した体(H64A/L89Q/H93Y およびH64A/L89R/H93Y Mb)を作成し、Mb変異体と過酸化水素の反応による酸素発生、ABTSの酸化、およびMb変異体とmCPBAの反応によるスペクトル変化の測定から反応性を検討した。  その結果、過酸化水素との反応による酸素の生成では、水素結合を有しているH64A/L89Q/H93YおよびH64A/L89R/H93Y Mbは、水素結合を持たないH64A/H93Y Mbに比べ、3 - 4倍の酸素の生成能を示した。一方、酸化活性種であるcpd Iの生成速度を見積もるために、Mb変異体と過酸化水素の反応によるABTSの酸化反応速度を求めたが、ほとんど差が見られなかった。また、mCPBAと変異体の反応では水素結合を導入した変異体ではスペクトルの変化が観測されたものの、水素結合を導入しなかったH64A/H93Y Mbではスペク トルの変化は全く見られなかった。このことから、Mb変異体と過酸化水素の反応の触媒サイクルにおいて、cpd Iと過酸化水素の反応および過酸化水素のヘム鉄への配位の過程で軸配位子に対する水素結合の効果が現われると結論した。 第四章  酸化反応におけるエナンチオ選択性は立体障害による基質の配向の制御によって達成されると考えられるが、反応サイクルのどの段階が制御されるのか不明であり、詳細な反応機構の解明は簡単ではない。そこで、Mb変異体(H64D/V68AおよびH64D/V68S Mb)と過酸化水素によるチオアニソールの酸化反応の遷移状態に近い構造を有するメチルベンジルアミンのMb変異体への配位体を用い、ヘム鉄に対するアミンの結合速度と解離速度の速度論的解析による検討を行なうことにした。  その結果、Mb変異体へのR-およびS-メチルベンジルアミンの結合速度にはほとんど差は見られなかったのに対し、解離速度に大きな差が見られた。スフレフィドの酸化ではR-スルフォキシドが選択的に生成する。一方、Mb変異体 - アミノ結合ではS-アミンがR-アミンよりも小さな解離速度定数を示すということから、Mb変異体と過酸化水素によるチオアニソールの酸化反応でも、遷移状態のFe-O-S+R(R')からFe-O結合の解裂速度はS-体がR-体よりも小さな値を示すと考えられる。すなわちR-スノレフオキシドの優先的生成はFe-O-S+R(R')のFe-O結合の解裂速度が、R-体の方がS-体に比して圧倒的に速いことに起因すると結論された。, application/pdf, 総研大甲第718号}, title = {ミオグロビン変異体によるヘム酵素の機能解明}, year = {} }