@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000229, author = {岡, 芳美 and オカ, ヨシミ and OKA, Yoshimi}, month = {2016-02-17}, note = {第1章では分子磁性体の背景及び本研究の目的について述べた。分子磁性体は分子がスピンを担うため、構造を適切に組み立てることによって磁性を設計、制御できる可能性を秘めている。錯体化学の分野では1)相互作用の型、2)次元数、3)スピン量子数、4)配位数、配位構造の異なる多くの有機-無機融合系について合成され物性の評価がなされてきた。近年、磁気緩和現象は分子磁性の分野で最も注目されている現象のひとつであり、低次元性や異方性を有する遷移金属錯体における構造-磁性の関係について興味が高まっている。本研究では、Co(II)イオンが一般的にイジング型スピンを取ること、水熱合成法によって通常の合成方法では得られない化合物の単結晶が得られ、フラストレーションを示すヒドロキソ錯体が得られる場合が多いことに着目した。α-フェニルケイ皮酸(phcinaH)を用いた6種類の低次元Co(II)錯体を主に水熱合成法で合成し、構造と磁性について調べた。  第2章では合成と構造について述べた。3核錯体[Co3(phcina)6(quin)2](1)、2種類 6核錯体[Co6(OH)2(phcina)10](2)と[Co6(OH)2(phcina)10(phcinaH)2(actn)2](3)、3種類の1次元錯体、[Co(phcina)2](4)、[Co2(OH)(phcina)3(H2O)](5)、[Co4(OH)2(phcina)6(H2O)4]・2H2O(6)(quin = quinoline)について述べた。1次元錯体4は交互鎖構造を取るのに対し、5及び6は2重鎖構造を取っている。これらのモデル図を以下に示した。   モデル図省略  第3章では磁気物性について述べ、構造を考慮に入れた考察を行った。3核錯体1は基底状態S = 9/2をとっている。さらに、磁化率の温度変化について、オクタヘドラル構造を持つCoII(HS)の軌道角運動量を考慮したLinesのモデルに基づいたフイッテイングを行い、J/kB:17K、J’/kB=2Kと求まり、クラスター内及びクラスター間に強磁性的相互作用が働いていることがわかった。2及び3は構造から、すべてCoII(HS)の6核錯体であり、磁化の磁場依存からS = 3に近い状態をとっている。化合物2についてはJ1/kB~5K、J2/kB = 30K、J3/kB = -90K、化合物3についてはJ1/kB~0 K、J2/kB = 40K、J3/kB = -90Kと求まり、スピンフラストレーションの可能性を持つことがわかった。1次元錯体4と5はそれぞれTN=20K、TN=25Kの反強磁性体であり、4について1次元イジングモデルを用いてJ/kB = -52Kを得た。
 2重鎮構造を持つ6はメタ磁性を示し、1次元鎖方向、b軸方向が磁化容易軸となっている。6には配位環境の異なる2種類のCoII(HS)が存在し、このgの値が異なる2種のスピンが反強磁性的に相互作用することによって、2重鎮内にフェリ磁性が生じる。また、ゼロ磁場下においては2重鎖間には反強磁性的相互作用が存在し、TN=5.5Kの反強磁性体であるが、H>Hc:20 Oeではフェリ磁性へと転移を示す。この臨界磁場から鎖間(J’)と鎖内(J)の交換相互作用の比はJ’/J~10-5と与えられ、2重鎖同士は広い温度領域において磁気的に十分孤立しているとみなせる。ゼロ磁場下における交流磁化率は4K付近に周波数依存を示すピークを持ち、反強磁性状態での磁壁の移動による磁気緩和現象が観測された。アレニウス則を用いることにより、エネルギー障壁及び緩和時間は、//b方向についてEa/kB=64K、τo = 1.9×10-11s、⊥b方向についてEa/kB = 89K、τo = 1.8×10-11sと求まった。さらに、30 Oeの正磁場を印加したときも同様にフェリ磁性状態での磁壁の移動による磁気緩和現象が観測され、Ea/kB=27K、τo= 3.1×10-7s(//b方向)、Ea/kB=176K、τo=1.7×10-19s(⊥b方向)を得た。このことは、1次元鎖方向の交換相互作用が2重鎮間と比較して大きいため、磁壁の移動が若干起こりやすく、フェリ磁性状態では1次元鎖方向に磁区が成長していく様子を示していると考えられる。  第4章では、α-フェニルケイ皮酸(phcinaH)を用いた6種類の低次元Co(II)錯体の構造-磁性の関係についてまとめた。本研究では同じ配位子phcinaを有する6種類の錯体について理論モデルを用いCoII(HS)錯体の磁性の解析を行い、磁気的相互作用の大きさを見積もった。また、2重鎖構造等の珍しい構造を得ることに成功し、1次元系特有の磁壁の移動がメタ磁性転移前後の両方で観測された従来報告のない例について考察を行った。, application/pdf, 総研大甲第746号}, title = {Studies on Structures and Magnetic Properties of Low-Dimensional Co (II) Complexes with Phenylcinnamic Acid}, year = {} }