@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000234, author = {菊澤, 良弘 and キクザワ, ヨシヒロ and KIKUZAWA, Yoshihiro}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {生体をモデルとして人工光合成を実現するには、次の3つの過程が必要である。(1)光励起された電子を伝達する、(2)正負の電荷を安定に蓄積する、(3)蓄積された電荷を用いて酸化還元反応を駆動する、という3つの過程に大きく分けることができる。(1)については研究が進んでいるが、(2)(3)に関しては現在も模索状態である。本研究は上記(2)を分子レベルで達成することを目指して、多段階光酸化還元分子の開発を行った。1電子過程である光励起電子移動(2)と、多電子過程である化学結合の変化(3)を合理的に結び付けるには、複数の電荷を溜めることのできる、“電子プール”の存在が必要となる。この電子プールの骨格としてデンドリマーを利用した。本論文では、複数の官能基が内部に導入可能な骨格分子としてのデンドロンの合成法の確立(第1部)と、官能基導入の合成法、更に合成した分子の基本的な光化学・電気化学(第2部、第3部)を明らかにしている。  第1部では内部に複数の官能基が導入可能なデンドロンの合成について論じる。新規デンドロン骨格として、Frechet型デンドリマーの分岐単位間に、メチルエステル基を有するスペーサー単位を導入することとした。このメチルエステル基を用いて、骨格形成後に機能性官能基が導入できる。スペーサー単位は、デンドロン内部に立体的な余裕を持たせ、骨格形成反応や機能性官能基導入反応を容易にする。またデンドロンの末端にはオクチル基を導入し、有機溶媒に対する溶解度の向上を図った。この分子設計に従い、第1世代~第3世代のデンドロンをコンバージェント法で合成した。更に、第3世代デンドロンの14のメチルエステル基をアルカリ加水分解で、全てカルボン酸に変換した。骨格形成、官能基変換のいずれの反応も、従来のFrechet型デンドリマーの反応と比較し、はるかに容易に進行することが確認できた。第3世代デンドロンのクロロホルム中の分子構造を分子動力学法で予測したところ、最も内側(=第1世代)のエステル基近傍にも溶媒分子が自由に接近可能なことが示された。また第3世代デンドロンのカルボン酸ナトリウム塩体を用い、THF/水混合溶媒中の凝集状態を調べたところ、高極性の領域でミセルとして安定化することが確認できた。このことは内側に位置するカルボキシル基が外側の溶媒と相互作用できることを意味しており、このデンドロン骨格が柔軟であることを示唆している。  第2部では第1部で合成したデンドロンに、ポルフィリンと複数のフェロセニル基を導入した化合物の合成と物性について論じる。第3世代デンドロンのメチルエステル基を官能基変換してフェロセニル基を導入すると、最大14の正電荷を保持することが可能となる。更に核部位にポルフィリンを導入し、光によって得られたエネルギーでフェロセニル基を酸化し、複数の正荷を貯蔵することを期待した。デンドロンの骨格合成は、第1部と同様コンバージェント法によったが、今回は、2つのスペーサー単位と1つの分岐単位をあらかじめ結合させておくことにより、工程数を半減させることができた。各世代のデンドロンの核部位とポルフィリンを結合させた後、全てのスペーサー単位にフェロセニル基を導入した。CVの測定から、第3世代フェロセンデンドリマー-ポルフィリン結合化合物では、14のフェロセニル基が一度に酸化されることが示された。定常状態の蛍光発光スペクトルでは、デンドリマーの世代が大きくなるに従って、ポルフィリンの発光が減少し、デンドリマーの世代が大きくフェロセニル基の数が増加するのに応じて消光が強くなることが確認できた。  第3部では、第2部のフェロセニル基の代わりにキノン誘導体を導入した化合物の合成と物性について論じる。キノンは2電子還元が可能な分子であり、第3世代デンドロンに導入すると、最大28の負電荷を保持することができる。更に核部位にポルフィリンを導入し、光によってキノンをヒドロキノンに還元し、複数の負電荷を貯蔵することを期待した。化合物は、デンドロンとポルフィリンを結合させた後、別途合成したカルボキシル基を有するキノン誘導体を導入して合成した。定常状態の蛍光発光スペクトルは、ポルフィリンの発光がキノン導入後に大きく消光された。このキノンデンドリマー-ポルフィリン結合化合物をジチオナイトで化学的に還元すると、ヒドロキノン体が生成し、蛍光が回復した。以上の結果から、今回合成したキノンデンドリマー-ポルフィリン結合化合物で、キノンの酸化状態の変化に応じてポルフィリンの光物性が変化することが確認できた。  以上まとめると、本研究では内部に機能性官能基を決まった個数持つ新規デンドロンの合成法を確立した。さらにこのデンドロンにポルフィリンとフェロセニル基、またはキノン誘導体を導入した化合物を合成し、その基本的な電気化学と光化学の測定を行った。これは、分子レベルで複数の電荷を貯蓄し、それを光によって駆動する系を構築するための基本骨格を提供するものである。, application/pdf, 総研大甲第797号}, title = {内部に機能性官能基が導入可能なデンドリマーを用いた、多段階光酸化還元分子構築に関する研究}, year = {} }