@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000241, author = {坂上, 知 and サカノウエ, トモ and SAKANOUE, Tomo}, month = {2016-02-17}, note = {有機半導体を用いた発光ダイオード(LED)、電界効果トランジスタ(FET)、フォトディテクタなどの電子デバイスの研究開発が盛んに行われている。これらの有機エレクトロニクスデバイスは軽量、フレキシプル、大面積化が可能といった特徴を有することから、ユビキタス社会を実現するためのキーテクノロジーとして大きく注目されている。有機半導体をデバイスの活性層に用いた場合、金属電極から有機薄膜へのキャリア注入特性がデバイス全体の特性に大きく影響をおよぼすことが知られている。実際、有機LEDでは陰極、陽極材料の選択や、キャリア注入層の挿入などによってキャリア注入特性を制御し、発光特性を向上させている。有機FETにおいても、ケルビンプローブフォース顕微鏡観察によって、ソース電極/有機薄膜界面に電圧降下が生じることが報告されており、キャリア注入がFET特性に大きく影響をおよぼしていると考えられる。そこで本研究では有機FETにおける有機半導体/電極界面に着目し、キャリア注入特性の解明・制御を目的とした。
 低仕事関数金属であるAl(仕事関数:4.1eV)やMg(3.8eV)、Ca(2.9eV)などを有機FETに適用することによって電子注入特性が向上することが報告されている。・しかし、低仕事関数金属は大気中の水や酸素と容易に反応して表面酸化膜を形成してしまうため、有機分子との急峻な界面を作製することは困難である。本研究ではAlを電極とするボトムコンタクト型FETを作製し、電極の作製から有機半導体薄膜の作製、およぴデバイス測定まで一貫して大気にさらさず行うことによってAlの表面酸化膜の形成を防ぎ、Alと有機分子が作る急峻な界面がデバイス特性におよぼす影響について検討した。
 半導体層には N 型有機半導体として知られている N,N’-ditridecylperylene-3,4,9,10-tetraCarboxylic diimide(PTCDI-C13)を用いた。Auを電極とするデバイスでは、ゲート電極に正電圧を印加すると電流量が増加するエンハンスメント型の特性を示し、しきい値電圧は13Vであった。この特性はN型有機FETでは一般的な特性であり、ゲート電圧の印加にょって有機/絶縁層界面に電子が蓄積されるということを示している。一方、Al電極を有するデバイスではゲート電圧が0Vにもかかわらず電流が観測され、負電圧の印加とともに電流量が減少するN型のデプレッション型特性を示した。しきい値電圧は-18Vであった。光電子分光による研究から、低仕事関数金属と電子受容性の分子が接触すると、金属から有機分子へと電子移動が生じることが報告されている。ここで作製したデバイスでは、PTCDI-C13/Al界面でAlからPTCDI-C13へ電子移動が起こったため、ゲート電圧が0Vであっても電子が絶縁層界面に蓄積され、チャネルを形成して電流が観測されたと考えられる。一方、3時間大気にさらしたAl電極を用いたデバイスでは、しきい値電圧は-5Vこ上昇した。大気にさらすことによってAl電極表面に薄い酸化膜が形成され、界面での電子移動がさまたげられた結果であると考えられる。電子受容性有機分子/低仕事関数金属界面における電子移動はFET特性のしきい借電圧に大きく影響をおよぽすことを示した。
 注入特性を制御することにより新しいデバイスの有機FETの電極に新規な構造を適用することによって積極的に有機/電極界面を制御し、電子とホールの同時注入を達成してFETから可視発光を観察した。
 最近、P型とN型のいずれにも動作可能なambipolar(同時両極性)動作が可能な有機FETに関する研究に興味が持たれている。このようなambipolar FETでは、電子とホールを同時に有機薄膜中へ注入することができるため、キャリアの再結合による発光が期待され、スイッチングと発光機能を兼ね備えた新規発光デバイスとなる可能性がある。実際、単層カーボンナノチューブのambipolarFETでは、赤外発光が観測されているB有機FETにおいても、電子とホールの同時注入を達成することによって、FETから発光が観察されることが報告されている。しかし、一般的な有機FETの構造ではソース電極とドレイン電極は同じ金属を用いているため、電子注入とホール注入の両方に適したデバイス構造とはなっていない。本研究では一般的なAu/Cr積層型電極の他、電子注入の効率化を目的としたAu/Al積層型電極、およびソース電極をAu/Cr、ドレイン電極をAlとする非対称型電極(Au/Cr-Al電極)を有するデバイスを作製し、発光効率の向上を目指した。
 デバイスの活性層には Poly[2-methoxy-5-(2'-ethylhexyloxy)-1,4-phenylenevinylene](MEH-PPV)を用いた。Au/Cr電極ではドレインおよびゲート電圧を-100Vとしても発光が観察されなかった。一方、Au/Al電極およびAu/Cr・Al電極を有するデバイスでは、ゲートおよびドレイン電圧の印加とともに発光が観察され、発光強度をゲート電圧によって直接制御することができた。特にAu/Cr・Al電極を有するデバイスでは、駆動電圧、発光強度、発光効率ともに大きく向上させることができた。このデバイスのFET特性には、ゲート電圧が0V時に電流の急激な上昇が見られた。これはambipolar FETでよく見られる挙動であり、ドレイン電極から注入された電子がソース電極へと向かって流れたものであると考えられる。ソース電極に仕事関数の高いAu(5.1ev)を、ドレイン電極に仕事関数の低いAlを利用することによって、電子とホールのいずれに対しても効率よいキャリアの注入を実現し、発光効率を向上させることができた。, 総研大甲第919号}, title = {発光性有機トランジスタに関する研究}, year = {} }