{"created":"2023-06-20T13:22:06.560053+00:00","id":2516,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"68c64016-8e56-4e54-862c-83be1e194592"},"_deposit":{"created_by":21,"id":"2516","owners":[21],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"2516"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:ir.soken.ac.jp:00002516","sets":["2:426:4"]},"author_link":["0","0","0"],"item_1_creator_2":{"attribute_name":"著者名","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"鈴木, 晋介"}],"nameIdentifiers":[{}]}]},"item_1_creator_3":{"attribute_name":"フリガナ","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"スズキ , シンスケ"}],"nameIdentifiers":[{}]}]},"item_1_date_granted_11":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2011-03-24"}]},"item_1_degree_grantor_5":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"総合研究大学院大学"}]}]},"item_1_degree_name_6":{"attribute_name":"学位名","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreename":"博士(文学)"}]},"item_1_description_12":{"attribute_name":"要旨","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"  イギリス植民地支配期、南インドからスリランカに移住したプランテーション労働移民の子孫たちが今日もプランテーションに働きながら暮らしている。彼らを「エステート・タミル」と呼ぶ。本研究は彼らのアイデンティティの在り方を生活の場における「ジャーティヤ」(これは「カースト」とも「民族」とも翻訳されてきたものだが、むしろ「ひとの種類・まとまり」というほかないものである)のつくられ方・組成に着眼して明らかにすることを目的とした人類学的研究である。
  近・現代スリランカにおいて、エステート・タミルという人々には絶えず何者であるかという「括り」の問題が付き纏ってきた。スリランカ政治的独立(1948年)とともに市民権を喪失した彼らには「国民」としての括りが、また所謂シンハラ対タミル民族対立問題の文脈では「民族」としての括りが、そしてエステート(プランテーション)という独特の生活環境からは「カースト」の括りの問題が、それぞれ日常生活と齟齬をきたすように彼らの暮らしを覆ってきたのである。
  こうした境遇の中で彼らが紡いできたアイデンティティの在り方は、「類―種」の種的同一性ないし提喩的同一性の論理を根底に有するアイデンティティ・ポリティクスの視角からは捉えきれるものではない。序章では、オリエンタリズム批判以降の「同一性の政治学批判」の議論の延長上に本研究を大きく位置づけ、提喩的同一性の論理とは異なる、「そうでないアイデンティティ」の考究を本論の大きな問いとして提示する。つづいて、本論の「ジャーティヤ」という対象への着眼の趣意を明示し、対象に切り込む方法・観点として援用する修辞学的術語と分析に用いる語彙(「括り」、「つながり」、「まとまり」)を整える。
  序章につづく第1章では、エステートの地理的分布とエステート・タミル人口を統計数値でおさえた後、彼らをめぐる歴史的・政治的背景に言及する。移住の経緯と三つの政治的できごと(「民族としての範疇化」、「市民権問題」、「民族対立問題」)を通覧する。第2章、3章はジャーティヤの検討のための準備的記述である。第2章では調査地(中央州の小さなゴム園と隣接シンハラ村とにまたがるひとつの生活の圏域)を概観する。第3章は調査地の経済状況を検討し、エステート住人の経済的均質性、彼らと村人の結びつきの経済的必要性という下地をミクロの経済的データに基づいて提示する。
  第4章~8章は本論のボディとなる生活の場におけるジャーティヤの組成をめぐる記述・考察である。エステート・タミルというジャーティヤは、対内的にみればいくつかの異なるジャーティヤ(ふつう「カースト」と訳されるもの)から成っており、対外的にみれば隣村シンハラといった異なるジャーティヤ(ふつう「民族」と訳されるもの)との関係の中にある。検討はこれに合わせ、対内的・対外的と領域を二つに分けて行う。一連の検討には導きの縦糸となる一つの問いがある。括りを拒絶しながら生きるエステート・タミルたちは、なおかつ自らを「ひとつのジャーティヤ」と語る。導きの問いとは、彼らの「ひとつであること」の意味、その組成はいかなるものか、である。
  第4~6章は、対内的領域すなわちエステート・タミル・カーストの領域において、「ひとつのジャーティヤ」の組成を検討する。第4章「エステート・タミル・カースト1」で取り組むのは、カーストをめぐる「括りの相」の提示である。エステートという生活環境では、特定の名称をもって現存するカーストが限りなく形骸化し、抽象的な括りと化して人々を囲繞する状況が生じている。先行研究にみる従来のエステート・タミル・カースト像の解体作業を通じて、括りの相というものを析出する。第5章「エステート・タミル・カースト2」では、カーストをめぐる「つながりの相」に目を転じる。人々は括りと化したカーストを放棄し、換喩・隠喩的論理をつたったひとの種類・まとまりのつくり直しに向かっている。いわば彼らはエステート・タミルというひとまとまりの巨大なカースト(=ジャーティヤ)を生きようとしている。その組成の具体レベルとして「親族のつながり」と「職業のつながり」という二つの体系を明らかにする。第6章「エステート・タミル・カースト3」では、つながりをつたうひとまとまりへの動きが、深く生活の境遇に根ざしていることを論じる。「長屋の成女儀礼」を題材に、生活の境遇に根ざした「長屋の共同性」というものを析出し、ひとまとまりとなっていくエステート・タミルをミクロの水準で捉える。
  第7章からは対外的領域、いわば「民族」のレベルに検討を移す。第7章はこの検討の前提として、シンハラ・カーストを対象に個別的な一章をとる。エステート同様、シンハラ村においてもカーストの括りの相とつながりの相は明瞭に析出される。とくにカースト作法の運用に着眼し、つながりを希求するシンハラ・カーストにおける潜在的なひとまとまりを浮かび上がらせる。エステート・タミルが生活の場で接続するのは、このつながりを組成とするシンハラのひとまとまりと、である。この議論をふまえ、第8章では対外的領域におけるエステート・タミルというジャーティヤの組成を検討する。生活の場におけるエステート・タミルとシンハラは「対他」的差異化=つながりの構成によって、民族対立状況下の提喩的括りによる「排他」的分断線の突破を図っている。人々は提喩的な括りのジャーティヤを、換喩・隠喩的論理に拠るつながりのジャーティヤへと変換する。こうした生きるやり方に、提喩的同一性の論理に対する対抗的意義を捉える。
  一連の検討を通じて明らかになるのは、生活の場のエステート・タミルというジャーティヤが、まるで換喩・隠喩的論理に依拠したつながりの織物のようにつくり上げられていること、そして、そのアイデンティティは類―種の論理ではなく、換喩・隠喩的同一性として把捉できることである。第9章ではこの換喩・隠喩的同一性というものの本領の考察に向けて踏み込む。考察のための題材は、ジャーティヤをつながりによって生きる人々が執り行う女神祭礼である。彼らの儀礼のやり方にみる「他性」と「偶然性」を鍵に、本論の大きな問い、提喩的同一性に拠らない「そうでないアイデンティティ」のかたちを論じる。それは常に「対他」的なつながりの可変性により創造され、対他的なつながりの、そのつながりによる何者であるかの定まりの、根源的な偶然性に対する想像力を根底に有している。この想像力が、見かけの必然性をもって人々を囲繞する提喩的論理の突破の契機を成し、またつながりの創造的な実践を促し、肯定する力となる。括りに囲繞される境遇に生きてきたエステート・タミルという人々が生活の場で形づくってきたジャーティヤの在り方、そして女神祭礼のやり方には、こうしたつながりのアイデンティティのかたちが素朴に、しかし先鋭に映じている。
  本論で明らかにする生活の場におけるジャーティヤの組成そしてつながりのアイデンティティの様相は、今日の人類学的研究の重要な課題のひとつとしての「共同性」の問題を考える上で、また、2009年内戦終結以降のスリランカ社会の変動をミクロレベルで把捉していくための、有効な視座と民族誌的資料としての意義を有するものである。
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