@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000260, author = {水谷, 泰久 and ミズタニ, ヤスヒサ and MIZUTANI, Yasuhisa}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {学位申請論文は第I部「共鳴ラマン分光法によるフィトクロムの光変換機構 に関する研究」、第Ⅱ部「共鳴ラマン分光法による高酸化状態鉄ポルフィリン 錯体に関する研究」の二部からなる。 第I部「共鳴ラマン分光法によるフィトクロムの光変換機構に関する研究」  フィトクロムは植物の光形態形成に関与する光受容タンパクで、安定な二つ の形[赤色光吸収形(Pr)と近赤外吸収形(Pfr)]の間で可逆的に光変 換する。そしてこの光変換反応が遺伝子発現調節や膜機能調節のトリガーとな る。すなわち、Prが組織内で生合成され、それが光によってPfrとなるこ とで情報伝達系にシグナルが送られる。従って、この光変換反応の機構を解明 することはフィトクロムの生理学的作用機構を理解する上で重要となる。そこ で本研究では共鳴ラマン分光法を用い特に発色団の構造に焦点をあてて光変換 に伴うフィトクロムの構造変化を調べた。  第一章 この章ではフィトクロムの生理学的機構、物性、光変換反応につ いてのこれまでの研究を概観する。そして併せて今後明らかにすべき問題点に ついて述べる。  第二章 フィトクロムは赤色光領域に強い第一吸収帯を持つが、この波長 を励起光として用いると、Prより非常に強い蛍光が出てしまい、事実上共鳴 ラマンスペクトルは測定できなかった。このため、これまでの測定例はいずれ も非生理的条件におけるもののみてあり、生理的条件での成功例はなかった。 出願者らは第二吸収帯付近の364nm、407nmの光を励起光として用いることによ ってこの蛍光を避け、初めて常温での共鳴ラマンスペクトルの測定に成功した。 ここでは、まず精製の比較的容易なラージ・フィトクロム(インタクトなもの に比べてN末端約6kDaのポリペプチドが欠損したもの)を用いた。ラマンス ペクトルの測定とは別に、レーザー光照射下での吸収スペクトルを測定し、光 定常状態にあるPr、Pfr、Ibl(腿色形中間体)の存在比を求め、観測 されたラマン線の各成分への帰属を行った。この二つの励起波長を用いるとそ れぞれPr、Pfrの発色団を選択的に観測できることがわかった。こうして 得られた共鳴ラマンスペクトルを軽水中でのものと重水中でのものとでC=C 伸縮振動領域を比較すると、Prでは同位体シフトを示すラマン線がみられる のに対し、Pfrではみられないことから、PrとPfrとでは発色団のプロ トン化構造に違いがあることが示唆された。  第三章 次にインタクト・フィトクロムを用いて第二章で述べたものと同 様の実験を行った。インタクト・フィトクロムにおいてもラージ・フィトクロ ムと同様PrとPfrの発色団の間にプロトン化構造の違いがみられた。ラー ジ・フィトクロムとインタクト・フィトクロムの結果を比較し光変換における プロトン移動に対してN末端6kDaのセグメントが果たす役割について考察し た。また発色団のモデル化合物であるオクタエチルビリベルヂン(OEBV) を用いてPr発色団のプロトン化位置を調べた。プロトン化OEBVではPr と同様の重水素化シフトが観測され、このプロトン化位置は1H-NMRによっ て、OEBVのピロール窒素であると結論された。  第四章 フィトクロムの発色団構造を振動分光の立場から詳細に議論する ためには各バンドについての帰属が必要となる。しかし、これまでビリベルヂ ンについては詳しい振動解析は行われてはいなかった。そこでOEBVおよび プロトン化OEBVとその7種類の同位体置換体について共鳴ラマンスペク卜 ルを測定し同位体シフトからバンドの帰属を行った。また、端のピロール環ひ とつが還元され、フィトクロムの発色団により近い構造を持つジヒドロビリベ ルヂン(DHBV)についても同様に測定し両者の同位体シフトのパターンを 比較した結果、還元によって振動モードは大きく変わっていないことが明かと なった。  第五章 フィトクロムは光変換において発色団構造だけでなくタンパク構 造も変化させる。ロドプシンなど他の光情報伝達タンパクをみてもこのタンパ ク側のコンフォメーション変化がシグナル伝達に直接的な役割をはたしている 場合が多い。そこで、紫外共鳴ラマン分光法を用いてタンパク側の構造変化を 調べた。Prでは多くのトリプトファン残基は親水性の高い環境にあるが、P frになるとそれら一部は疎水性環境に移ること、チロシン残基の多くはバル クのpHの影響を受けにくい位置にあることがわかった。 第Ⅱ部「共鳴ラマン分光法による高酸化状態鉄ポルフィリン錯体に関する研究」  鉄ポルフィリンは酸素分子と反応して自動酸化されるがこの酸化過程ではい くつかの反中間体が存在する。また金属ポルフィリンを化学的あるいは電気化 学的に酸化するとポルフィリンπカチオンラジカルが得られる。これらはへム タンパク質の反応過程において存在すると考えられている反応中間体のモデル 化合物となるが、本研究では共鳴ラマン分光法を用いてこれらのキャラクタリ ゼーションを行い、また鉄-配位子伸縮振動およびポルフィリン面内振動につ いての帰属を行った。  第一章 この章では高酸化状態のポルフィリン金属錯体についてのこれま での研究を概観し、併せて今後明らかにすべき問題点について述べる。  第二章 鉄(Ⅱ)テトラメシチルポルフィリン(TMP・Fe(Ⅱ))は 酸素分子と反応してTMP・Fe(Ⅱ)O2、TMP・FE(Ⅲ)- O-O-F e(Ⅲ)・TMP、TMP・Fe(Ⅳ)Oを経てTMP・Fe(Ⅲ)OHとな る。この自動酸化過程において低温トラップ法により捉えられた中間体の構造 を共鳴ラマン分光法を使って調べ、これまで溶液状態では報告例のなかった5 配位錯体の酸素-酸素伸縮振動(ν(O2))、鉄-酸素分子伸縮振動(ν(F
e-O2))、鉄-酸素原子伸縮振動(ν(Fe=0))を初めて検出した。こ れらの値をこれまでに報告されている6配位錯休やへムタンパク質のものと比 較して考察した。  第三章 へムタンパク質の反応中間体のモデル化合物として重要な鉄ポル フィリンπカチオンラジカルの共鳴ラマンスペクトルを測定し、観測されたラ マン線の帰属を行った。特にオキソ鉄(Ⅳ)μカチオンラジカルのFe=0伸 縮振動やポルフィリン面内振動を同位体置換で帰属し、化学結合状態を詳しく 考察した。またアメリカのグループからの報告との矛盾点を解決した。, application/pdf, 総研大甲第15号}, title = {色素タンパク質およびそのモデル化合物の共鳴ラマン分光}, year = {} }