@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000301, author = {初井, 宇記 and ハツイ, タカキ and HATSUI, Takaki}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {遷移金属化合物は多様な物性を示す。その多くでd対称性を持つ電子が重要な役割を果たしている。従って、主にd対称性をもつ空軌道への遷移である金属2p吸収から物性を理解する上で有用な情報が得られると期待される。実際、酸化物等の研究では有力な手法となっている。しかし、分子性伝導体、金属酵素、触媒など化学的に興味深い遷移金属錯体への応用はほとんどなされていない。彼は、応用研究が盛んでないのは、金属2p吸収の理解が不十分なためであるとの立場から、Ni錯体に注目して系統的に実験・理論の両面からNi2p吸収を調べた。  平面錯イオン[Ni(CN)4]2-を含む化合物のNi2p吸収には強いサテライトバンドが観測されることを見いだした。これまで、このようなサテライトバンドは多電子遷移なのか金属2p内殻から配位子π本軌道への電荷移動(Metal-to-Ligand Charge Transfer MLCT)遷移なのか明らかでなかった。そこで励起状態の対称性を決定するため番こ平面錯イオン[Ni(CN)4]2-を含む単結晶試料を調製し、直線偏光吸収スペクトルを測定した。またNi2p励起状態のab initio分子軌道計算をおこなった。その結果このサテライトバンドが多電子遷移ではなくMLCT遷移であることを初めて明確に示した。  MLCT遷移を系統的に調べるために、[Ni(CN)4]2-錯イオンと同じ低スピンNi(II)錯体であるグリオキシム錯体、maleonitriledithiolate (mnt)錯体について、直線偏光吸収スペクトルを測定した。その結果、これらの系すべてに共通して、MLCT吸収が観測されていることを示し、MLCT吸収が内殻励起で一般的な現象であることが明らかになった。また金属2p吸収の場合、MLCT吸収の強度が金属から配位子空軌道への逆供与の強さレこ対応することを明らかにした。  3d遷移金属錯体の金属1s吸収はこれまで多くのスペクトノレの蓄積があるが、電子構造の情報を引き出せていない例が非常に多い。そこで上記の試料について直線偏光Ni 1s吸収を測定するとともに、Ni 1s励起状態のab initio分子軌道計算をおこなった。その結果、Ni 4p*軌道と配位子π*軌道の結合性の線形結合で記述できる空軌道への遷移がイオン化しきい値より低エネルギー側に強く観測されることを明らかにした。本研究は配位子π本軌道を考慮した解釈が必須であることを示し、これまでの配位子π本軌道を考慮していない研究に警鐘を鳴らすものである。  この研究によって配位子π本軌道をもつ系においても内殻吸収が解釈できる可能性が開けた。そこで物性研究への新たな応用が期待される。彼は具体的に2つの応用例を示した。  一つは[Ni(III)(mnt)2]1-の電子構造研究である。[Ni(III)(mnt)2]1-は形式3価のNi原子を持つが、実際の価数は2と3の間であると信じられている。Niと配位子に非局在化したSOMO(singly occupied orbital)を持つと言い換えることもできる。しかし価数の決定に有効な光電子分光によっても結論はでていない。本研究では配位子に含まれる硫黄原子の偏光S 1s吸収と直線偏光Ni 1s、2p吸収に観測されるSOMOへの遷移を帰属し、SOMOの対称性、非局在化の程度を明らかにした。  もう一つの例はNi-Ni結合を持つ混合原子価錯体(Ni形式1.5価),[Ni2(napy)4Br2][B(C6H5)4]である。この錯体の直線偏光Ni 2p吸収を測定した。Ni-Ni結合は他の金属一金属間結合とは異なり、理解が進んでいない。Niの3d軌道はNi2では、dσ、dπ、dδ、dδ*、dπ*、dσ本軌道を形成するが、Ni 2p吸収から、dδ*軌道とdσ*軌道にホールが、2:1で存在することを明らかにした。これは電子配置が(dσ)(dπ)(dδ)(dδ*)(dπ*)(dσ*)と定性的に記述できることを示しており、この系のNi-Ni結合の本質を明らかにした。, application/pdf, 総研大甲第383号}, title = {ニッケル錯体の内殻X線吸収分光}, year = {} }