@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000303, author = {光武, 亜代理 and ミツタケ, アヨリ and MITSUTAKE, Ayori}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {本研究では、初期構造や、経験的パラメータに依存しない第一原理からの計算機シミュレーションを行い タンパク質の立体構造予測をすることを目的としている。この計算を行う際、最小エネルギー状態を求めたいが、タンパク質の系にはエネルギー極小状態が無数に存在するため、エネルギー最小に対応する構造を得ることが至難の技である。徐冷法(Simulated annealing)やマルチカノニカル法(multicanonical algorithm)は、計算物理学の分野で開発された強力なシミュレーション法である。前者は、物質の結晶を作る時の焼きなましプロセスからきており、徐々に温度を下げることによりエネルギー極小状態に留まるのを避ける。後者は、エネルギー空間上で1次元ランダムウオークを実現することにより、どんなエネルギー障壁も乗り越えられ、極小値に留まることを避けることができる。また、1回のシミュレーションから最小エネルギー状態ばかりでなく、任意の温度における熱力学量も得ることができる。本研究では、この2つの強力な手法を適用し、アミノ酸配列の情報のみを用いた第一原理からのペプチドの計算機実験を行った。  具体的には、まず、アミノ酸数5のペプチドであるMet-enkephalin(アミノ酸配列: Tyr-Gly-Gly-Phe-Met)において、気相中及び疎水効果のみを取り入れたモデル溶媒中の徐冷モンテカルロシミュレーションを実行した。そして、各シミュレーションで得られた最小エネルギー構造を分類した(発表論文1)。ペプチド自身のエネルギー関数は、静電相互作用項、1 2-6レナード・ジョーンズ項、水素結合項の分子内の全ての原子対についての和に、全てのボンドの周りの回転角についての和であるねじれエネルギー項を足したもので与えられる。各エネルギー項のパラメータと分子の座標はECCEP/2のものを用いた。モデル溶媒に関しては、空孔形成自由エネルギー(疎水効果)を取り入れるために、スケール粒子理論を用いた。徐冷法とスケール粒子理論を結合したのは本研究が初めてである。温度は1000Kから250Kまで指数関数的に下げた。このシミュレーションを両環境下(気相中及びモデル溶媒中)でそれぞれ20回行った。そして、得られた20個(両環境下で40個)のエネルギー極小構造をその座標の根平均自乗距離により類似講造のグループに分類し、各グループの特徴的構造を詳細に調べた。気相中では、最低エネルギー構造を含むグループ(グループA)はGly2の主鎖の酸素(窒素)とMet5の主鎖の窒素(酸素)がそれぞれ水素結合をつくり、Gly2-Gly3-Phe4-Met5によるTypeII'β-turnを形成する構造を特徴としていた。また、次にエネルギーの低い極小状態を含むグループ(グループB)はGly1の主鎖の酸素(窒素)とPhe4の主鎖の窒素(酸素)がそれぞれ水素結合をつくり、Tyr1-Gly2-Gly3-Phe4によるTypeII'β-turnを形成する構造を特徴としていた。モデル溶媒中で得られた構造についても同様にグループ分けを行った。まず、最低エネルギー構造を含むグループの特徴的構造は、気相中の2番目にエネルギーが低いグループ(グループB)と同じであることが分かった。また、気相中での最小エネルギー状態を含むグループ(グループA)は存在しなかった。更に、主鎖は伸びているが、側鎖も考慮すると全体的に円形をした構造のエネルギーが低いことも判明した。最後に、Met-enkephalinのような小ペブチドでは、溶媒接触表面積と空孔形成自由エネルギーが必ずしも比例しないこども示ざれた。  徐冷法によるシミュレーションの後には、マルチカノニカル法を用いて、気相中でのMet-enkephalinの解析を行った(発表論文2)。ペプチド自身のエネルギーに開しては、前回と同じものを用いた。今回は、得られた構造を、主鎖内の水素結合のパターンから類似構造に分類した。4種類の特徴的なグループが得られ、上の根平均自乗距離を用いた分類結果と一致することが示された。また、任意の温度におけるそれらのグループの存在確率を計算して、低温では、1つの特徴的な構造(グループA)が存在し、常温では主に2つの特徴的な構造(グループA及びB)が存在することを見出した。更には、種々の熱力学量を温度の関数として求めた。徐冷法では、複数のシミュレーションを繰り返して、結果の妥当性を確認する必要がある。また、幅広い温度における熱力学量を求めることが不可能である。これに対し、マルチ力ノニカル法では、幅広いエネルギー空間をサンプルできるので、唯1回のシミュレーションで、エネルギー最小状態が得られたことを確認できるばかりでなく、任意の温度の熱力学量を計算することができる。本研究の手法は、初めて温度の関数として、ペプチドの立体構造の特徴を詳細に研究することを可能にした。  彼女は更に、マルチカノニカルシミュレーションによって、気相中と水溶液中のhomo-oligomersのヘリックス・コイル転移の研究を行った(発表論文3)。タンパク質の2次構造(αヘリックス及びβシ一ト等)の予測は1970年代にタンパク質立体構造のデータベースに基づく研究が試みられた。また、たくさんのCD実験等から、小ペプチド系におけるヘリックス形成傾向性が調べられた。これらの結果から、アラニンはヘリックスになりやすいアミノ酸であり、グリシンはヘリックスを壊すアミノ酸であることがわかった。本研究では、10残基からなるホモアラニンとホモグリシンを用いて、水溶液中のマルチカノニカルシミュレーションを実行し、これらのアミノ酸残基のヘリックス形成傾向性を調べた。溶媒の効果に関しては、溶媒和自由エネルギーが原子団の接触表面積に比例する項を取り入れた。そのパラメータとしては、大井・大畠のものを用いた。そして幅広い温度での平均エネルギー 比熱、ヘリックス含有量、Zimm-Bragg理論のアミノ酸のs値(ヘリックス伝搬パラメータ)等を求めた。  気相中では、ホモアラニンは低温ではほとんどの残基がヘリックス状態にあるが高温になるとランダム・コイル状態になり、ヘリックス・コイル転移が見られた。一方、ホモグリシンはヘリックスを形成しにくいことがわかった。しかし、ホモアラニンのヘリックス・コイル転移温度は400Kであり非現実的に高いという結果が得られた。  水溶液中のシミュレーションでは、各残基のヘリックス形成傾向性は気相中とそれほど違いがなく、ホモアラニンでは再びヘリックス・コイル転移現象も見られた。また、転移温度は、340Kであった。水溶液中では、真空中よりも転移温度が下がり、より現実的な値となった。ホモグリシンはほとんどの残基がヘリックス状態になく、ヘリックスを壊す傾向があるこども確認された。また、Zimm-Bragg理論のsパラメータを計算し、実験との比較を行った。実験からは、これらのs値がアラニンは1.5~2.19、グリシンは0.05~0.57であることが示されている。本研究の水溶液中のシミュレーションで得られたsパラメータは、実験と比較できる温度(約270K)で、アラニンでは1.60、グリシンでは0.27という値であり、上の実験値と良い一致を示した。, application/pdf, 総研大甲第425号}, title = {THEORETICAL STUDIES OF CONFORMATIONS OF OLIGOPEPTIDES BY EFFICIENT SIMULATION METHODS}, year = {} }