@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000309, author = {茂森, 一輝 and シゲモリ, カズキ and SHIGEMORI, Kazuki}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {1.序論 ペプチドは、そのアミノ酸配列を設計通りに合成する手法が確立しているため、生体機能性物質としてのみならず、機能性材料の構成要素としても大きな期待が寄せられている。中でも環状ペプチドについては、天然のものとして抗生物質の中に見出され、また人工分子としてもイオンの膜輸送に関するユニークな機能などが注目されてきた。例えば、Ghadiriらは環状ペプチドをチューブ状に並べ脂質二重膜に導入することにより、イオンや薬物輸送システムへの適用を試みている。一方、金属イオンや錯体は、有機分子にはない構造および機能上の特性を有している。例えば、酸化還元、磁性、光物性やルイス酸性といった反応性に関する特性や、さらには、機能性配位子の固定や集積化を様々な立体化学的様式で行うことができる機能をもつ。これらは、機能分子を構築する上で極めて有用な構成単位となりうる。そこで、私は、環状ペプチドと金属錯体の構造融合による環状メタロペプチドの新合成法を開発することにした。 2.目的 アミノ酸の中には、システインのチオール基やヒスチジンのイミダゾール基のように金属に配位する残基が幾つか見られ、金属酵素の活性中心においても重要な役割を果たしている。これらのアミノ酸をペプチド中に組込むことにより、ペプチド上に金属イオンや錯体を導入することができ、それぞれ単独では実現できない空間配置や機能などが期待される。本研究では、ペプチド中に複数の金属錯体を導入する新しい合成法を開発することを目的として、金属錯体を導入した直鎖状ペプチドの高効率環化、および環状メタロペプチドの化学的性質について検討を行った。具体的には、金属配位能を有するシステインとグリシンの繰り返し配列をもつペプチド上に、DNA結合能や光応答機能をもつターピリジン白金(II)錯体(terpyPtII)を整列させた、環状メタロペプチドcyclo[-Gly-L-Cys(terpyPtII)-]n・Cl n (n=3:1,n=4:2)を合成することに成功した。 3.実験・結果 まず、自動合成機により合成した直鎖状ペプチドH2-(Gly-L-Cys)n-OH・CF3CO2(n=2,3,4,5)のチオール残基にそれぞれターピリジン白金(II)錯体を導入し、直鎖状メタロペプチドH2-[Gly-L-Cys(terpyPtII)] n-OH(CF3CO2)n+1(n=2,3,4,5)を約90%の高収率で得た。次に、n=3およびn=4の直鎖状メタロペプチドを水溶性縮合剤(EDC・HCl)と活性化剤(HOBt)の存在下、H2O-CH3CN(7:3)中で縮合環化することにより、それぞれ単離収率58%で暗赤色の環状メタロペプチドcyclo[-Gly-L-Cys(terpyPtII)-]n・Cl n (n=3,4)を得た。興味深いことに、n=2の直鎖状メタロペプチドを同様に縮合環化すると、二分子が縮合したのち環化した環状メタロペプチドcyclo[-Gly-L-Cys(terpyPtII)-]4・Cl 4が得られた。これら直鎖および環状メタロペプチドの構造は、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)およびプロトン核磁気共鳴(1H NMR)により同定した。それぞれの環状メタロペプチドの環サイズは、高分解能スペクトルにおける同位体スプリットの間隔により決定した。また、1H NMR測定(D2O,60℃)において、直鎖状メタロペプチドはそれぞれのアミノ酸ユニットが独立した共鳴スペクトルを与えるのに対し、環状メタロペプチドの場合、それぞれのGly-L-Cys(terpyPtII)部分がすべて等価なスペクトルを示し、水溶液中で対称性の高い構造をとっていることが明らかとなった。 これら環状体の金属錯体(terpyPtII)部分は、酸処理により容易に除去できた。また、環状へキサメタロペプチド(n=3)は、種々のベンゼントリカルボン酸塩の混合物中から1,3,5-異性体に高い選択性を示し、1:1複合体として分離することができた。 4.考察 これまで、環状ペプチドはそのほとんどが有機溶媒中や固相法により合成されてきた。本研究においては、天然型アミノ酸であるシステインとグリシンの繰返し配列を有するペプチド上に金属錯体を導入させることにより、水溶液中で効率よく環化させることに成功した。これは、直鎖状メタロペプチドが、金属錯体の導入により、環化に適した折り畳み構造をとるためと推察される。本法により、環状ペプチド上に金属錯体を規則正しく集積化することができた。また、金属錯体(terpyPtII)部分は除去が可能なため、他の機能性金属錯体で置換することも可能である。ペプチドの環サイズや金属錯体の種類を変えることにより、本法の一般性を高めることが今後の大きな課題である。本研究により開発された環状メタロペプチドの新しい合成法は、金属錯体を集積・配列化する方法の一つとして新しい切り口を提供するものであり、さらに特殊空間(分子認識場、光応答場、不斉場等)の構築に展開できると確信する。, application/pdf, 総研大甲第451号}, title = {環状メタロペプチドの新規合成法の開発}, year = {} }