{"created":"2023-06-20T13:22:28.026042+00:00","id":3090,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"5b62c848-7aff-41e6-a3b1-9200348efab6"},"_deposit":{"created_by":21,"id":"3090","owners":[21],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"3090"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:ir.soken.ac.jp:00003090","sets":["2:426:3"]},"author_link":["44","49","45"],"item_1_creator_2":{"attribute_name":"著者名","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"大場, 千景"}],"nameIdentifiers":[{}]}]},"item_1_creator_3":{"attribute_name":"フリガナ","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"オオバ, 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第1章では、サハラ以南アフリカの無文字社会における口頭伝承に基づく歴史研究および、北東アフリカにおけるオロモ社会における歴史研究の流れのなかに本研究を位置づけた。第2章では、本論文の調査対象である、ボラナと呼ばれる人々の生業、社会、宗教について概説している。第3章では、口承史の語り手、聴衆、語りの場、およびボラナ社会における機能ついて記述した。第4章では、広域で居住する14人の語り手から収集した口承史に関する語りを比較しながら、語り手間で共通に見られる語りのカテゴリーとパターンを統計的に整理した。5章から7章は、4章で整理したパターンについてさらに考察したものとなっており、それぞれ、歴史語りの中で頻繁に言及される予言者、詩、災因概念が歴史記憶の中でどのような役割を果たしてきたのかについて考察した。第8章では、文化的な言説や構造を内在させ高度な一致性を保ちながら継承されてきたボラナの歴史記憶の存在意味を社会構造との関係から考察した。\r\n 本論文で得られた理解は、以下の7点にまとめられる。\r\n1)14人の口承史の語りのあり方を比較すると、語りの78%が近隣の民族との紛争、政治的対立および内紛、人物談、天災に関するもので占められていた。また、語りの80%において、5つの語りのパターンが用いられており、それぞれ①出来事を飼いならすパターン、②出来事をテクスト化するパターン、③出来事を想起するパターン、④出来事を政治に巻き込むパターン、⑤出来事を転用するパターン、と命名することができる。\r\n2)予言者が登場する語りに共通していえることは、予言者が人々に予言したり、呪術を施したりしていた背景にはすべて社会を震撼させたカタストロフィックな出来事があったという点と、カタストロフィーは、予言や呪術によって超克されていくという筋書きであった。この予言や呪術によるカタストロフィーの超克は、出来事の偶然性を必然性へと転換し、カタストロフィーを理念的に飼いならしながら、「歴史」を構築する技法の1つと考えられる。\r\n3)語りにおける詩の発話は、出来事をテクスト化し、歴史記憶を一致させ、維持する無文字社会の技法であることが明かになった。一方で、詩と史の交錯は、語り手による詩の注釈の違いによって違った歴史が創出されてしまう可能性を常にはらんでおり、難解な詩の解釈が過去への新たなディスクールを生成してしまう場合もある。この2つの側面が詩の歴史記憶における機能といえる。\r\n4)ボラナは、出来事をある一定の周期によって回帰すると考えており、出来事の周期説を分析していくと、ボラナの歴史記憶を支配し、構造化する歴史法則が見えてきた。ボラナはこの歴史法則を前提とした永劫回帰的な史観をもっている。この史観によって、①生起した出来事のうちどの出来事を記憶するのかが決められてしまうこと、従って回帰史観は、歴史記憶を一致、維持させるが、同時に②回帰史観に支配されるがゆえに、歴史記憶が新たに創出され、複数の「歴史」を生み出してしまうこと、さらに、③過去や現在にとどまらず未来までもが回帰史観に巻き込まれることが明らかになった。\r\n5)永劫回帰史観は、循環型の時間概念を内在させている。ボラナは時間の流れに周期的な歴史法則を演繹的に内包することで、時間を構造化するとともに、過去・現在・未来に至る「ボラナの歴史」に構造的連続性を付与する。この時間概念がボラナの歴史記憶の構造そのものを映し出している。\r\n6)ボラナの歴史記憶は、政治システムである世代階梯制度の中枢において、政治的に重要な役職を歴任してきたリネージによって保持されてきた。彼らは、世代階梯にまつわる歴史や慣習に関する知識を独占することによって、自分たちの政治的立場を保持してきた。自分たちのリネージの「歴史」に関して保身的語りをする一方で、政治的敵対リネージの失態に関する「歴史」を暴露するという語りをめぐる政治的駆け引きの中で、歴史記憶は取捨選択され、構築され、維持されてきた。\r\n7)一方でそうした政治的社会的背景のみでは説明できない、社会の連続性や必然性を正当化し、維持するための様々な文化的言説が存在する。これらの言説が想起させることは、人間の「物語」への希求であり、文化的な言説を生み出すことで、自分たちの周りで生起する出来事を物語り、いかなる破局的な出来事が起ころうとも崩壊しない安定した世界観を創出し、自分たちの実存を確保してきた。\r\n 以上の結論から、上述の本研究の目的に対して次のような貢献を引き出すことができる。これまで、口頭伝承は、過去と現在の対話によって再解釈されながら継承されてきたといわれてきた。本研究で明らかになったことは、口頭伝承には現在へのまなざしをも支配しながら、伝承を保つ不変の技法を内包していることである。また、口頭伝承は、過去に生起した出来事を現在に伝えるものであるともされてきた。だが、口頭伝承に内蔵する出来事を記憶する技法は、一方で出来事の存在自体を創出するようにも働く。本研究では、これまで看過されてきた、口頭伝承に内在する出来事を記憶する側面と出来事を創出する側面が実は表裏一体の関係にあったことが明らかになった。反復と創造というこの2つの相反する側面は、伝承が内包してきた構造が生み出すいわば作用と反作用の関係にあり、それらが相互に連関しながら、長い年月をかけて構築され、洗練されてきた世界に対する構造化された認識が、近代をも巻きこみながら、現代に生きるボラナの人々の歴史記憶を支配しているということを明らかにできたことが本論文の最終的結論である。","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_description_7":{"attribute_name":"学位記番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"総研大甲第1466号 ","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_select_14":{"attribute_name":"所蔵","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"有"}]},"item_1_select_8":{"attribute_name":"研究科","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"文化科学研究科"}]},"item_1_select_9":{"attribute_name":"専攻","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"01 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