@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000317, author = {春田, 奈美 and ハルタ, ナミ and HARUTA, Nami}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {紫外共鳴ラマン分光法によるタンパク質の構造変化の解明  タンパク質の機能発現に不可欠な三次構造がどのようにして組み立てられ、機能発現にあたってどのような構造変化が起こるのかを、紫外共鳴ラマン分光法(UVRR)を用いて調べた。244 nm励起のUVRR分光法では芳香族アミノ酸残基であるトリプトファン(Trp)残基とチロシン(Tyr)残基山来のバンドが選択的に検出される。ミオグロビン(Mb)一分子あたりTrp残基が2残基、Tyr残基はマッコウクジラ由来で3、ウマ由来で2残基含まれる。これらの残基をタンパク質の構造変化のプローブとしてリガンド結合及びタンパク質の折れ畳み反応に伴う構造変化を追跡した。両残基とも幾つかのバンドが現れるが、特にTrp残基では、W3バンドとW7パンドの、Tyr残基ではY9aバンド(1170-1180 cm-1)の変化に注目した。1560-1550 cm-1に現れるW3バンドは側鎖の二面角と振動数に良い相関があり、側鎖構造の情報を与える。一方、W7バンドは、フェルミ共鳴によって1360 cm-1と1340 cm-1付近に二つに分裂しており、その強度比(I 1360/I 1340,R値)は非極性環境下だと1より大きぐ極性環境下であると0.5近くまで減少するため、Trp側鎖の環境変化を見積もる指標とした。 リガンド結合に伴うミオグロビンの構造変化  マッコウクジラ由来Mbの五配位還元型と六配位CO結合型のUVRRスペクトルを比較すると、W3パンドの強度変化及びY98バンドの低波数シフトが観察され、分子量17,000の単量体タンパク質であるMbにおいてもリガンド結合に伴う構造変化があることが明らかになった。二つあるTrp残基をそれぞれフェニルアラニン(Phe)に置換した変異体,W14F,W7Fを作成した。それを用いて、変化のあったTrp残基を同定したところ、N末端に近い7番目のTrp残基の環境及び構造が変化していることが示唆された。一方、ウマ由来のMbではパクパンドの変化は同様にあったものの、Y98バンドの変化はみられなかったことから、Tyrパンドの変化は、マッコウクジラにのみあるTyr151由来の変化であると帰属した。結合ポケット側に変化を与えるかさ高いりガンドの結合したn - プチルイソシアニド結合型でもCO結台型と同じ変化を示したことから、リガンド結合に伴うタンパク質の構造変化が、ヘムの五配位型から六配位型への変換が最も大きな構造変化の要因と考えられた。これは、ヘム鉄と共有結合している軸配位子の近位ヒスチジン(His)側から構造化化が誘起され、一方で、遠位Hisの動きは局所的なものであると結論した。 遠位Hisの変異体H64Y、F46V/H64Yの性質 遠位Hisとその周辺のヘムポケットを形成する残基は、二原子分子の親和性に大きく関与している。この遠位HisをTyr残基に置換したH64Y変異体は自動酸化速度が非常に早く、64番目のTyr残基がヘム鉄に配位していることが指摘されていた。実際、244 nm励起のUVRR測定によってTyr残基のプロトンが解離してチロシネート(Tyr ̄)として配位していることが明らかになった。F46V/H64Y変異体はH64Yよりも高いpHで鉄から外れるが、これは遠位側残基の動き易さに起因するものと考えられた。 アポミオグロビンの酸変性過程  アポミオグロビン(apoMb)は、速度論的な後期の巻き戻り中間体が、平衡条件下でも比較的安定に存在することが知られており、中間体の構造はタンパク質の構造形成を知る上で重要な情報となる。そこで酸性側(pH 5.5-1.9)の各pHで平衡状態にあるアポミオグロビン(apoMb)のUVRRスペクトルを測定し、その酸変性過程を追跡した。W3バンドは三状態変化を示し、先に変異体から求めたTrp7とTrp14の天然状態と、完全な変性状態での波数から、中間状態のスペクトレを抽出した。その結果、pH 4以上では天然状態と中間状態の二状態変化でその中点はpH 4.5、pH 4以下では中間状態と変性状態の二状態変化と考えられ、その中点はpH 3.5であった。この結果は、疎水性環境から親水性環境への変化を示すW7バンドの強度比(R値)の減少曲線とも一致した。これらの結果から、pH 4付近の平衡中間体では、すでに骨格がランダム構造になっていて、Trp7は外に露出していることが示唆された。一方、Trp14はまだ天然状態と同程度の疎水性環境下に埋もれていることが分った。W3パンドの波数から、中間状態でのTrp14の側鎖の配向け、何らかの構造制約を受けているが、天然状態とは異なることが示唆された。 サブミリ秒時間領域でのアポミオグロビンの巻き戻り過程  紫外共鳴ラマン分光法に、連続フロー型高速混合装置を組み合わせて、数百マイクロ秒から数ミリ秒時間領域でのapoMbの酸変性からの巻き戻り反応を追跡した。W7バンドとW3バンドの変化から、大きく分けて3種の中間体が存在することが示唆された。1つ目は、測定時間限界の250マイクロ秒よりも早く形成するが、その状態でW3パンドは平衡論的中間体と同程度の波数シフトを示すもののまだ極性環境下にある状態で、Trp14が局所的な相互作用を受けたものと推測された。最も考えられる可能性は、Trp14が位置するAへワックスの形成であり、その後の中間体でW3バンドがシフトしなかったことから、平衡中間状態においてTrp14は非特異的な疎水性相互作用をしてタンパク質内部に埋もれているものと考えられる。2番目に現れる中間体の時定数はおよそ400マイクロ秒で一時的に疎水性環境が高まった状態である。この時Trp14同様Trp7も一時的にタンパク質内部に埋もれており、タンパク質全体が大きな疎水性コアを形成しているものと考えられる。最後に、約3ミリ秒の時定数でやや極性環境に戻るが、これはpH 4の平衡中間状態に近い。この後期の中間体から、完全な天然状態への変化は非常に遅く律速段階となっている。 モデルペプチドのヘリックス形成に伴うTrp側鎖構造への影響 α ヘリックスの形成に伴い、Trp側鎖の構造を反映するW3パンドがシフトをするのかどうかを調べるために、19残基からなるAヘリックスのモデルペプチドを用いた測定を行った。このペプチドは、水溶液中ではランダムコイル構造をしているが、アルコールの添加によりヘリックス構造形成が誘起される。そこで、遊離のTrpとペプチドについて、アルコールの非存在下と存在下でのW3パンドを比較した。その結果、骨格鎖のα ヘリックス形成がTrp側鎖に影響を与え、W3パンドにシフトが起こることが実証された。これは、apoMbの巻き戻りでの早期中間体でW3パンドがシフトするのはAヘリックスが形成したためであるという考察を支持する結果である。, application/pdf, 総研大甲第550号}, title = {Ultraviolet Resonance Raman Studies on MyoglobinDynamics:Ligand Binding and Protein Folding}, year = {} }