@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000319, author = {日野, 理 and ヒノ, オサム and HINO, Osamu}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {量子化学計算の最終的な目標は、様々な原子や分子の化学的性質を計算によって予想することである。微少な相対論的効果や電子状態にたいする原子核の運動の影響を除けば、それは、非相対論的な多電子Hamiltonianの固有エネルギーと固有関数を求めることで達成される。現在、この間題を解析的に解く方法は、ごく少数の電子と原子核からなる系を除いて知られていない。したがって、我々は近似解をもって満足するほかない。Hartree-Fock近似は、様々な多電子理論のうちで長い間中心的役割を担い、化学的現象を解明するのに役立ってきた。Hartree-Fock近似は、電子系の全エネルギーの約99.5%を再現するばかりでなく、"分子軌道"(Molecular Orbital:MO)というような重要な概念も生み出した。しかし、化学的現象の定量的な議論に対して、Hartree-Fock近似は十分ではない。なぜなら、われわれが関心をもつ現象は、しばしば誤差0.5%よりも小さなエネルギースケールで生ずるからである。これは、化学反応がHOMO(highest occupied MO)とLUMO(lowest unoccupied MO)に密接に関係しているということからも理解できる。ほとんどの原子または分子では、HOMOとLUMOの軌道エネルギーの差とHartree-Fockエネルギーの比の絶対値は、0.5%程度である。したがって、Hartree-Fock近似の枠内では、化学的現象の定量的議論は多くの場合不可能である。この近似で取扱われない効果を総称して、"電子相関"効果という。この論文で我々は、それをできるだけ精密に扱う方法を考えた。  この論文の構成は以下のようになっている。まず第1章で、電子相関理論を概観する。第2章で、Hartree-Fock近似について説明する。Hartree-Fock近似はより精密な理論の出発点としての意味をもつ。第3章では、多体摂動論(Many Body Perturbation Theory:MBPT)について議論する。ここでダイアグラム、連結クラスター定理等の重要な事柄が現われる。これらはそれ以後の議論でも用いられる。第4章では、摂動論をCoupled-Cluster理論にまで拡張する。ここで、Coupled-Cluster理論、MBPT、配置間相互作用(CI)理論との相互関係について考察する。CI理論が大きさに対して無矛盾ではないことがここで述べられる。第5章で、多電子波動関数のみたすべきカスプ条件についてのべる。カスプとは、厳密な波動関数が、Coulombポテンシャルが発散する点の近傍で持つべき特異点のことである。量子化学で標準的に用いられる多電子波動関数をSlater行列式の1次結合で近似する方法、すなわち、1電子関数の積で展開する方法ではこれを充たすことはできない。第6章で、Transcorrelated理論の詳細について述べる。まず、通常のHamiltonianを相関因子によって、相似変換したTranscorrelated Hamiltonianを定義する。このTranscorrelated Hamiltonianによって、Coulombポテンシャルのもつ特異性を除去または緩和できることを述べる。そして、その固有値を1電子関数展開によって求める方法を議論し、NeとH2Oに関する数値計算結果を与える。そこで、基底エネルギーの基底関数に対する収束性が、非常に改善されることを報告する。しかし、相関因子の選び方によっては、エネルギーを低く見積もりすぎることもわかった。これに関する対処法も検討した。第7章で、まとめと今後の展望についてふれる。この論文では、対象に原子分子を想定したが、原子核や物性論にも応用することは可能である。いくつかの基本的概念および導出された式の証明を付録で述べておいた。, application/pdf, 総研大甲第583号}, title = {多電子系の電子状態理論 -とくに相関因子を用いた方法について}, year = {} }