{"created":"2023-06-20T13:20:19.526231+00:00","id":327,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"4da64c9d-2ee5-4dd5-b4ed-682366deafd9"},"_deposit":{"created_by":1,"id":"327","owners":[1],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"327"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:ir.soken.ac.jp:00000327","sets":["2:427:10"]},"author_link":["8104","8106","8105"],"item_1_creator_2":{"attribute_name":"著者名","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"宮下, 尚之"}],"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"8104","nameIdentifierScheme":"WEKO"}]}]},"item_1_creator_3":{"attribute_name":"フリガナ","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"ミヤシタ, 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一般に絶縁体等の結晶への光照射後、結晶内の電子が励起され非平衡状態が生じる。その後、振動モード等の他の自由度にエネルギーを放出することで準安定状態に至る。この時、電子格子間の相互作用を介して結晶の一部に局所的な構造変化を伴う場合がある。この局所的な構造変化を伴う光励起現象は光誘起構造変化と言われ従来から知られている。一方で光誘起相転移は光励起後に生じた局所的な構造変化や電子状態の変化が電子間相互作用、格子間相互作用、電子格子相互作用等を通して系全体に広がり、巨視的なスケールで構造や電子状態等が変わるというところが特徴である。\n 光誘起相転移が起きる物質としてスピンクロスオーパ錯体やMMX錯体、Mn酸化物、電荷移動錯体等が良く知られているが、これらの光誘起相転移メカニズムは物質系に依って少しずつ違う事が実験的事実としてわかっている。しかしながら光励起後、空間的に構造や電子状態等が時々刻々と変化しどの様な過程をたどって巨視的な変化(相転移)に至るのかミクロスコピックな視点からそれぞれのメカニズムの詳細はほとんど知られていない。彼の論文のねらいは空間と時間、電荷秩序と格子秩序、そして光励起と言うキーワードを通して、理論的にミクロスコピックな視点から光誘起相転移メカニズムの解明に迫り非線型非平衡現象についての理解をも深めようというものである。\n 具体的に彼の論文では電荷移動錯体を念頭に置いた遍歴電子系のモデルでの光誘起イオン性中性相転移の電荷格子複合ダイナミクスについて詳しく述べている。この系の代表的な物質にTTF-CAが挙げられる。電荷移動錯体の一つであるTTF-CAはドナー分子(TTF)とアクセプター分子(CA)が交互に一次元方向に積層した構造をとっており擬一次元交互積層型電荷移動錯体と呼ばれている。TTF-CAは常圧下Tc=81K以下の低温で格子に二量化歪みを持つ強誘電イオン性相、高温で分子が等間隔に並んだ中性相になる。この物質の特徴は相転移過程で電荷秩序だけでなく格子秩序も変化するところである。電荷移動量はイオン性相では大きく中性相では小さい。電荷移動量の時間及び空間変化を知る事で転移の過程を知る事ができる。実験で得られる反射率変化の時間変化は電荷移動量の時間変化に相当すると考えてよい。さて最近の実験では以下の様な事が知られている。\n(1) 電荷移動(CT)励起の場合、イオン性一宇性相転移効率の光励起強度依存性に閾値がある。\n(2) 反射率変化の詳細な時間依存性が調べられドメイン壁のコヒーレントな振動等が見えている。\n(3) 光誘起イオン性中性相転移が起こる時、第二高調波(SHG)の強度の時間変化と反射率変化の時間変化を比較すると光照射直後にSHG強度は急激に減少しており、反射率変化の時間変化から予想されるイオン性相から中性相への変化より速く系の中心対称性が回復される事を示している。\n この物質の光誘起相転移の理論研究は幾つかあるが最近の実験結果に対してよく説明できる理論は無い。彼はこの系の平衡状態での電子物性を記述するモデルを初めて時間発展させて光誘起イオン性中性相転移における電荷格子複合グイナミクスを示し、先に述べた実験事実のメカニズムの解明に迫った。\n まず光励起強度を変化させて光励起後の系の時間発展を行い、イオン性中性相転移がおこるかどうかを調べる事で彼の計算でも実験(1)と同様に閾値が見られる事が示された。また電荷移動量の空間及び時間変化を見る事で結果的に中性イオン性相転移が起こらない場合でも、光照射後、小さな中性ドメインが生成ししばらくしてから消滅する事もある事がわかった。\n 次に電荷移動量の時間変化から(2)について考察した。電荷移動量の時間変化は大まかに3つのスケールに分けられる事が解った。一つは速い振動で主に2つの振動成分がありこれらは乱雑位相近似(RPA)での解析で見積もられる中性相とイオン性相での電荷密度揺らぎと電流揺らぎのスペクトルに現れるピークのエネルギーに対応している。二つ目は遅い振動で格子振動から来るものである。三つ目はさらに遅い運動で中性イオン性ドメイン壁(NIソリトン)の協同的な動きから来ている。また光励起後、イオン性(I)相中に中性(N)ドメインだけでなく初期状態のI相とは反対方向の分極を持つ小さなイオン性の平均化された分極が電荷移動量の減少より速く0に近づく可能性がある事を示した。これは電荷移動量の減少よりSHG強度が速く減少する(3)の実験結果の説明になる。更に光誘起イオン性中性相転移の過程でみられるNIソリトンとI-〓ソリトンの競合が転移時間や転移可能性に大きく影響する事が解った。\n この様な非平衡グイナミクスは断熱ポテンシャル的な描像だけでは簡単には議論できない。格子系と電子系という時間スケールの違う運動を空間的かつ時間的に直接見る事によって初めてこの様な異種ソリトン間の競合過程などを明らかにする事ができたのである。\n 今まで光誘起イオン性中性相転移ダイナミクスは暗黙のうちにイオン性相中の中性ドメインがドミノ倒し的な成長をするものと考えられていた。しかし実際に電荷と格子の複合するグイナミクスを行って初めて2つの違う種類のソリトンの生成と競合という、この系の非線型非平衡グイナミクスを理解する事ができた。この様に彼のおこなった遍歴電子系での電荷格子の複合グイナミクスは最近の実験結果の説明だけでなく、光誘起相転移メカニズムの解明を進めるにあたっても有効な方法であるという事がわかった。","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_description_18":{"attribute_name":"フォーマット","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"application/pdf","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_description_7":{"attribute_name":"学位記番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"総研大甲第667号","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_select_14":{"attribute_name":"所蔵","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"有"}]},"item_1_select_8":{"attribute_name":"研究科","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"数物科学研究科"}]},"item_1_select_9":{"attribute_name":"専攻","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"08 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