@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000328, author = {片柳, 英樹 and カタヤナギ, ヒデキ and KATAYANAGI, Hideki}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {化学結合の生成、切断の過程を直接「目で見て」観測することは、実験化学の究極的目標の一つであると考えられる。反応の障壁を越えて結合あるいは解離していく原子核の運動を可視化できれば、反応に関する最も直接的知見を得ることができる。  本学位論文では、光イオン・光電子画像観測法を用いて、三から六原子分子の光分解および光イオン化の過程を明らかにすることを試みた。本手法は、測定結果として解離生成物、あるいは光電子の散乱分布を画像として得る事が出来る。これは、反応の結果を「目で見て」観測することに対応する。以下に、本論文各章において行った研究の要約を示す。  第2章では、硫化力ルボニル(OCS)の光分解の観測に、初めて画像観測法を適用し、解離経路の帰属を試みた。分岐比の大きい(>95%)一重項S(1D2)生成経路については、生成物の並進エネルギー(速度)分布がbimodalであることがSivakumarらにより既に示されている。本研究では、分岐比の小さい(く5%)三重項経路にも同様の成分が見られることを明らかにした。これは、三重項S(3Pj; J=0,1,2)がS1←S0への光学遷移から、項間交差を経て生成されている可能性を示唆するものである。さらに、生成物の異方性因子を、速度成分ごとに求めたところ、全て正(高速成分β=0.6、低速成分β=1.8)であった。従って解離に関与する励起状態は主に2 1A’<1〓)←1 1A’(X 1Σ+)であると考えられるが、異方性因子が2より低下している原因として、A”←A’遷移の寄与の可能性も示唆した。  第3章では、S(1D2)原子の電子軌道角運動量ベクトルの、速度ベクトルへの射影の分布(軌道整列)に焦点を当てた。画像の解析をforward convolutionにより行う方法を開発し、一重項経路の各速度成分について、真の異方性因子と、軌道整列の値を求めた。この際、(1)軌道整列は速度ベクトルに対して円筒対称であること、(2)軌道整列は散乱角度に依存しないこと、の二点を仮定して解析を行った。その結果、低速成分に対して、磁気量子数分布(mJ=0):(mJ=1):(mJ=2)=0.6:0.14:0.06、異方性因子β=1.8、高速成分に対して(mJ=0):(mJ=1):(mJ=2)=0.48:0.24:0.02、β=0.7の値を得た。  第4章では、解離に関与する励起状態を特定するため、S(1D2)原子の散乱画像の、励起波長依存性を議論した。その結果、低速成分は2 1A’<1〓)←1 1A’(X 1Σ+)遷移により生成したS(1D2)原子、高速成分は2 1A’←1 1A’遷移および1 1A”(1Σ-)←1 1A’遷移により生成したS(1D2)原子からなることが明らかになった。その後、ここで新たに生じた疑問である(1)何故A’成分とA”成分は全く同じ速度のSを生成するのか、(2)何故A’成分のみbimodalな速度成分を持つのかを明らかにするため、実験結果と波束動力学計算の結果との比較を行った。その結果、(1)二つのポテンシャル面が酷似した地形を持つため、(2)A’ポテンシャル面に励起された後基底状態に非断熱遷移する経路があるため、であことが判明した。また、その非断熱遷移確率を、S原子の画像観測から、2230mにおいて0.35±0.02と求めた。  第5章ではOCS→S+GOの反応において、非断熱遷移確率への、親分子変角振動励起の影響を調べるため、Sの対生成物であるGOの画像観測を試みた。GOの並進エネルギー分布は、OCSの内部エネルギーに直接対応することを用いて、OCSの変角振動準位を分離した。その結果OCS(000)では0.34±0.06、OCS(010)では、確率は僅かに減少し0.21±0.05であった。  第6章では、分子線法により冷却されたCO分子の(2+1)および(2+1’)共鳴多光子イオン化(REMPI)で放出された光電子の画像観測を行った。CO(B1Σ+)状態から放出された光電子のエネルギー分布にはv+=8まで続く振動のprogressionが観測され、振動非対角的であることが明らかになった。この結果はA2Π状態に収斂するRydberg状態が、光イオン化に関与していることを示している。  なお、この章の実験を行う際、光電子をS/N良く観測するため実験装置の改良を行った。即ち,地磁気を遮蔽するために飛行管にμメタル円筒を挿入し、レーザー入射ボートを全長40cmのlight baffleとして、迷光を防いだ。新たにbuffer chamberを設け検出領域の真空度を、これまでより約1桁低い10-8torr領域に維持できるようにした。  第7章は、FM-Doppler分光法を用いた研究である。この手法はG.E. Hallらにより開発されたもので、リングレーザーからの出力光について変調-復調法を適用することで、角早離生成物の吸収スペクトルのDoppler線形を、高い分解能(~100MHz)で測定する事ができる。この手法を用いて、五原子分子 ケテン(CH2=CO)の、XeClエキシマーレーザー(308nm)による光分解における、特定の振動回転状態の生成CH2に対応するCOのDoppler線形(並進エネルギー分布)を測定した。その結果、COの回転状態分布が非統計的であることがわかった。  第8章は、六原子分子 臭化ビニル(CH2=CHBr)の193nm光分角早における、生成Br原子の並進エネルギー分布を、BrおよびBr*原子それぞれの画像観測により求めた。その結果、Br,Br*原子放出機構には、直接解離と、基底状態に緩和した後の熱的解離の競合が見られることが明らかになった。また、微細構造分岐比[Br*(2P1/2)]/[Br(2P3/2)]を、臭化ビニルの光分解におけるBr,Br*の光イオン化信号強度と、既に微細構造分岐比のわかっている光分解反応(HBr→H+Br)の場合とを比較することにより、[Br*][Br]=0.06±0.03と求めた。, application/pdf, 総研大乙第115号}, title = {Molecular photodissociation dynamics studied by photoion and photoelectron imaging}, year = {} }