@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000331, author = {小久保, 裕功 and コクボ, ヒロノリ and KOKUBO, Hironori}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {タンパク質の立体構造の解明はポストゲノム時代における最重要テーマの一つである。立体構造はその生化学的機能と深く関係しており、創薬や人工タンパク質の開発などへの応用に直接つながる問題であると同時に、基礎研究の興味としてはタンパク質がどのような物理的原理に基づいて自然の構造に折り畳まれるかはフォールディング問題としてよく知られている問題である。  タンパク質の立体構造は現在までに2万以上知られているが、特に膜タンパク質は遺伝子の約4分の1の数を占めると言われているにもかかわらず、水溶性タンパク質に比べて立体構造が解明されている例が極めて少なく(数十程度)データベースによる構造予測は困難である。一方、アミノ酸配列情報から膜タンパク質かどうかの判別や二次構造予測をするプログラムはSOSUIをはじめ複数あるが、配置配向を含めた三次構造の予測はほとんど手つかずの状態である。  水溶性タンパク質については、アンフィンゼンにより最初に明らかにされたように、その天然構造はアミノ酸配列と周りの溶媒との相互作用により決定される自由エネルギー最小状態にあることが分かっている。よってタンパク質フォールディングは物理化学的原理により決定されるものであり、構造予測は本質的に物理化学の問題として解決可能と考えられる。膜タンパク質においても同じことが期待され、実際現在までのすべての利用可能な実験データは膜タンパク質の構造が熱力学的な平衡構造であることを支持するものである。  既知の膜タンパク質立体構造では、膜貫通部分はαヘリックスのみかβシートのみから構成されている。このことは水溶性タンパク質と違い極めて疎水的な環境にある膜貫通領域では、αヘリックスかβシートをタンパク質内部で作るほうが水素結合によりエネルギー的に有利であり、脂質二重膜の用意する疎水環境の主要な役割は2次構造形成の促進であることを示唆している。特に、現在までに実験的に明らかになっている膜貫通部分の構造はヘリックスからなるものが大部分である。  ヘリックス系膜タンパク質ではtwo-stageモデルが提案されており、それはStage 1:個々の膜貫通領域のペプチド鎖はαヘリックスを作り、それぞれドメインとして脂質二重膜内で安定であるStage 2:ヘリックス会合により天然構造が形成される、というものである。  本博士論文では、膜貫通ヘリックス系タンパク質を対象とし、アミノ酸配列から計算機 シミュレーションを用いて立体構造予測を実現することを目指して研究が行なわれている。  彼らはtwo-stageモデルをふまえ、レプリカ交換法によりアミノ酸配列からヘリックス系膜タンパク質の天然構造を予測する方法を提案した。その方法は2つのステップから成り、ステップ1:Web上に公開されている予測ツールを使いアミノ酸配列から膜貫通部分のアミノ酸配列を得る、ステップ2: 1で得たアミノ酸配列から理想ヘリックスを作りシミュレーションにより最小エネルギー構造を探索し、それを予測構造とする、というものである。  ステップ1のツールは今のところまだ残基レベルの精度はないため彼らは実験構造から膜貫通部分に相当するアミノ酸配列情報を取り出し、それをステップ2で使う。ステップ2においてアミノ酸配列から理想ヘリックスを作った後、主鎖は固定し側鎖の二面角と一本一本のαヘリックスの剛体並進・剛体回転の自由度のみを持つレプリカ交換モンテカルロシミュレーションを行い最小エネルギー構造から構造予測をする。レプリカ交換法はシミュレーションがエネルギー極小状態に留まるのを避けることが出来る方法である。タンパク質などの多自由度系ではエネルギー極小状態が無数に存在するため、従来の手法によるシミュレーションではそれらのエネルギー極小状態の一つに留まってしまうという困難があるが、レプリカ交換法では大域的なエネルギー空間を探索することができる。  彼らはこの方法の初めの適用対象としてglycophorin Aの膜貫通2量体の構造予測シミュレーションを行った。その結果、シミュレーションから予測された構造は実験構造と良く一致していた。このことは、この系は脂質二重膜や水などの非等方的で一様でない環境にあるにもかかわらずその立体構造はヘリックス間相互作用により主に決定されることが示された。さらに彼らは極小エネルギー構造を明らかにし天然構造と比較してその特徴を明らかにするために、得られたシミュレーションのトラジェクトリから主成分解析を使い構造分類と自由エネルギー解析を行った。その結果、1.最小自由エネルギー構造は最小ポテンシャルエネルギー構造と同じである、2.多自由度の系であるにもかかわらず自由エネルギー面は比較的単純でありわずか2成分により記述可能(エネルギーランドスケープ理論の描像と合致)、3.極小自由エネルギー構造と最小自由エネルギー構造の自由エネルギー差は小さく、各エネルギー項の微妙なバランスで決まる(膜貫通領域のアミノ酸はほとんど疎水性残基から成るがvdW相互作用だけでなく静電相互作用もまた天然構造の安定性に寄与する)、ことなどが明らかされた。また、最小および極小自由エネルギー構造を複数の可能な予測構造として提案し、実験構造により予測構造を一つに絞るように予測方法が修正された。これらのことはレプリカ交換法により大域的な立体構造空間をサンプルすることが可能になるため初めて議論できるものである。  次に彼らは、同じ方法を使いバクテリオ口ドプシンの膜貫通ヘリックスがそれのみで自らの相互作用により天然構造へ自己組織化できるかどうかを調べた(ただし主鎖構造については理想ヘリックスではなく実験構造を使った)。ランダムな7本の膜貫通ヘリックスの初期配置からレプリカ交換シミュレーションを始めて、実験構造と同じヘリックス配置構造が得られた。このことはヘリックス間相互作用がバクテリオロドプシンの天然構造形成にとって主要な要因であることを示している。言い換えれば、ペプチド鎖間の相互作用が構造形成に最も重要であり、脂質二重膜のハイド口カーボンコア・脂質二重膜の界面・水との複雑な相互作用は構造形成においては2次的な効果であることを示唆している。, application/pdf, 総研大乙第133号}, title = {STRUCTURE PREDICTIONS OF MEMBRANE PROTEINS BY MOLECULAR SIMULATIONS}, year = {} }