@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000340, author = {村田, 克美 and ムラタ, カツミ and MURATA, Katsumi}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {DNAの三次元構造は、スタッキング相互作用によって安定するが、この物理的な力の起源についてはこれまでのところ明らかにされていない。静電相互作用、疎水効果、分散相互作用などが主に寄与していると示唆されている。また、溶媒環境がDNAの構造の安定性に影響することもしられており、水溶液中では、スタッキングした状態が安定になっている。水溶液中でのDNAのスタッキング自由エネルギーの実験はこれまでに数多くおこなわれてきたが、実験値は測定したグループによってばらつきが見られる。しかしながら、スタッキングの強さには定性的な傾向があり、あきらかに塩基配列に依存している。塩基間の相互作用の解析には量子化学計算や分子動力学計算が用いられてきた。これらを用いた初期の研究では、系に糖やリン酸などを含めずに、塩基だけでおこなっていたが、最近の研究によりスタッキング構造の安定には糖やリン酸も重要であることが分かってきた。また、スタッキング状態とアンスタッキング状態の自由エネルギー解析の研究もいくつかおこなわれてきた。これらの研究では、自由エネルギーが最小な状態で十分スタッキングしていない場合もあった。この原因は、おそらくシミュレーションが系に無数に存在するエネルギーの極小状態に留まってしまったためと考えられる。この問題は、例えば、拡張アンサンブル法を用いることで克服できる。拡張アンサンブル法は、非ボルツマン因子による人工の統計集団に基づいており、ポテンシャルエネルギー空間上のランダムウォークを実現することで、エネルギー極小状態に留まるのを避けることができる。したがって、幅広い構造空間を探索することが可能であり、従来の方法よりも正確に自由エネルギーを計算することができる。
そこで、DNAダイマーの分子動力学シミュレーションを拡張アンサンブル法の一つである、レプリカ交換アンブレラサンプリング法に基づいておこなった。この方法の有効性は、真空中のアラニンのトライマ一のシミュレーションによって示されているが、水分子をあらわに含んだ系でおこなうのは本研究が初めてである。したがって、サンプリングの有効性を十分に確認する必要があると考えられる。DNAダイマーは全部で16通り(dApdA、dApdC、dApdG、dApdT、dCpdA、dCpdC、dCpdG、dCpdT、dGpdA、dGpdC、dGpdG、dGpdT、dTpdA、dTpdC、dTpdG、dTpdT)存在するので、これらすべてのシミュレーションをおこなった。反応座標として、糖と結合している塩基のN原子間の距離を用いた。この距離に拘束ポテンシャルを導入して、ポテンシャルのパラメータとレプリカを一対一に対応させた。レプリカ交換の交換率がすべてのレプリカのペアで一様であり、10%以上であることが、レプリカ交換が適切におこなわれていることの一つの指標であるが、彼らのシミュレーションはこれらの条件を十分に満たしていた。このことを支持する別の結果として、隣どうしのパラメータにおいて、反応座標の確率分布が十分に重なっていることが観察された。シミュレーションがうまくおこなわれたことをさらに確認するために、レプリカ空間と反応座標空間のランダムウォークが実現されているかを調べた。その結果、両空間ともに十分おこなわれていることが確認され、反応座標に対するサンプリングの有効性が真空中と同じように水中でも確認できた。
レプリカ交換法が反応座標以外のパラメータに対してもサンプリングが効果的におこなわれているだろうということは、これまでにも予想されていたが、確認した例は今のところ存在しない。そこで、反応座標以外のパラメータとして、DNAダイマーのリン酸と糖の部分に関する二面角の時間に対する変化をしらべた。どの二面角も幅広い値をとっており、サンプリンが効果的におこなわれていることが示された。これら二面角の値は、DNAがスタッキングした状態では主にB-DNAに相当する値をとっていることが分かった。通常、DNAは生体内ではB-DNAの構造をとっている。しかしながら、A-DNAの値のサンプリングもおこなわれており、一回のシミュレーションから、B-DNAからA-DNAへの転移、A-DNAからB-DNAへの転移が数回確認された。この現象は、これまでの分子動力学シミュレーションでは確認できなかった。
さらに、スタッキングとアンスタッキングのプロセスを定量的に解析するために、自由エネルギーをPMF(potential of mean force)計算によって求めた。自由エネルギーの反応座標としては、糖と結合している塩基のN原子間の距離と、塩基平面の回転角を表す擬似的な二面角を用いた。スタッキングの強さをスタッキングとアンスタッキング状態のエネルギー差として計算したところ、スタッキングの強さの塩基配列依存性は実験結果の傾向を大部分再現することが示せた。すなわち、purine-purine > purine-pyrimidine > pyrimidine-purine > pyrimidine-pyrimidineという実験結果に対し、AA(purine-purine) > AG(purine-purine) > AT(purine-pyrimidine) > AC(purine-pyrimidine), CG(pyrimidine-purine) > CA(pyrimidine-purine) > CT(pyrimidine-pyrimidine) > CC(pyrimidine-pyrimidine), GA(purine-purine) > GT(purine-pyrimidine,) > GG(purine-purine) > GC(purine-pyrimidine), TA(pyrimidine-purine) > TG(pyrimidine-purine) > TT(pyrimidine-pyrimidine) > TC(pyrimidine-pyrimidine)という計算結果になった。そして、これらの差は塩基間のファンデアワールス接触の強さに依存するという解釈を得た。また、自由エネルギーが最小の状態は、反応座標の距離と二面角の値から、B-DNAの構造をとっていることが分かった。, application/pdf, 総研大乙第138号}, title = {Molecular dynamics simulations of DNA dimers based on replica-exchange umbrella sampling}, year = {} }