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そこで得られた知見に基づいて伝導機構の議諭がおこなわれできた。しかし、単分子ないし少数
分子の伝導機構の研究を見ると、このような集合体における現象とは異なる原理で電子が輸送
されていることがわかりつつある。また電気伝導に関する研究でクーロンプロッケード現象、スイッ
チング、電界効果トランジスタとして働くことが報告がされており、このような興味深い特性を最大
限に利用したデバイス作製の研究、開発が行われている。しかしながら多くの有機分子の電導
度は小さく、小数の有機分子のみで実用的な分子デバイスを構築するのは困難である。そこで
機能性有機分子と長距離電子輸送に優れたカーボンナノチューブや金属微粒子のなどの電導
性ナノ材料とを組み合わせようと考えた。機能性有機分子と電導性ナノ材料からなる電子輸送
に優れたナノ構造体を作製し、その電気特性と構造の関係を明らかにすることを目的として研究
を進めてきた。

(1)デンドロン保護されたポルフィリンワイヤーの合成:酸化シリコン基板上で単一労子の電
気特性を原子間力顕微鏡(AFM)などで計測できると、様々なデバイスへの展開が期待できる。
また、ガラス基板上で単一分子の観察ができると、近接場光顕微鏡(SNOM》のような手法で単
分子光物性の研究が可能になる。しかしながらガラス、シリコン基板衰面には1nm程度の凹凸
があるため、AFM観察が困難である。この悶題点を解決するために、直径が大きなデンドロン保
護されたポルフィリンポリマーを合成した。デンドロンはかさ高く、ポリマー同士の集合を防ぎ、溶
解性の向上させる。さらに分子のπ電子系を孤立させる働きがある。基板への分子累積は
Langmuir-81gdgett(LB)法を用いて行った。この手法を用いる利点は孤立した分子を基板一面
均一に累積できることである。LB法を用いて、このポリマーを様々な基板上に分散させ、AFM観
察を行ったご基板によって、異なったポリマーの高さ、構造体が観察された。グラファイト基板上
では、高さが1.0士0.3nmで、一本のワイヤー延びた構造を示した。酸化シリコン基板でば高さ
が4.3±0.8nmで、縮んで丸くなった構造を示した。表面修飾を施したガラス基板で高さは3.1±
α4nmで、多少縮んだ構造を示した。このポリマーの高さ、構造の違いは基板の親水性に依存
したものと思われ、親水性の基板では高さは高く、縮んだ構造をとり、疎水性の基板では高さは
低く、延びた構造をとることが分かった.

(2)ポルフィリンワイヤーを鋳型とした1次元金ナノ粒子構造体の作成とその電気特性:電子
輸送に優れたナノ構造体としてピリジンエタンチオールによって保護された金微粒子を合成した。
ピリジン部位はポルウィリンに導入された亜鉛原子と配位結合を形成することが知られている。こ
れを利用し、ポルフィリンと金微粒子を結合させることが可能となる。まず、ガラスもしくはシリコン
基板上にポルフィリンポリマーを分散させ、次にピリジンエタンチオール保護された金微粒子溶
液に基板を浸し、ポリマーに微粒子を結合させ、集合体を作製した。この手順で作製した集合体
をAFMで観察した。ポルフィリンポリマーに金微粒子を結合させる前後で、シリコン基板上のポリ
マーの高さは3.1±0.5nmから5.4土0.hmに、表面修飾されたガラス基板では2.8士0.5nmから
5。3±0.5nmに変化した。この結果からポリマー上に金微粒子が結合したことが示唆された。ま
た走査型電子顯微鏡(SEM)での観察から、ポルフィリンポリマーに結合した金微粒子間の距離
4.7±0.6nmが得られた。ポルフィリン4つに相当する距離は約5nmであることから金微粒子は
ポルフィリンユニット4つおきに結合していることがわかった。
 このポルフィリンポリマー金微粒子集合体を数10nm程度のギャップ電極間に置き、光照射
による電流量の変化を調べた。ポルフィリンポリマーのみでは電流値の変化は見られなかったが、
金微粒子を結合させることで光応答性を示すことがわかった。

(3)電導性ナノ材料との接合部を持つポルフィリンオリゴマーの合成:カーポンナノチューブと
強く相互作用するピレニル基や金ナノロッド、微粒子と結合を形成するチオール基を末端に置換
基を導入したポルフィリンオリゴマーを合成した。末端官能基を導入によるポルフィリンオリゴマ
ーへの電子的な影響を吸収、蛍光スペクトルの測定から明確にした。この結果から、末端官能
基の電子的影響は1量体、2量体では顕著にみられているが、3量体ではかなり弱くなり、4量体
以上のオリゴマーではほとんど影響しないことが分かった。
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