{"created":"2023-06-20T13:20:01.952893+00:00","id":35,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"24b7401d-501a-4327-9b2d-b140f8f7d17b"},"_deposit":{"created_by":1,"id":"35","owners":[1],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"35"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:ir.soken.ac.jp:00000035","sets":["2:426:3"]},"author_link":["6173","6171","6172"],"item_1_creator_2":{"attribute_name":"著者名","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"岸上, 伸啓"}],"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"6171","nameIdentifierScheme":"WEKO"}]}]},"item_1_creator_3":{"attribute_name":"フリガナ","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"キシガミ, 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本論文は6章からなる。第1章では、本論文の目的を述べた後、論文全体の概要につい\nて述べる。第2章では、食物分配とは何かを定義した後、イヌイットをはじめとする狩猟\n採集民社会における食物分配に関する研究を、社会・人類学的研究と生態学的研究(生態人\n類学と進化生態学)に大別して整理をする。その上で、本論文で取り扱う問題を設定し、\nこの研究の学術的な意義や仮説について述べる。本研究の仮説はイヌイット社会の経済的\n変化が急激に進む中で、食物分配の実践を通してイヌイットの社会関係が再生産されてき\nたというものである。そして本章の最後では、現地調査について概略する。\n 第3章は、本論文の調査対象地であるカナダ・ヌナヴィク地域ケープ・スミス島周辺の\n自然環境と歴史について記述する。ここでは、現在のイヌイット社会が世界システムや国\n家の中に包摂され、その一部として存在していることを強調する。\n 第4章では、1980年代から2000年にかけてのアクリヴィク村の経済構造を貨幣経済と\n生業経済の点から概略した後に、アクリヴィク村の家族・親族、世帯、キャンプ集団、村落\n構造、婚姻制度、養子縁組制度、同名者関係、助産人関係、友人関係について記述する。\n 第5章では、アクリヴィク村において観察された食物分配の全体像を提示した後、ハン\nター間の獲物の分配、ハンターから村人への獲物や食物の分配、村人間での食物分配、村\nにおける食事を通しての食物分配、キャンプ地における食物分配、村全体での共食会、村\n外との食物分配、そのほかの食物分配や交換、そしてケベック州ヌナヴィク地域で1980\n年代半ばに創設されたハンター・サポート・プログラムとそれを利用した村全体での食物分\n配の諸事例を紹介する。そのうえで、これらの食物分配の特徴、その時間的な変化と連続\n性について述べる。\n 第6章では、現在のイヌイット社会の食物分配の特徴や内容を、本論文で提起した食物\n分配の新たな類型に基づきながら検討する。また、アクリヴィク村の事例を用いて、狩猟\n採集民社会の食物分配の研究から引き出されてきたいくつかの仮説を検討することにより、\n現代のイヌイットの食物分配の特徴を指摘する。さらに、イヌイットが食物分配の実践を\n通していかに拡大家族関係や同名者関係などの社会関係を再生産してきたことを検討する。\nそのうえで、本研究から引き出された結論を要約する。\n 本論文の結論は、以下の通りである。\n (1)アクリヴィク村の食物分配には、基本形として「分与」、「交換」、「再分配」が存在し\nている。さらにハンター・サポート・プログラムによる分配や村全体での共食は、ボラン\nニーの「再分配」の形態である。アクリヴィク村の事例に基づくと、イヌイットの食物分\n配の中心は、「交換」ではなく、「分与」や「再分配」である。\n (2)アクリヴイク村の事例では、「狩猟採集民の分配は分与である」とするバード=デイヴ\nイッドの説(Bird・David1990)や「狩猟採集民の食物分配は再分配である」とするウッドバ\nーンの説(Woodburn1998)をある程度支持している。食物分配を食物の「交換」として理\n解し、食物分配の形態と社会的な距離との関係をモデル化したサーリンズのモデル\n(Sablins1965)に関しては、全体的な傾向としてアクリヴィク村の事例はモデルを支持す\nるものの、大型動物の肉の分配(分与)や老人・寡婦・病人への食物分配(分与)は親族関係の有無に関係なく実践されているため、モデルの反例となる事例が存在している。\n (3)アクリヴィク村の事例に基づくと、イヌイットの現在の食物分配の機能には、1)カン\nトリー・フードを入手する手投としての機能、2)世帯間での食物の平準化機能、3)食物分\n配には既存の社会関係を確認し、維持する機能や、食物分配を意図的にしないことによっ\nて既存の社会関係を壊す機能、4)ハンターが分与の実践によってコミュニイティー内から\n社会的な名声や敬意を獲得する手段としての機能、5)文化的な価値観を実現させるという\n精神的な満足機能、6)コミュニティー意識やエスニック・アイデンティティーの生成・維持\n機能などがある。このように現在のアクリヴィク村の食物分配は複数の機能を持ち合わせ\nた実践である。特に、食物分配は、食料を必要とする人にとって有利に働く実践である。\n (4)アクリヴィク村のイヌイットの食物分配の大半は、親族関係や同名者関係など社会関\n係に沿った実践であるが、共労、場の共有(コミュニティーの成員であること)、弱者(も\nたざる者)であること、政治協定による′公認条件など社会関係以外の要因に基づく食物分配\nが存在する。そして食物分配の実践は、拡大家族関係など社会関係やコミュニイティー意\n識を確認させ、再生産させる。\n (5)地域的にも、時間的にも極北地域のユピート・イヌイット社会における食物分配の形\n態や機能には差異が見られる。ヌナヴイク地域のアクリヴィク村の事例は、政治協定によ\nって制度化された食物分配を実践している点ではユニークであるが、大半の食物分配が拡\n大家族関係に沿って実践されている点や「分与」や「再分配」の形態が主流である点では、\nほかの地域の事例と共通点が認められる。\n (6)食物分配は社会関係や世界観と深く相互に結びついているため、食物分配の衰退は拡\n大家族関係や世界観の変化などを生み出す原因のひとつになると考える。アクリヴィク村\nの事例のように新たな食物分配が制度化されたとしても、村人の狩猟・漁労活動が低下す\nれば、それに連動しながら食物分配の頻度が低下し、分配の範囲が狭まる可能性がある。\n (7)現在のヌナヴィク地域のイヌイットは、国家や貨幣経済(世界経済システム)の中に\n取り込まれているが、カナダ政府やケベック州政府との政治交渉と協定を通して新たな社\n会を構築してきた。本論文ではその一例として、ヌナヴィク地域のイヌイットは、政治交\n渉を通して国家や州政府とうまく折り合いをつけ、国家や州政府が提供する制度や資金を\n利用しつつ、食物分配を実践し続けることによって、彼らの生活を組織する上で核となる\n社会関係を再生産させてきたことを例証した。カナダの先住民イヌイットの社会は、「国家\nに抗する社会」や「国家に抗せなかった社会」ではなく、「国家を受け入れ、利用した社会」\nである。","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_description_18":{"attribute_name":"フォーマット","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"application/pdf","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_description_7":{"attribute_name":"学位記番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"総研大乙第150号","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_select_14":{"attribute_name":"所蔵","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"有"}]},"item_1_select_8":{"attribute_name":"研究科","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"文化科学研究科"}]},"item_1_select_9":{"attribute_name":"専攻","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"01 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