@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000385, author = {布施, 哲治 and フセ, テツハル and FUSE, Tetsuharu}, month = {2016-02-17}, note = {1992年8月海王星軌道の外側に直径数百kmの新小天体が発見されて以来,同様な天体の発見数は200に迫る勢いである。これらの小天体が示す力学的な特徴として,海王星との平均運動共鳴と永年共鳴が上げられる。本論文では,海王星との平均運動共鳴およびその周辺に存在する小天体の軌道進化に関して,相補う2つの手法により定性的にかつ定量的に解析を行い,太陽系外縁部の力学的構造を明らかにした。さらにその結果から,すばる望遠鏡による太陽系外縁部の新天体サーベイ観測についての検討を行った。   1950年前後にEdgeworthとKuiperは,太陽系外縁部における小天体の存在について,“惑星になりきれなかった微惑星が存在しているに違いない”と示唆していた。現在では海王星軌道より大きな軌道を持つ天体をEdgeworth - Kuiper Belt天体(以後EKBOs)と呼んでいる。一方,期待されるEKBOsの軌道分布から,短周期彗星の起源がEKBOsであるとする説が有力である。このような背景から,EKBOsに関する議論は始源的な天体とされる彗星の研究だけに留まらず,過去の太陽系形成期についての探究につながるといえる。   平均運動共鳴(以後レゾナンス)とは,天体間の公転周期の比が整数で表されるときに起こる得る共鳴現象である。例えば小惑星帯内では,木星とのレゾナンスに対応する領域に小惑星が少ない“ギャップ”が存在し,また小惑星帯の外側ではレゾナンスに対応する周辺に小惑星が存在している。このように,レゾナンスはその系の力学的構造を決める重要なメカニズムであるといえる。そこで本論文では,実際にEKBOsが発見された海王星との3:4,2:3,3:5レゾナンスとその内側・外側の5:6,1:2レゾナンス,およびこれら周辺の力学的構造について,従来にない大規模な解析を行った。   まずレゾナンスにあるEKBOsが示す軌道要素の変化のうち,中周期(数万年)と長周期(数百万年)の振る舞いについて,1つ目の手法である半解析的手法を用いて定性的に調べた。まず従来の平面モデルを発展させ,より現実に近い“海王星の離心率を考慮した3次元モデル”を採用した2種類の半解析的手法を開発した。1つ目のModel Aでは,数百年の短周期成分を平均化しまた長周期成分を固定することで,5つのレゾナンスにあるEKBOsの中周期成分である軌道長半径と臨界引数(レゾナンスにあると秤動する変数)の変化を等ポテンシャル曲線として表現した。その結果,各レゾナンスを特徴づける臨界引数の振る舞いを明らかにした。さらにその解析から,それぞれのレゾナンスが起こり得る境界条件を軌道長半径-離心率平面上に表した。2つ目のModel Eでは,短周期・中周期成分を平均化することにより,各レゾナンスにあるEKBOsの長周期成分である離心率と近点経度の変化を等ポテンシャル曲線として表現した。この結果により,EKBOsの離心率が大きく変化する可能性のある海王星との永年共鳴(ν8永年共鳴)の存在領域を明確にした。   次に半解析的手法により明らかになった軌道要素の振る舞いを定量的に確かめるため,2つ目の手法である軌道進化に関する数値シミュレーションを行った。まず長期間の数値積分に最適なコードであるSymplectic積分法を開発した。このコードを用い,発見されたEKBOsのうち海王星とのレゾナンスにある24天体について,1億年間の数値積分を行った。その結果,21天体の軌道は計算期間中安定であったが,1:2レゾナンスの1天体と2:3レゾナンスの2天体は数千万年のうちにレゾナンス関係が崩れ,軌道が大きく変化した。一方,数値積分における軌道長半径と臨界引数の振る舞いは,Model Aによる結果とよい一致を示すことがわかった。また,いずれの天体もModel Eによる結果の通り,ν8永年共鳴は示さなかった。   従来行われていた軌道進化に関する数値シミュレーションは,太陽系外縁部の広い初期値空間に対して,テスト天体数が明らかに不足している。またレゾナンスやその周辺の力学的構造を詳しく議論した例は,ほとんど見当たらない。そこで次にレゾナンスおよびその周辺の力学的構造について明らかにするために,従来にない大規模な数値シミュレーションによる解析を行った。具体的には,総計約21万個のテスト天体を先ほどの5つのレゾナンスやその周辺に配置し,Symplectic積分法をさらに改良したコードにより500万年間の数値積分を行った。シミュレーションの結果,海王星から遠いレゾナンスにある天体ほど,取り得る最大の離心率が大きいことを示した。さらにν8永年共鳴の存在は,最大の離心率を決める1つの要因であることがわかった。一方レゾナンス周辺の構造も,ν8永年共鳴により大きく変化することを明らかにした。また軌道進化の過程で,レゾナンス境界のはるか外側からレゾナンスに飛び込む天体や逆にレゾナンスから飛び出す天体が確認された。特にレゾナンスから出る天体の存在は,EKBOsが彗星の起源であることを示唆するものである。   先の大規模な数値シミュレーションの結論より,海王星とのレゾナンスやその周辺の構造決定に天王星が関与していることが考えられた。そこで天王星の軌道長半径を変えた仮想太陽系モデルを考え,同様な数値シミュレーションにより天王星がレゾナンスやその周辺の構造に与える影響を定量的に調べた。その結果,レゾナンスにある天体の取り得る最大の離心率は,天王星とレゾナンスの距離に依存していることが明らかになった。一方,天王星の軌道を変えることにより海王星の軌道が変化し,海王星によるν8永年共鳴の起こる場所も移動するため,レゾナンス周辺の構造が変わることを示した。以上のことから,天王星は,海王星とのレゾナンスやその周辺にあるEKBOsの力学的構造を決める重要な役割を果たしていることを明らかにした。   シミュレーションの結果を踏まえ,ハワイ島マウナケア山頂のすばる望遠鏡によるEKBOsサーベイ観測計画を検討した。まずすばる望遠鏡の主焦点に設置する広視野モザイクCCDカメラによるEKBOsの発見効率は,従来のサーベイ観測に比べ数倍から数十倍も高いことを示した。次に大規模な数値シミュレーションの結果から,5つのレゾナンスおよびその周辺に存在するEKBOsの予想空間分布図を提示した。これらの領域を探査することにより,従来にない高い効率で新しいEKBOsを発見できることが期待される。, application/pdf, 総研大甲第427号}, title = {Dynamical Structure of Edgeworth-Kuiper Belt Objectsin/around Mean Motion Resonances with Neptune}, year = {} }