@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000394, author = {武士, 邦雄 and タケシ, クニオ and TAKESHI, Kunio}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {遠方からの光を焦点面で結像させる望遠鏡には屈折望遠鏡と反射望遠鏡の二種類がある。凸レンズを使ってこの目的を達するのが屈折望遠鏡であるが、対物レンズとして一種類のガラスだけを使うと屈折率が波長によって異なるので色収差を生ずる。これを補正するために異なるガラスで作った凸と凹のレンズを組み合わせて対物レンズを作るのが一般的である。レンズ内の屈折率を一様にすることが難しいため、直径1メートル以上の屈折望遠鏡は造られていない。凹面鏡によって結像させるのが反射望遠鏡である。鏡の材料としてガラスが使われることが多い。この場合、光はガラスを透過しないのでガラス素材の屈折率の一様性は問題にならず、大きな口径が達成できる。  鏡面が放物面であれば光軸に平行な無限遠からの光は焦点に点像を結ぶことは幾何学で初期に教わることである。これは収差論の言葉で言うと球面収差がないことに対応する。しかし、光軸と角度をなす光はコマ、非点収差など画角による収差のために点像にはならない。反射望遠鏡の場合は画角の1次に比例するコマがまず問題になる。このコマ収差による像の拡がりが大気のゆらぎによる像の拡がり(天文ではシーイングと言う)より小さい画角(コマフリー画角)の範囲が実用になる。  現代の望遠鏡は光を多く集めるために口径を大きくする。ところが焦点距離を長くすると筒長が長くなり、必然的にドームのサイズが大きくなり、また機械部分が大きく重くなるので、焦点距離をある程度に押さえる必要がある。そうするとF比(焦点距離/口径)は小さくなる。コマは口径比Fの自乗に逆比例するので大望遠鏡ではコマを無視できる範囲は大変ちいさくなる。マウナケアのようにシーイングの良いところではなおさらである。すばる望遠鏡は副鏡と組み合わせた時の結像性能をよくするために主鏡を双曲面にしてリッチー・クレティエン系にしているが、もし、すばる望遠鏡の主鏡が放物面であったとしたときの主鏡(主焦点)のコマフリー画角は、星像の広がりを0.4秒角までとして、僅か14秒角で、焦点面での実寸で1mmである。  そのようなわけで主焦点において天文学の要求する画角30分(焦点面で130mm)の範囲でよい結像を得るためには鏡面が放物面であったとしても補正レンズ系を必要とする。すばる望遠鏡の場合は主鏡が双曲面なので球面収差があり、補正レンズなしではすまされない。  また天頂以外のところにある天体からの光は大気に斜めに入射するので大気で屈折し、地上で見ると実際より僅か高い位置に見える。さらに空気は波長により屈折率が異なるので星の像は上下にのび、少し色づいて見える。これが大気分散でその広がりの量は天頂距離60度角(高度角30度)において、すばる主焦点での全波長域(0.4μm~1μm)で1.9秒角にもなり、SDSSバンドパス・システムのg’(0.4 - 0.55μm)、r’(0.55 - 0.69μm)、i’(0.69 - 0.84μm)、Z’(0.84 - 0.98μm)の各バンドではそれぞれ1秒角、0.42秒角、0.25秒角、0.15秒角となる。これらはマウナ・ケアのシーイングの良さを考慮すると大きな値であり、ぜひ補正しなければならない。  すでにパロマーのへール望遠鏡(口径200インチ=5メートル、F/3.3、1948年完成)でもコマ補正のために二枚レンズ補正系がロスによって設計製作されている。1970年代にはウィンによって4メートル級の望遠鏡(F/3程度)のために3レンズ補正系が設計製作された。1980年代には8 - 10メートル級の望遠鏡計画の中でケック望遠鏡のためにエップスが直視プリズム二個を組み込んだ大気分散補正系付の主焦点補正系を設計したが製作はされていない。  この論文はすばる望遠鏡に採用されることになったリッチー・クレティエン主鏡(有効口径=8.2メートル、F/1.83)にたいする新しいタイプの大気分散補正系(Atmospheric Dispersion Corrector=ADC)を備えた主焦点補正系の設計・製作に関する報告である。屈折率がほぼ同じで分散が異なる二種のガラスを使って曲面の曲率半径が等しい平凹、平凸のレンズを作り、二枚を曲面部で合わせて平行平面板を作る。これを補正系に組み込んで光軸に直角に移動させると可変プリズムと同じ働きをし、大気分散の補正ができる。このADCは全系の色収差補正の一部にもなっていて、二次スペクトル、収差の色差、軸上色収差、倍率色収差、及びレンズのパワー配置の間に自由度を与えている。そのことによって高性能を保ちつつ主焦点補正光学系全体を小型化することができた。補正系の構成は3レンズ補正系を基本にADCを組み入れ、高い性能を得るために非球面を二面採用している。  天文学では広い範囲の天体写真を撮る目的のカメラの流れと、撮れる範囲は狭くても良いから暗く遠い天体まで撮る大望遠鏡の流れとがある。前者はシュミットカメラからラス・カンパナスの望遠鏡を経て、最近のスローン・ディジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)の望遠鏡になっている。SDSSの写角は3度、限界等級は23等級である。一方、すばる望遠鏡はパロマーの後継ぎとしての役割を担う大望遠鏡であり、その限界等級は29等である。目的天体を探すときのSDSSの役割は大きいが、すばる望遠鏡を使って宇宙の果てまで迫ろうというときの天体探索に本研究に報告する主焦点補正系は欠かせない。すでに試験観測では仕様を満たす結果が得られている。これからの本観測に向けて成果が期待される。  なお、本文中では参照する光学系の断面図は、大きさの比較が解りやすいように、全て縮尺1/10で示すこととする。, application/pdf, 総研大乙第81号}, title = {Primary Corrector with Atmospheric Dispersion Corrector for Subaru Telescope}, year = {} }