@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000405, author = {関戸, 衛 and セキド, マモル and SEKIDO, Mamoru}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {パルサーは、高エネルギー現象、相対性理論の検証、時系への応用、基準座標系の結合、星間物質のプローブ光源としての利用など、さまざまな観点から大変興味深い天体である。特にパルサーのパルスの周期安定度は、地上の原子時計を凌ぐ精度を持つと期待されており、地球の重力場に影響されない普遍的な時系として研究が進められている。また正確なパルス到達時間の計測により、太陽系惑星暦の座標系(力学座標系)の上でのパルサーの位置を数十μ秒角程度の高い精度で求めることができる。一方、現在最も高い空間分解能で天体の位置計測ができる超長基線電波干渉計(VLBI)により決定される座標系は、国際天球座標系(ICRF)という天文学の基準座標系として承認されており、パルサーをVLBI観測することにより、パルサーのICRF上の位置を測定できる。しかし、VLBI観測は黄道面の位置に関して感度がないため、黄道面と赤道面の交点で定義される春分点の計測に不感であり、黄道面を基準とする力学座標系と、系外電波源を基準とするICRFは観測的に結合される必要がある。パルサーは両座標系上の位置をそれぞれ高精度に求めることができる数少ない電波源の一つであり、VLBIによるパルサーの位置計測は座標系結合にとって重要である。また、基準座標系上での精密な位置の決定は、異なる波長で観測された現象(光学観測、X線、ガンマ線)が同一天体に起源を持つものであるかどうか同定する上でも重要である。また、パルサーの精密な固有運動の計測は、異なるエポックで計測されたパルサーの座標系上の位置を同一エポックの位置に変換する際に重要となるほか、パルサーの起源とされる超新星残骸との関係の同定、力学年齢の推定、パルサータイミングの周期変化率計測データから固有運動によるバイアス誤差の除去など、多くの観点から必要とされている。  筆者らは、ロシアのレベデフ物理学研究所(LPI)と通信総合研究所(CRL)の共同研究に基づいて、ロシアのKalyazin局(64m直径パラボラアンテナ)とCRL鹿島の34m直径パラボラアンテナを使って、基線長7000kmのVLBI観測(群遅延を用いた絶対位置天文観測)を1995-1998年の4年間にわたって行い、複数のパルサーの精密な位置および固有運動を計測した。得られたパルサーの位置及び固有運動は以下の通りである。   PSR B0329+54  α:03h32m59s. 37577(0.0004) δ:54°34'43''.5179(0.003) Epoch:1995.00  μα:17.3(0.35) mas/year   μó: -10.6(0.37) mas/year PSR B0355+54  α:03h58m53s. 713(0.003) δ:54°13'13''.75(0.1) Epoch:1995.00 PSR B0950+08  α:09h53m9s.30(0.01)  δ:7°55'35''.8(0.8) Epoch:1996.36 Epoch:1998.40   α:09h53m9s.309(0.001) δ:7°55'36''.154(0.07) PSR B1933+16  α:19h35m47s.824(0.006) δ:16°16'40''.07(0.27) Epoch:1995.20 PSR B2021+51  α:20h22m49s.866(0.005) δ:51°54'50''.302(0.01) Epoch:1995.20    また、パルサー B0329+54,B0355+54,B1257+12,B1937+21,B2021+51のタイミング観測から得られた座標値、及びVLBI観側から得られた座標値(我々の結果及び、文献値)を使い、太陽系惑星暦DE200の座標系とICRF座標系の回転行列を推定した。その結果、回転ベクトルとして(-7.4±3,-11.9±5,-9.1±3)(mas)を得た。これはFolknerらの結果と誤差の範囲で一致している。これまでFolknerら(1994)がLLRの観測から求めたDE200とICRFの結合を、パルサーPSR B1937+21のVLBI観測結果とパルサータイミング観測の座標を比較して検証した例(1996)はあったが、パルサーを使った座標系の結合はまだ報告されていない。現状では、パルサーの位置精度が十分でないこと、使用できるパルサーの数が少ないことにより、Folknerらの結果を上回る座標結合には至っていないが、今後パルサーのタイミング観測及びVLBI観測の継続により、パルサーを使ったより高精度の座標系結合が可能になると期待される。  上記の結果を導くに当たり、二つの点で新しく開発した技術を用いた。一つは、ミリ秒周期のパルサーに対応したパルサーゲート機能をもつK4型相関器の開発であり、もう一つはGPS観側により得られた電離層モデルを使った、電離層遅延補正である。  パルサーの信号は一般に -2から -3程度の負の大きなスペクトル指数を持ち、高周波で急速に電波強度が弱くなる特徴を持つ。そのため、マイクロ波帯でパルサーのVLBI観測を行うには、信号対雑音比(SNR)を改善するために大型のパラボラアンテナを使い広帯域の観測を行うといった観測手法の工夫の他に、VLBIデータの相関処理時に、受信したパルスに同期してパルスの部分だけで相関積分をとることにより、実効的に平均Flux密度を増加させSNRを改善する“パルサーゲート”処理が有効である。筆者らは上に述べたパルサーのVLBI観測データを処理するに当たり、ミリ秒周期に対応したパルサーゲート処理機能を持つK4型相関器を開発し、信号対雑音比を5-6倍改善することに成功した。  また、我々の観測は、低周波で大きくなる電離層の影響と、高周波で小さくなるパルサーのFluxの兼ね合いから1.4GHz及び2.2GHzの周波数を使ってパルサーを観測した。しかし、これらの周波数においても電離層遅延量が最も大きな誤差要因であることに変わりなく、数mのExcess path lengthが誤差として観測量に付随する。このような大きな誤差要因を取り除くため、GPS衛星の観測によって電離層の電子密度分布を推定する方法について検討した。その結果、ベルン大学によって求められた全地球的な電離層電子密度分布のマップを使うことにより、電離層補正を行わない場合に付加される60ミリ秒角もの系統誤差を取り除くことができることを実証し、我々のパルサー観測データに適用した。  また、パルサーは信号の空間周波数がコヒーレントであるため、クエーサのVLBIデータでは見られない星間シンチレーション現象が観測された。我々は観測データからシンチレーションバンド幅、及びシンチレーションタイムスケールを見積もり、星間電子密度分布としてThin screenモデルを仮定してscattering disk sizeを求めた。その結果1.4及び2.2GHzの周波数帯では、ほとんどのパルサーでscattering disk sizeは1mas以下であることがわかった。, application/pdf, 総研大乙第92号}, title = {Pulsar Astrometry by VLBI}, year = {} }